私が多くの耳鳴り患者と話をして、患者側からの僅かながらですがデータを取得したものを集計しようと思います。
今日の課題は、「耳鳴りの薬は効くか?」。
耳鳴り改善のため多くの情報を読み漁りましたが、それらは耳鳴りを経験したことのない医療側からの一方的なデータばかり。
同じ疾患を持つ患者側の意見があれば、共感を持て力になるものと思い、一生懸命探したのですがそれらの情報は見つけられませんでした。
そこで耳鳴りを隠していた私は、積極的に耳鳴り患者さんとお会いして話を聞くことにしたのです。
当初は同じ悩み、辛さの共有意識や、個人的な改善効果の話をすることで精神的な重さを薄らぐために役に立っていました。
そして多くの耳鳴りの方とお会いすることによって、私ながらのデータ収集を心がけるようになったのです。
個人が収集しているデータで情報量が少ない上、専門的な概念からの調査として公式に表現出来るものではありません。
でも、患者だから気になる課題について、大まかな情報でも耳鳴り仲間に伝えたい気持ちでまとめています。
まずは、気になる耳鳴りの薬についてまとめました。
「耳鳴りの薬は効くか?」の調査
私は耳鳴りに処方される定番の薬剤を、当初効果のあるものと思い積極的に服用していたのですが。
期間が経っても改善されないタイミングに、それらの薬剤についての信頼感が激減した覚えがあります。
どの耳鼻咽喉科でも処方される耳鳴りの薬剤について、患者はどのように思っているかを集計しました。
データ集計の対象者
・慢性の耳鳴り患者
・耳鼻咽喉科の通院中と経験者
・現在も耳鳴り疾患のある患者
・25名
■ メチコバール
メチコバールは、ビタミンB12を補うことで、神経機能が整えられ、自律神経の乱れが原因のめまいや耳鳴りを改善する効果が期待できます。
めまいや耳鳴りは、自律神経のバランスが乱れることによって起こる自律神経失調症の症状を改善する薬剤として処方されます。
Q. メチコバールは効果がありましたか?
回答 | 人数 | 比率 |
① 効いた | 1 | 4% |
② 僅かに効いた | 3 | 12% |
③ ほとんど効かない | 14 | 56% |
④ 全然効かない | 7 | 28% |
耳鳴りで医院に通院すると、ほとんどの患者がメチコバールの服用経験があるようです。
多くの服用者の効果は「分からない」と言う回答が多いいのですが、4つの回答項目から選ぶと、”効いた” という意識がないため ”③ ほとんど効かない” と ”④ 全然効かない” を選んだものと考えられる。
耳鳴り初期は改善を目標に真面目に服用するものの、ある期間で服用中止にする患者と、特別な副作用のない薬剤なので何となく継続服用している患者がいるようです。
■ アデホスコーワ
アデホスコーワは、血流を改善し、臓器や筋肉の働きをよくする薬。
具体的には、ATPの分解産物である「アデノシン」という物質が血管を広げる働きをします。これにより、血の巡りがよくなることでの耳鳴り改善のために処方されます。
Q. アデホスコーワは効果がありましたか?
回答 | 人数 | 比率 |
① 効いた | 1 | 4% |
② 僅かに効いた | 4 | 16% |
③ ほとんど効かない | 13 | 52% |
④ 全然効かない | 7 | 28% |
ほとんどの患者がメチコバールと合わせてアデホスコーワの服用経験がある方が多いようです。
多くの服用者がメチコバールと同様に ”効いた” という意識がないため ”③ ほとんど効かない” と ”④ 全然効かない” を選んだものと考えられる。
顆粒の薬剤のために飲みにくいため、効果を信頼できなくなったタイミングで服用のサボりが多くなっている薬剤のようです。
■ 漢方薬
耳鳴りに効くと言う代表 な漢方薬は「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」などがあります。
耳鼻咽喉科の中には、漢方薬の処方を積極的にする医師がいるようです。
症状に合わせ、上記以外の薬剤を処方されることがあります。
Q. 漢方薬は効果がありましたか?
回答 | 人数 | 比率 |
① 効いた | 2 | 8% |
② 僅かに効いた | 6 | 24% |
③ ほとんど効かない | 12 | 48% |
④ 全然効かない | 5 | 20% |
どの漢方薬が効果があるかは集計していませんが、一般薬より比較的効果を認めている方が多いように思われます。
”効くとは、どう言う状況であるか” については、「耳鳴りが穏やかになった」と言う回答が多く、精神的な重さの改善効果があったものと考えられます。
すなわち、漢方薬で耳鳴り自体の軽減を図るものではなく、精神的苦痛に効果があったものと考えられる。
■ リーゼ
クロチアゼパム(商品名:リーゼ)は、ベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬になります。 不安感や緊張感を和らげる効果が期待できるため、安定剤と呼ばれることもあります。
耳鳴りによる苦痛度の高い患者には、耳鼻咽喉科で処方されるようです。
Q. リーゼは効果がありましたか?
回答 | 人数 | 比率 |
① 効いた | 6 | 50% |
② 僅かに効いた | 3 | 25% |
③ ほとんど効かない | 2 | 17% |
④ 全然効かない | 1 | 8% |
リーゼは、耳鳴りの改善薬と言うことではなく、耳鳴りによる "うつ症状" が発生した患者に処方されている薬剤。
この薬剤は、耳鳴り患者の中で特定の方に処方されるものですが、今回の集計データ対象者は12人の方が服用経験があるようでした。
この服用率の高さは一般的ではなく、私が話をした耳鳴り患者の方は、その多くが重症度が高い方との出会いだと解釈しています。
私の考察:
耳鳴りの薬剤治療は、予想通り効果の薄いものだと考えられます。
耳鼻咽喉科医の耳鳴りのマニュアル的な ”耳鳴り治療のガイダンス” でも薬剤の耳鳴り治療はエビデンスがないことを記載されています。
私も継続服用した経験と、現在もテスト服用していますが、残念ながら ”効く”と評価したことはありませんでした。
多くの方は、「効果がわからない」という考え方がほとんどのようだと思います。
漢方薬、リーゼなどの抗うつ剤は、耳鳴り自体の改善効果ということではなく、耳鳴りに伴う精神的な苦痛の改善に効果があるものと考えています。