これだけ医療が進化している現在でも、耳鳴りは治らないで多くの人が辛い思いをしています。 耳鳴りは古代からあった疾患で、この長い年月多くの研究者が研究を重ねてきたものの、未だ決定的な治療法がありません。 古い時代からの耳鳴りについてのわかる範囲の歴史を見つけてみました。 これらの情報が、耳鳴り患者の改善に役立つものではありませんが。

 

これだけ医療が進化している現在でも、耳鳴りは治らないで多くの人が辛い思いをしています。

耳鳴りは古代からあった疾患で、この長い年月多くの研究者が研究を重ねてきたものの、未だ決定的な治療法がありません。

古い時代からの耳鳴りについて、解る範囲の歴史を見つけてみました。

これらの情報が、耳鳴り患者の改善に役立つものではありませんが。

 

昔から、耳鳴りに悩まされていた

古代エジプトの医書に耳鳴りが記されて

耳鳴りは、太古の昔より人々が悩まされていて、最も古い記録は紀元前1500年頃にパピルスに書かれた古代エジプトの医書に見られると言われています。

その当時には、耳鳴りがある耳は ”魔女に取り憑かれた耳” と言われていたそうです。

葦の茎を用いて直接耳の中に樹液・樹脂・ハーブなどを混ぜた特性オイルを注入して治療されていたようです。

 

メソポタミアでも碑文に刻まれ

紀元前10世紀のメソポタミアで、耳鳴りの存在について碑文に刻まれていたそうです。

ギリシャ文明の時期には、耳鳴りの治療をいろいろな方法で試みたという記録が残っているそうです。

と言いながら改善したことは記されてないようですが。

アッシリアでも紀元前7世紀頃に、既に耳鳴りの原因や治療法に関する記録が残っています。

これも、近代的な治療法ではないようです。

人類は何千年もこの耳鳴りの音に悩まされてきたことになります。

 

tinnitus(耳鳴り)の語源

耳鳴りを英語では、tinnitus(ティニタス)と言いますが、その言葉の由来があるのです。

 

ラテン語で、”繰り返す音” の意味を ”tinnire” と言いいます。

それが現在の ”tinnitus(耳鳴り)” の語源という説になったと言うことは、いかに人類が ”繰り返し” 耳の中で鳴る音に悩まされてきたかということなのです。

現在に至っても耳鳴りを完全に消すことは難しく、多くの人々はこの ”繰り返す音” に悩まされ続けています。

 

著名者が耳鳴りを研究

ヒポクラテス(Hippocrates , 紀元前460年 - 紀元前370年頃)は古代ギリシアの医者。

 彼は医学を宗教と呪術から切り離し、患者中心の医療を唱えました。

さまざまな困難を乗り越えて医学・医療の道を進もうとしてたようです。

耳鳴りの原因についても、全集の中に記載されているようで、ここでは "耳鳴りは頭蓋内小血管が拍動して頭に反響する" のが原因だと記されています。

 

ガブリエレ・ファロッピオ(Gabriele Falloppio ,  1523 - 1562年)は、16世紀を代表するイタリアの解剖学者、医師。

大航海時代以後に梅毒がヨーロッパに感染して、それが難聴と耳鳴りの疾患を生むことを報告しました。

 

ゴッホも、精神疾患と共にメニエール病や梅毒を合併して、かなり辛い耳鳴りの疾患になったという説があります。

シューベルト、ニーチェも同じ原因だと言われています。

 

フランシス・ベーコン(Francis Bacon , 1561 - 1626年)は、イギリスの哲学者、神学者、法学者、政治家で貴族。

強大音響暴露後の、”一過性の耳鳴り” について言及しました。

いまだ、非常に大きな音を聴いた後で引き起こされる音響外傷としての聴力障害。 

大きな音を聞いた後に、キーンという耳鳴りがする基本的な考え方です。と言って、治療法については提案していません。

 

ジャン・イタール(Jean Marc Gaspard Itard , 1774 - 1838年)は、フランスの医師で、聾唖教育者。

耳鼻咽喉科学で、聾児の言語習得教育で著名な人物でです。

著書の中で耳鳴りの分類、治療、マスキングについて多くの内容を記載してあります。

彼は耳鳴りを、”真性耳鳴り”、”仮性耳鳴り”、”幻想性耳鳴り”の三つに分類しました。

真性耳鳴りは、血管系の異常による疾患。

仮性耳鳴りは、蝸牛神経障害に起因す る耳鳴りと考えた。現在で言えば自覚的耳鳴りです。

そして幻想性耳鳴りは、精神障害から生じる症状と考えました。

 

 ・・・いろいろな研究や論文がありますが、耳鳴りの発生を研究したものが中心で、耳鳴り改善にはそれほど役にたつ内容だとは言えません。

 

20世紀には

ジョセフソン(Josephson , 1931年)は現在のピッチ・マッチ検査の基礎となるピッチ測定法に関する論文を発表。

その冒頭として、耳鳴りの科学的研究が進展しない理由として他覚的手法の欠如 を指摘していました。

その後、90年経った現在でも事態が変わっていないことを考えると残念です。

 

ヴェーゲルR. L. Wegel , 1931年)は、自分自身の右耳に生じた耳鳴りの周波数

について報告しました。

彼の右耳の聴力は、3,000Hz以上で急墜していたが、耳鳴り周波数は急墜部位に近い3,600~3,700Hzの間にあったようです。

この聴力低下の周波数と、耳鳴りの周辺周波数の考え方は現在でも継続されています。

 

 ファウラー(Fowler , 1941年)は、オージオメーターによるピッチマッチ検査、ラウドネスバランス検査の基礎を確立しました。

耳鳴りを客観的に、音の種類と、音の大きさを把握する検査として現在も重要な検査項目として利用されている。

私も時々、この検査を受けています。

 

・・・これらは一部ですが。その他多くの耳鳴りの研究が施され、20世紀の後半には、耳鳴りのメカニズムが想定されたと言って良いでしょう。

そして、耳鳴り検査をするための各種技法が定番化されてきてはいるのですが。

治療法については、決定的な手法が確立できていない状況です。

 

そして今

これだけの歴史の中で、とても多くの人たちが耳鳴りに劈かされているのに。

いまだ、確実な治療法が確立されていないのが現実です。

また、各個人の耳鳴りの具体的な疾患を確定できない方も多くいます。

ある年齢以上は、”加齢性難聴による耳鳴り” とほとんど診断されるし、メニエール病であるかも正式な判断が出来ない方が多い状況です。

 

私たち耳鳴り患者は、これだけの長い期間の研究から、耳鳴り音を消失する治療ができても良いのではないかと考えるのですが。

確かに耳鳴りのメカニズムから見ると、”治す”こと難しさはそれなりに理解します。

 

でも、「耳鳴りの治療薬や治療法を構築したらノーベル賞クラス」と言われているほど多くの人が期待している治療を、この時代にいち早く見つけてもらいたいものです。