医師との話で、「耳鳴りを消失させる薬剤には効果がなく、精神的な改善を施す薬剤が効果がある。」という言葉があった。 耳鳴りでの、向精神薬類の処方について個人的には否定的で、調べる気持ちはなかったのですが。この医師の話をきっかけに、「耳鳴りと向精神薬類」について調べてみました。。

医師との話で、「耳鳴りを消失させる薬剤には効果がなく、精神的な改善を施す薬剤が効果がある。」という言葉があった。

耳鳴りでの、向精神薬類の処方について個人的には否定的でしたが。

この医師の話をきっかけに、「耳鳴りと向精神薬類」について調べてみました。

 

薬物療法は、耳鳴に効果があるか?

 

薬物療法で耳鳴そのものを消失、あるいは改善させることを目標とするのは、エビデンスがなく適当ではない。

その一方で、耳鳴りに関わって併存する問題を軽減させ、耳鳴治療効果を高める可能性はある。 

そのような要因は、うつ病、不眠、不安障害があげられる。

 

有効な薬物療法は、耳鳴り直接ではないが、間接的な効果が考えられる。

抑うつ、不眠、不安障害の症状を和らげることをきっかけに、本人が冷静に耳鳴に対処できるようになり、「耐え難い苦痛」という認知を修正し受け入れることができるようになる可能性が高まる。

その目的において適切な薬物療法は耳鳴治療によって一定の効果を期待できると考えられる。

耳鳴り治療ガイドライン 参照

 

諸外国のガイドライン(ドイツ、オランダ、スウェーデン、米国)でも、耳鳴りに対する薬物療法 については行わないことを推奨している。

ただし、耳鳴り増悪の一因となっている問題としてうつや不眠の併存があるのであれば、それに対して抗うつ薬や睡眠薬を用いることを推奨している。 

耳鳴は特に重症例では著しくQOLの低下を招き、不安、抑うつ、不眠等との悪循環に陥る例も少なくないからである。

 

私は、耳鳴りの苦痛度がひどい時に、心療内科から抗うつ薬の処方。

耳鼻咽喉科の医師も、抗うつ剤の服用を積極的に進められた。

でも私は、「そう、簡単に抗うつ剤飲んで良いの?」という副作用の怖さから服用しなかったのですが。

今、冷静に考えると、苦痛度の高い耳鳴りを改善するためには、効果のある薬剤として向精神薬類を考える必要があると思うようになりました。

と言っても、向精神薬類の副作用、依存性を考えると、簡単に服用を肯定しているものではありません。

 

向精神薬類の耳鳴りの効果について

耳鳴り患者の心理的苦痛と生活障害は、不安や抑うつと強く関係している。

そのため、不安を改善させる抗不安薬や、抑うつを改善させる抗うつ薬は、耳鳴りによる心理的苦痛や生活障害を改善させる可能性がある。

 

抗うつ薬によって、各種の検証で評価が分かれている。

スルピリド、セルトラリン、オンダンセトロン、アミトリプチリン等は、耳鳴りへの有用性を認めている。

一方、トラゾドンとパロキセチンの評価は、耳鳴への有用性をあまり認めていないようだ。

ノルトリプチリンは、耳鳴ラウドネス、耳鳴関連の障害、うつ病に効果があると示しているが、耳鳴への直接的な効果を認める検証はないようだ。 

 

三環系抗うつ薬は、耳鳴りを改善には、不十分のエビデンスであると報告されている。

 

ベンゾジアゼピン系薬の効果を分析した文献では、クロナゼパム、アルプラゾラム、オキサゼパムへの多少の効果を確認しているが、強固なエビデンスがないとされている。

ただしこれらの薬剤は、副作用に注意が必要なので、一般的には積極的な使用を奨めていない方向性にある。 

 

抗けいれん薬は、耳鳴への効果が一部は認められているものもあるが、バイアスリスクが大きく、さらに副作用も指摘されている。

カルバマゼピンは55.3%、バクロフェンでは26%が副作用を発症のデータがあり慎重に使用する必要がある。

 

向精神薬類の処方医師について

耳鳴りという疾患の改善を考えると、いつも耳鼻咽喉科医と心療内科医が分断している国内の体制が問題だと思っている。

 

耳鼻咽喉科の耳鳴り専門医は、耳鳴りの精神的苦痛による”苦痛の連鎖”からの脱皮を、精神科的な対応が必須だと思っている。しかし、耳鼻咽喉科医と心療内科医の連携が取れていないのが現状だ。

海外では、精神科のライセンスを持った耳鼻咽喉科医によって、耳鳴りを適切な治療をしていることを羨ましく思う。

 

国内の、耳鼻咽喉科医は、抗不安剤や睡眠導入剤を簡単に処方する医師がいるが、精神科医以外から処方される向精神薬は適切であるか疑問が残る。

そして、耳鼻咽喉科医は、抗うつ剤の効果を考えながらも、精神科医での処方に委ねている。

一方、心療内科医は、耳鳴りの状況を詳しく把握していない医師も多く、適切な診療を受けられるか不安も感じる。