ふあとは小ネタ集になります。ぼちぼち番外編的に更新していきますね。

一番トラブルが多いのは、道具であるのは前回書いた通りですが、原因はコンピュータでの操作に変わった事だと思います。毎回必ず同じタイミングで同じところにセッティングできるのがメリットですが、コンピュータのご機嫌が悪いと、本当に困るのです。
舞台監督部がえっちらおっちらと、黒子に徹して人力で押し出す方が、故障はなくて確実です。
けれど、あの重いお城は人力では動かせませんし、シャンデリアを人の手で落とすわけにもいきませんよね。
トラブルの根っこにあるのは、全ての事が大掛かりになり、華美さを追求したことなんだと思います。最近はプロジェクションマッピングなんかも取り入れられていますので、電気系統のトラブルも増えているのでしょうね。

コンピュータ制御になったのは、照明も同じでして、以前から書いている通りバリライトは悩みのタネでした。得られる効果は華やかさがありますが、時に華美になりすぎ、そしてトラブルも多かったのです。
人間に戻りたい、とお城の家臣たちが歌うシーンは、ポーズの後暗転になり、次のシーンへとつながります。この暗転時に一台のバリライトのシャッターが閉まらず、一筋の光が蝋燭男を照らしたままだった事がありました。
バリライトは一旦点灯すると、電源を落とす時まで電球はつきっぱなしです。明るさは電球前にあるシャッターの開閉で調整します。完全に閉めてしまえば、真っ暗ですね。
どうやら、このシャッターが壊れて開閉できなくなったようでした。
その灯体だけ電源を落として対処しましたが、困るのは、以後その灯体を使用するシーンです。獣王子が本来の姿に戻った直後に、王子の顔を照らすのがこの壊れた灯体だったので、一瞬みんな焦りました。
若干不自然さは残るものの、センターのピンスポットライトでフォローして終演しました。当然暗転の場面で暗転出来ず、事故報告書となりました。

客席で観ているとなかなか分からないと思うのですが、スタッフがつけているインカム(ヘッドホンタイプの連絡経路)では、いろんな会話がされています。
トラブルの対処指示や、舞台裏で行なっている事。これから起こる可能性のあるトラブル。役者の状態。照明ならキッカケの指示も入りますし、怒る声が聞こえることもあります。ボヤキや雑音、営業さんからの場外の報告まで、さまざまな情報が錯綜しています。
そんなドタバタの中で、上演が進んでいるなんて気付かない事が殆どでしょう(スムーズに進む日もありますよ。でもトラブる時は続くのです)。

裏方は普段、黒のシャツに黒のジーンズを履いて、華やかさの無い地味な集団ですが、自分達が居なければ、開演は出来ないとプライドを持って働いています。
劇場へ行った時、プログラムのスタッフ欄の名前にも目を通してみてください。名前が乗るのは各部署のチーフくらいですが、そのチーフの指示のもと何人ものスタッフが働いて、その日の公演を支えています。面白かったと、お客さんに笑いながら帰って貰うために。

舞台は総合芸術です。この先、劇場に行った時には今まで目を向けることのなかった部分に目を向けて見てください。新しい発見があって、また違う楽しみ方を知る事ができるかもしれません。
舞台をつくる者の為に、これからも劇場に通ってくださいね。
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