聴覚過敏の治療法は結果から見ると、特殊の障害のない場合は、耳鳴り治療と同様に行われているのが現状のようです。 私が受けていた治療は、耳鳴り治療と思われるものだけで不安を持っていたのですが、聴覚過敏に特化した治療は確立されていないようです。
聴覚過敏について(3)
● 聴覚過敏の治療
● 聴覚過敏の今後
続けて、堅い内容ばかりですみません。
結論から見ると聴覚過敏の治療法は、特殊の障害のない場合は、耳鳴り治療と同様に行われているのが現状のようです。
私が受けていた治療は、耳鳴り治療と思われるものだけで不安を持っていたのですが、聴覚過敏に特化した治療は確立されていないようです。
今後は、聴覚過敏の治療法が開発されることを望みますが。
私は、現状の治療範囲で、改善を求めるしかないことを再確認しました。
聴覚過敏の治療
[ 治療の概要 ]
急性感音難聴の聴力変動期を除いては、基本的に慢性耳鳴りと同じ内容である。
<聴覚過敏の治療手順>
① 病態の説明
② 治療理論の説明
③ 治療目標の設定
④ 適切な音環境の提示
⑤ 音響療法・薬剤治療
上記の、①〜④の医師からの説明・提示が重要な治療行為だと思うのですが。
現実では、このような治療を受けた患者は数少ないものと思われます。
患者は、充分な自身の状態を把握した上で治療にかかりたいものですから。このような基本的な手順で治療を受けられると信頼感がグーッと増すものと思います。
[ 治療の方法 ]
1) 音響療法
補聴器あるいはサウンドジェネレータを用いた耳鳴り再訓練療法(TRT : tinnitus retraining therapy)は耳鳴り症状と同様、音量の認知機能を回復させ得ると言われています。
ただし音声に対する恐怖・忌避が著しいとき、強い疼痛を誘発する患者は、ゆっくりと音響療法を進めるそうです。
また、サウンドセラピーによる過敏な感覚を和らげることができることがあります。サウンドジェネレータや耳鳴り対応補聴器という治療用機器を耳につけて、かすかなノイズを聞くことにより、不快な耳鳴り音を気にならなくし症状を改善する治療法です。
2)音響防御
耳栓やイヤーマフなどによる音響防御は、患者が自主的に行うことが原則です。
しかし、長時間の装用は音量の認知機能を増悪させる可能性があり、決められた条件下で緊急避難的に用いるよう指導するか離脱させた方が望ましいとされています。
私は、最近カット綿で耳栓代わりの耳栓を着用する時間が多くなっている状況で、聴覚劣化に対する不安を持っています。
医師側からは、耳栓はするなとは言えないようですが、耳栓の有害性は理解しておくべきだと思います。
3) 薬物治療
現状、聴覚過敏に効果のあると言われる薬剤は基本的に存在しないようです。
ただし耳鳴り同様に、聴覚過敏による苦痛度が強い場合は、苦痛度改善の薬物治療が考えられます。
⚫︎ 抗不安薬:聴覚過敏がストレスや不安に関連している場合、抗不安薬が処方されることがあります。ベンゾジアゼピン系が主な薬剤です。
⚫︎ 抗うつ薬:聴覚過敏がうつ病や抑うつ症状と関連している場合、抗うつ薬が処方されることがあります。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や三環系抗うつ薬(トリプチラン)などが使用されることがあります。
⚫︎ 抗てんかん薬::聴覚過敏がてんかんやてんかん様発作と関連している場合、抗てんかん薬が処方されることがあります。ガバペンチンやリラボトリルなどが使用されることがあります。
⚫︎ 鎮静剤:聴覚過敏の症状を軽減するために、鎮静剤が使用されることがあります。ジアゼパムやロラゼパムなどのベンゾジアゼピン系の薬物が使用されることがあります。
⚫︎ 睡眠剤:不眠は疾患に対して増悪要素であるため、睡眠障害には 積極的治療する必要があります。メラトニン: メラトニンは、睡眠の調節に関与するホルモンであり、聴覚過敏に伴う睡眠障害の改善に使用されることがあります。
⚫︎ 症状による特定の薬剤:聴覚過敏の原因により、その疾患を改善するための薬剤が考えられます。私はメニエール病の可能性からイソバイドを処方されました。ただ、ほとんどの薬剤が聴覚過敏に効くというエビデンスはないようです。
4) その他
⚫︎ カウンセリング:精神医学の介入による治療とともに、耳鼻科医が精神医学的アプロー チを実践する必要があります。
ただ、国内の耳鼻咽喉科医が精神医学の介入はほとんど考えられない状況です。
⚫︎ 認知行動療法:認知行動療法を意識した診療は有用だとされています。
認知行動療法は、適切な認知と行動を肯定・支持し、不適切な認知と行動については患者自らが気づき是正できるよう、ヒントを与え支援することを根幹とする治療法です。
症状に干渉を受けた日常の行動や思考に着目し、理論的に根拠のない部分を抽出し気づかせ 。次にそれを変えていくための目標や手段を患者と共に考えていきます。
海外では耳鼻咽喉科医が直接、カウンセリング、認知行動療法などの精神的治療に介入している国もあるようです。
国内では、精神に関わる治療は心療内科などに移行することがほとんどですが、専門外の聴覚過敏を十分把握していない心療内科医による治療に満足できるものか疑問です。
精神疾患を伴う耳鳴り・聴覚過敏などの専門医の治療範囲として、精神的治療のできる医師が増えていくことを期待したいです。
聴覚過敏の今後について
聴覚過敏の今後の方向性として以下のような課題で研究が進められているようです。
でも、私が治療を受ける機会としては、ほど遠いものでしょうが。
● 病因の解明と個別化治療
聴覚過敏の正確な病因やメカニズムについての研究が進みつつあります。聴覚過敏の異なるタイプやサブタイプが明らかにされ、個別化された治療法の開発が期待されています。
● 神経可塑性へのアプローチ
神経可塑性とは、神経系の能力を指し、神経回路の再構築や修復が可能なことを示します。聴覚過敏に対する神経可塑性を利用したアプローチが注目されており、脳の神経回路を修復・再構築する治療法が期待されています。
● 脳神経科学との連携
聴覚過敏は脳との関連が深く、脳の情報処理や神経回路の異常が関与していると考えられています。脳神経科学との連携を深めることで、聴覚過敏のメカニズムをより詳細に解明し、新たな治療法の開発につながると期待されています。
● 無侵襲的治療法の進化
聴覚過敏の治療法には、薬物療法や音響療法、行動療法などがありますが、今後はより無侵襲的で効果的な治療法の進化が期待されています。例えば、脳神経刺激法や音響刺激法などの新しい治療法の研究が進んでおり、その有効性が検証されています。
一部参考:「聴覚過敏の診断と治療」(福岡大学病院耳鼻咽喉科 坂田俊文医師著)