”耳鳴りが慣れる” ことは、馴化 (じゅんか) と、順応 (じゅんおう) に区分して考えられます。 耳鳴りを対象とした ”慣れる” と言うことは広義では、馴化と順応を含むものですが。 狭義では、”慣れる ≒ 馴化” と考えるべきなのかも知れません。

先日、”耳鳴りが慣れる” 可能性のブログを投稿しました。

1〜2年程度の期間で「耳鳴りの音自体は変わらないが、慣れてきた。」と多数の方が言われます。

ただ、耳鳴りの苦痛度は軽減したものの、耳鳴り音量の低減はないようです。

私も耳鳴りに慣れて、精神的苦痛は極めて減少しているのですが、体調・季節・環境などによって耳鳴り音量の変化はあるものの、耳鳴り音量は変わっていません。

 

一方、何人かのTRT療法を経験した方に話を聞くと、一部の方は「耳鳴り音がかなり小さくなった。」と言われます。

TRT療法で耳鳴り音が消失したと言う方には巡り合えていませんが、耳鳴り音量が低減している方はそれなりにいるようです。

TRT療法は耳鳴りの順応治療であり、馴化と順応に効果があると言われていますが、私の ”耳鳴りの慣れ” は、時間の経過による ”馴化” なのだと考えています。

 

”耳鳴りが慣れる” ことは、馴化 (じゅんか) と、順応 (じゅんおう) に区分して考えられます。

 

耳鳴りを対象とした ”慣れる” と言うことは広義では、馴化と順応を含むものですが。

狭義では、”慣れる ≒ 馴化” と考えるべきなのかも知れません。

 

耳鳴りの馴化と順応

耳鳴りの馴化 (じゅんか) と順応 (じゅんおう) は異なる概念であり、それぞれ異なるプロセスを指します。

耳鳴りの馴化 (じゅんか)

 

馴化とは、ある刺激が繰り返し現れた場合に、その刺激への反応が減少する現象を言います。つまり、同じ刺激に対して反応が弱くなり、無視されるようになることもあります。

 

耳鳴りに対する馴化は、当初は耳鳴りに対して非常に気になるかもしれませんが、同じ刺激が繰り返し現れた場合に、その刺激への反応が減少する現象を言います。

最初は耳鳴りに対して過敏になるかもしれませんが、時間が経つにつれて、注意が分散されたり無視されるようになり、耳鳴りに対する反応が弱まることがあり、耳鳴りをあまり気にならなくなることがあります。これが耳鳴りの馴化です。

馴化は反応が減少するものですが、本質の耳鳴り音が軽減するものではなく、音量は依然と継続するものと考えられます。

耳鳴りの順応 (じゅんおう)

 

順応とは、環境の変化に対する生物の調整過程を指します。生物は変化に対応して、特定の機能や行動を調整し適応していくことです。

 

耳鳴りに対する順応は、人間が環境の変化に適応する過程を指します。

耳鳴りに順応する場合、個々の感覚器官や神経系が耳鳴りに対して適応し、その刺激に対する感度が低下することを指します。これにより、耳鳴りに対する生理学的な反応が減少することによって、人間が不快さを和らげるようになります。

 

耳鳴りの生じるメカニズムに対応する順応によって、耳鳴りを発生する脳などの調整を施し、耳鳴り音の低減も考えられます。

TRT療法は耳鳴りの順応治療と言われていて、不快音の低減の可能性があるわけです。

馴化は同じ刺激に対する反応の減少を指し、順応は環境の変化に対する人間の適応を指します。

馴化、順応共に促す手段が耳鳴り対応に提案されていますが、”耳鳴りの治療” ということは、”耳鳴りの順応”と考えられます。

 

耳鳴りの順応治療

耳鳴り順応のメカニズム

 

耳鳴りの順応が起こるメカニズムにはいくつかの要因が関与しているようです。

神経可塑性

脳は継続的な刺激に対して可塑性があり、経験によって変化します。耳鳴りが継続的に存在すると、脳はその音に対する感受性を低減させ、無視しやすくなります。

知覚の変化

初めて耳鳴りを感じた時には、その音に対する異常な注意が向けられることがありますが、時間が経つにつれて脳が耳鳴りを通常の音として認識し、その存在を軽減させることができます。

他の音の存在

環境音や日常の騒音など、他の音が耳鳴りと競合することで、脳が耳鳴りを無視しやすくなることがあります。

耳鳴りの順応治療法

 

”馴化” を促進する施作もいろいろ考えられますが、慢性の耳鳴りの改善のための治療といえば、”順応”を目的としたものと考えられます。

現状では代表的な治療法として、TRT療法を中心とした音環境療法だと言われています。

TRT療法は耳鳴りの音に順応、馴化させるように脳を訓練する方法です。

 

他にも、順応対象の治療法も情報としてあげられています。

● 音環境療法

ホワイトノイズ、海の音、自然の音などの環境音を使用して、耳鳴りを掩蔽して、順応しやすくします。

● 認知行動療法(CBT)

耳鳴りに対する不安やストレスを軽減し、患者がその症状に適応するのを支援します。

● リラクセーション法

ストレスや緊張が耳鳴りを強調することがあります。リラックス法や深呼吸、瞑想などのリラックス効果で耳鳴りに対する感受性を低減させます。

● 音楽療法

音楽の聴取は、患者が耳鳴りに注意を向けることを減少させ、他の音に注意を向けさせるのに役立つことがあります。

● ACT

ACT(アクセプタンス・アンド・コミットメント・セラピー)は、患者に対して耳鳴りを完全に取り除くのではなく、それと共存しながら充実した生活を送ることに焦点を当てるアプローチです。

 

ただしこれらは個人差があり、全ての人が同じように順応するわけではありません。一部の人は順応が進み、耳鳴りが気にならなくなる一方で、他の人は順応が進まずに耳鳴りが持続的に気になることがあります。

どちらでも、慣れればよい?

”馴化” と ”順応” を区分してみましたが、耳鳴りはまずは "慣れる" ことが大事だと思います。

 

多くの耳鳴り患者は、自然に慣れる可能性が高いものと考えますが、より短い期間で ”慣れる” ことが耳鳴りの治療なのかも知れません。

上記の耳鳴りの順応治療法は、慣れる時間の促進効果のあるものと考えて実行すれば、馴化の時間も減少するものと考えられます。

耳鳴りを強く気になる患者は、これれの治療に取り組んで短期に慣れるべきです。

 

耳鳴りに慣れるプロセスに関連するポイントは・・・

時間の経過

初めて耳鳴りを感じたときや気になり始めたときは、その音に対して敏感になり気になります。

しかし、時間が経つにつれて脳はその音に対して徐々に慣れ、それがあたかも通常の背景音のように感じられるようになれば慣れるわけです。

他の活動や音の存在

周囲の環境音や他の日常の音が、耳鳴りと競合してより存在感を高めていきます。

同様に、耳鳴り以上の意識を持つ活動を実行すれば、耳鳴り以上の存在となります。

これにより、耳鳴りが埋もれて気にならなくなることがあります。

これらの繰り返しにより、次第に慣れのプロセスが生じてきます。

心理的な適応

耳鳴り当初はとても気になるかもしれませんが、その後は意識的に無視するようになり、日常生活において耳鳴りが邪魔にならないようになっていく心理的適応による慣れのプロセスです。

 

これらの ”耳鳴りは慣れる” ものであることを理解していること自体が、”馴化” と ”順応”を促す可能性があります。