耳鳴に対する認知行動療法 として、”マインドフルネス”を耳鳴りの診療に応用する方法に注目する。

耳鳴に対する認知行動療法として、”マインドフルネス” を耳鳴りの診療に応用する方法が取り上げられています。

 

マインドフルネスとは瞑想ではなく心の状態、「ただ目の前のことに集中する状態」です。 例えば、朝、コーヒーを飲む時に、ただ飲むのではなく、豊かな香りに集中して味わってみるとか、手に触れる水や泡の感覚を感じながら食器を洗うなど…。 

 

今回提案するのは、医師の発表している治療法であり、仏教的な治療感覚とは異なります。

だから、少し理屈っぽいです。

 

耳鳴りの困難の多くは、耳鳴りから注意を外せないことによります。

耳鳴を不安に感じると、ますます注意が耳鳴りに向き、不安からストレス反応が起き、これが耳鳴の相乗効果になったいくわけです。

耳鳴りから注意を外すとストレス反応は生じないので、「耳鳴りは気にするな」が常道ですが、ある程度の苦痛度のある耳鳴り患者は「気にしない」ことができないことは疾患者はよくわかる事だと思います。

そこで、「耳鳴りを気にしない」方法として、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy, CBT)の有効性が示されています。

今回は、認知行動療法の一環として、注目されている ”マインドフルネス” に焦点を当てます。

 

昨年、私の耳鳴り苦痛度が高い頃、当ブログで記載した ”うつ”  解消のメニューとして ”瞑想” を続けていた期間があります。

そ頃は、認知行動療法の裏付けのある行為ではなかったのですが。

その時の実感で、精神的苦痛の改善を感じていたことは確かででした。

 

マインドフルネスとは「今、ここにある(ここで起きている)事象について、そのありのままの状態に、判断を交えずに、注意が向いている状態」である。

別の言い方をすると、過去の後悔や未来の心配を脇に置いて、今すべきことにひたすら注意・注力している状態である。

 

マインドフルネスの訓練は、自然な呼吸に注意を向け、それ以外(耳鳴りや雑念)に注意が逸れたら、すぐに呼吸に注意を戻すように意識します。

うまくできれば,耳鳴が知覚されても辛さが生じないという体験ができ、注意 の制御で耳鳴りに対処できると言われています。

 

耳鳴り改善のための、

マインドフルネスの方法

 

実施時刻

できれば毎日同じ時刻。 就寝前は不適。

慣れれば隙間時間でも可能。場所は任意。

緊張が強くて不眠になっている場合にはリラックスできるので有効。

■ 時間管理

開始時にタイマーをセットする。

3分程度から始め、習熟につれて10~20分程度まで伸ばす。

長時間行うより、できるだけ毎日行う。

できない日があっても気にしない。

■ 姿勢の方法

背筋を伸ばし、両手は広げて左右の膝の上に置く。

目は軽く閉じる。上下の歯は接しない状態で、口は軽く閉じる。(いわゆる瞑想ポーズ)

力を入れずに楽に保てる姿勢を取る。

足が床につく椅子で、背もたれは使わない。結跏趺坐は必要なく(しても構わない)、椅 子に腰掛けた状態で良い。

■ 呼吸の方法

自然な呼吸を続ける。

深呼吸など、意識的操作をしない。

■ 呼吸に注意

呼吸している自分の体に注意を向け観察(内観す)る。

息を吸うと体が膨らむことを感じ取る、空気が入る時の鼻の感覚等。

■ 呼吸から注意が 逸れた場合

気づいて注意を呼吸に戻す。 

考えが浮かんだら、頭の中で「考え出た」 とレッテルを貼って呼吸に注意を戻す。 

体を動かしたくなったら、「動かしたいと思った」とレッテルを貼る。

音や耳鳴りに注意が逸れたら、「聞いた」とレッテルを貼って注意を呼吸に戻す。

レッテルを貼るイメージだけでは不十分な場合、考えを川に流す・棚上げする・脇に置く・放 置する等をイメージする。

考えが浮かんだり、周囲の音や耳鳴に注意が惹かれてしまうのは正常な意識の動きなので、問題視せず、自然に任す。

考えが出ないようにする訓練ではなく、考え等に注意が向いたことに気がついて呼吸に注意を戻す訓練なので、考えがたくさん湧いてくれば、それだけ訓練ができると思うのが良い。 

「うまくできてるかな?」「いつ終わるのかな?」「呼吸に注意を 向けるように頑張ろう」「気分が落ち着いてきた」等(疑問・決 意・判断)もすべて「考え」と認識し、流して呼吸に注意を戻す。

■ 考え等に流されてしまった場合

「考えが出たらそれにすぐ気がついて呼吸に注意を戻す」というイメージ・トレー ニングをする。

できない場合は呼吸以外の方法(一歩一歩意識を足に向けなが ら歩く等)や、複数の音の中から一つずつ順に注意を向けて聴 くという注意訓練等を試す。

■ 眠くなった場合

1つのことに集中し過ぎている場合、呼吸以外の体のあちこち(足の裏、手を置 いている膝の感覚等)にも同時に、または順に注意を向ける。

注意の訓練なので、うまくできていると、却って覚醒状態(+ 落ち着いた気分)になる。考えが止まると眠くなりやすいが、考えを止める訓練ではないことに留意する。

参考:森 浩一医師 (国立障害者リハビリテーションセンター)

 

注意事項

マインドフルネスの実践中に、過去の強いトラウマ体験がフラッシュバックされ、強い不安を感じたり、パニックに陥ってしまったりする場合があります。 また、どんな症状が突発的に起こるのか、本人も周りも予測ができません。 そのため、一人でマインドフルネスを行うのは注意とされています。