その30まで来ました。
あと残りもわずかです。

主役を開幕直前に失い、一瞬皆が呆然としましたが、しかし何事も無かったように日は過ぎていき、リハーサルも同じように続けられていました。
劇団の人手不足の深刻さを感じるような時代もありましたが、この頃はまだ作品の上演数と俳優の人数&芸のレベルのバランスは取れていたように思います。
(半島出身の俳優さんがやたらと多かった時がありましたでしょ?あの頃は、流石に観に行くのは控えていました。素敵な方もいらっしゃいましたが、観るに耐えない、聴くに耐えない方も多かった)

獣王子1が抜けても、チャンス到来とばかりにセカンドとサードキャストが繰り上がってきました。
衣装部と床山さんと特殊メイクの方は大変だったようですが、そこは皆プロですのでね、キチンと稽古に間に合いました。

実際の開幕日より前に、公開リハーサルのようなものがあり、今だったらハローウィンで大騒ぎする頃に初日を迎えました。すでに外は寒くなっていたように思います。

赤坂の劇団は、ちゃんとした(という表現は語弊がありますが)小屋ではない所ですが、初日はロビーや客席がきらびやかだったようです。
私達は、開場すると一部の担当者を除き、客席には降りられなくなります。ピンスポットの操作小屋にいる私は、そっと片目を出して客席を除き、インカムから聞こえてくる舞台監督部の声に耳をすませていました。(それこそオペラ座の◯人みたいだ)

ストッキング御殿を建てた彼女とか、宝塚の娘役出身で(当時は)暴れん坊将軍とご結婚なさった方などが来場されているという声が聞こえてくるのです。
私達は、お客様のはるか頭上に座っていますので、結局誰のお顔も拝見することはできませんでした。 ただ、客席中央の前側に、キラキラしたオーラを纏った一群が座っていたのはわかりました。

初日って、すごく緊張するように思うでしょう?それがそうでもないんです。
そりゃあ、ド緊張!という方もおいでになるでしょうが、結構みんな冷静です。
持ち小屋の強みですが、もう何十回、何百回も稽古やリハーサルを繰り返して来ての初日です。ぶっつけ本番ではありません。リハーサルを繰り返すうちに、もうむしろ、早く開幕してお客さんに観せたい!くらいの気持ちになってきます。

そうして迎えた初日なので、程よい緊張感のなかにもリラックス感があり、その日を迎えられた喜びが舞台裏には溢れていました。

劇場の舞台裏には、必ず神棚が備えられています。舞台の成功と怪我などアクシデントが無いように、みんな手を合わせます。
全員でその神棚を拝んだ日もありました。
開演前に、毎回毎回手を合わせる方もおられます。
私も初日の夜、手を合わせてから持ち場に上がりました。

劇場によく行く方ならご存知と思いますが、大抵1ベルと2ベルがあります。
1ベルというのは、「もうすぐ開演するので、ロビーにいたりトイレに行っている方は、早く席に戻ってね」という着席を促す合図。2ベルというのは開演の合図です。
そして、この劇団は5分押しが当たり前です。
押す、というのは遅れるという事。
開演=2ベルが、チケットに印刷してある時刻より5分遅れるよ、というのが「5分押し」という意味です。
6時半開演と印刷されているなら、1ベルが6時半、2ベルは6時35分になります。
ギリギリに劇場に飛び込んでくる方は多いです。平日だと仕事終わりの観劇になるので、6時半でも早いくらい。金曜日などは7時開演っていう演目もありますね。

遅れてくると、開演後一定時間は入場できず、ロビーのモニター前で待っていなければなりません。プロローグが終わり、照明が明るくなった頃に、案内人に先導されて着席となるので、チケット代のいくらかを棒に振ります。(演劇の導入部って、気持ちの入り方もあるし、大事ですよー)

そういうアクシデントを極力避けるために、5分押しが慣例でした。
特別な時もあり、大雪で電車ダイヤが大混乱とか、事故で止まっているとかの情報が入った場合は、現状を確認して更に押す時もありました。なるべくお客さんに、初めから観劇してもらいたいという配慮です。
ただし、あまり遅れすぎると、帰りの電車が無いという方もおられますので、そこは舞台監督の判断でした。


また長くなってきました(汗)
明日に続きますね。
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