「これからも働き続けるあなたへ」制作舞台裏③
「これからも働き続けるあなたへ」制作舞台裏③
第3章 絶対絶命?!ブックデザイン
そんなこんなで、100ページ以上の差し替え原稿をせっせと書きながらも、本業の仕事は繁忙期。執筆ピークの10月~11月は東京に週1か2日いるくらいの出張行脚が続きます。
そして本の運命を担う、最大のイベント「ブックデザイン」選びの締切がやってきました。
そのころは超バタバタモードの日々が続き、徳島行の最終便に乗るゲート締切直前20分、打合せのため編集者Yさんはわざわざ羽田空港に駆けつけてくださいました。
11月14日だというのに、もうクリスマスムードの羽田空港。
本の表紙(ブックデザイン)は、プロのデザイナーさんが制作する複数の案の中から相談のうえ、決定、というのが通常の流れです。この瞬間は何度あってもドキドキで、デザインを見るまで息が詰まるほどの緊張なのです。
私はこの辺りはプロではないし、決して私の目は肥えているわけでもありません。けれど、私の中ではブックデザインを選ぶ基準は既に固まっておりました。
3秒見て、“一目ぼれ”したデザインに決めよう。
もし3秒見て、迷うようであれば、そこには答えはない。そう固く信じていました。
そして、Yさんから出されたデザイン案はこちらです。
Yさんは続きます。「編集部内で、女性を中心に意見を聞いたら、一番右が良いという結果になりました。太田さんはどう思いますか?」
私は黙りました。5秒くらい。そして、目を落とし、恐る恐る口に出して言いました。
「本当に申し訳ないのですが、どれも選べません。」
生意気な発言でしょう。素人のくせに、と私が第三者であれば突っ込んでいるところでしょう。だって、ブックデザインを担当した吉村さんは、最近でいうとミリオンセラーに届くくらいの著名作も手掛けた、プロフェッショナルなのですから。
確かに、3案ともカワイイのです。素敵なのです。そしてさすが、一流デザイナー吉村さんの作品、どれも欲しくなるような魅力があるのは間違いないのです。
けれど、“一目ぼれ”はなかった。
さすがに時間もないので、編集担当のYさんはかなり焦っていました。もしかして、私が編集の立場であれば必死に太田を説得していたかもしれません。
私も一瞬、迷いました。確かに、いただいた案もカワイイし、皆さんがいうように、手に取ってもらえるようなデザインかもしれない。しかも、新しいデザインをつくるなんて時間もない。私が間違っているのかも・・・。
そもそも一目ぼれできなかったのは、すべて私のせいなのです。デザイナーさんには、なんのミスもありません。私からきちんと「この本への想い」を伝えなかったのが、すべての間違いだったのです。
徳島の仕事を終え、楽しい営業部女子課@徳島 も満喫し、本来であればもう1日滞在して…の予定を急遽キャンセルして、朝一番の飛行機で東京に帰ってくることにしました。そして、なんとか無理を言って、ブックデザイナーの吉村さん、編集担当Yさん、そして編集協力の三浦さん、太田で緊急MTGを開いてもらうことになりました。
初めてお会いする吉村さんは、本当に朗らかで安心して任せるプロ。そこでは、本に込めた想いやイメージなどをしっかりと共有しました。そして御丁寧に、「急いでつくりますね」と、再制作を快諾いただきました。
そして、出来上がったのが、こちらの完成版です。
!!!
この完璧すぎるほどの仕上がりには、本当に感激でした。プロの力を見せつけられました。(吉村さん、改めて感謝いたします!)
ここで学んだこと。
「よい作品とは、良いコミュニケーションから生まれる」。
そもそも私からキチンと本書の趣旨や想いを直接お伝えしていれば、関係者にご迷惑をかけずに済んだ話です。つい「お任せします」と言ってしまったのですが、お任せの前には、然るべき的確な伝達があるべきで、的確な伝達があれば任されたほうも明確に期待に応えることができるのです。
ブックデザインが決定して、タイトルも決定し、ホッと胸をなでおろしたのも束の間。今後はプロモーション戦略です。
12/20発売! 「これからも働き続けるあなたへ」(大和書房)
(次号は12/18アップ予定)
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