ブラックスワンが現れる可能性を否定しない
これは、自戒の意味も込めての話です。
今から5年以上前の出来事です。自分が引き起してしまったある大失敗に、身も心もズタズタになっている時期がありました。私の中では古今未曾有の経験で何を策として施せばよいのかもわからず、事実を受け止めることへの悲しみと恐怖と自分への苛立ちで、ただ落ち込み泣き伏せることしかできない日々でした。
藁をも掴む気持ちで、ある信頼できる人に「こんなことありえません。私はどうすればよいのでしょうか?」と涙しながら自分の苦悩を打ち明けました。するとその方は穏やかにこう私を諭してくれたのです。
「世の中に“あり得ない”は存在しない。心の中の抵抗や反論は、そもそもそれが起こることを否定してしまっているから生まれるもの。
リーダーであれば、あらゆる物事や衝撃の可能性を覚悟し、前進しなければならないのだよ。」
当時の私は起業したばかり。既に数人社員がいるにも関わらず、右往左往する頼りのないリーダーでした。起業すれば想定外のことばかりだよと訓示を受けたことは多々あるものの、どうしても目の前の現実でしか人は当事者意識を持てないのも否めません。
この日も、闇で包まれた未来をどうにかして視界を広げようと相談に来たにも関わらず、どこかで私は自分自身を理論武装する”言い訳”をたくさん用意していたのです。
しかしこの方の重い言葉に、私はハッと覚醒し胸の内の荒波が一気に鎮静するのがわかりました。
それほど、この方の言葉は私にとって濁りなく、スーッと心の琴線に触れたのでした。
私は、“起こり得る可能性”を勝手に否定していたんだ。
だから、実際に起こってしまうと覚悟が決まっていない故に、反発や悲しさ、悔しさだけが生れてしまったんだ。
ブラックスワンという現象があります。白鳥というと「白色」であるという常識を覆し、オーストラリアで一匹の黒鳥が発見されたことから、まったく想定していなかったことも実際に発生してしまう現象を示しています。
アメリカでベストセラーになった「ブラック・スワン」(ナシーム・ニコラス・タレブ著)によれば、ブラックスワンの特徴とは、①予測できないこと、②非常に強い衝撃であること、そして③一度起こってしまうと、それらしくなってしまうこと。
目を疑いたくなるような事実、信じたくない衝撃。まさかと否定から入ってしまう現実。
全米を震撼させた911もそうですし、世界をここまで大不況に陥れたサブプライム問題、そして日本では未曾有の悲劇的大災害311が、ブラックスワンにあたるのでしょう。
「リーダーに最も必要なのは『応変力』」
こう私は拙著「成功できる人の営業思考」で説きました。応変力とは、臨機応変の「応変」であり、想定外の事態に対処することです。
また、あらかじめ不測の事態が起こることを覚悟して、そのために精神的・物理的なキャパシティーを広げておく必要があります。
「成功できる人の営業思考」P91より
人の成長に当てはめて考えると私はこう定義します。
応変力とは、どんな時代・環境でも進化、変革できる力。
不測事態が起こることを覚悟して、強力に対処できる力。
つまり、ブラックスワンをも現れることを否定しないほど、あらゆる可能性を受容するキャパシティーを準備し、変化する状況に強力に変革していく必要があるのです。
何もリーダーだけではありません。成長したいと願う、あらゆる人にも応変力が要されていると痛感します。
特にここ近年、「応変」せざるを得ない時代に市況が急変してきました。
ITの加速化や中国、インドなどの新興国における強烈な工業発展、そしてEU危機や歴史的な円高問題。
世界経済の構造が激変を遂げています。厳しさを増す経営環境で、事業領域の転換や革新的なサービスの開発など企業そのものが変革を迫られており、
同時に個々人も進化、変革せざるを得ないことはもう誰も否めません。
しかし、何か事があったとき、私たちは過去の経験値だけにとらわれ、無意識的推論の罠に陥ってしまうことはないでしょうか。
5年前の私が、目の前のショックを受け入れられず後ろ向きの防御へしがみついていたように。
誰にでも必要な「応変力」。
何よりも自分自身こそ肝に銘じて、応変を止めずに成長していきたいと思います。
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