初演からすでに20年間以上経ったのですね。
仮面の男のミュージカルは、今年で日本初演から30年ですって。
年月の経つのは早く、でも若い頃の思い出って色褪せないですね。


キャストが発表されて間もなく、団内では稽古が始まりました。
海外製ミュージカルを翻訳して上演するときに、大きな問題になるのが、歌詞が翻訳ではなく意訳になってしまうことです。これは劇団に限らず、東◯さんとか、宝◯さんでも同じ悩みがあるようです。
I love youだと、音符は3つ🎶で良いのですが、あいしてるだと、5つ必要なので、言葉を端折ったり別の語に置き換えないと歌えませんよね。

結果、原歌詞より、かなり情報量が減ってしまいます。なんとかそれを補おうと、台詞が説明くさくなるのはよくある話で、なんとか良い方へ持っていくために、演出部ではかなり苦労されてました。翻訳自体は、その道のプロに依頼しますが、歌詞として成立するように、代表などが手直しします。
実際、稽古が始まって役者が歌ったり動いたりすると、歌い難い箇所が出てくるため、稽古中にころころ歌詞や台詞が変わり、連絡が回ってきます。初演時と今では歌詞が違うなんてのもザラです。

仮面の男のミュージカルだと、
「悲しみの涙は  憎しみになる  今」という歌姫の歌詞が「悲しみの涙  今  憎しみに変わる」になってます。(ラストシーンの辺り)発売されているCDの歌詞が違いますよね。
詳しい方だと、もっと沢山ご存知でしょう。

あんな変更が、日常茶飯事でした。
変わって変わって、元に戻ることもよくありましたね。
N劇場での話の際に、日本語台本に英歌詞が書かれていて、そこにキッカケが記入されていた話を書きましたが、こういう理由があるようです。

裏方の一部は、偉いさんたちが視察に行った、ロス版の映像を観ておりましたので、一応の完成形を先に知っていました。
ただし、役者さんは先入観を持ってしまうため、渡航して観ることは禁止されていました。(一部の方だけはOKされていましたが、数のうちの数ですね)その分暗中模索の役作りとなります。

なかなか台本が安定しない中で稽古が進むのは、不安要素ではありますが、劇団自体はかなり以前から翻訳ミュージカルに慣れているため、いつもの事という感じで淡々と稽古を進めていました。

読み合わせ的な稽古から、一応完成した歌詞を乗せ歌の稽古に移り、一方ではダンスの振り写しを行なっています。振り付けは、指導される方(振付師のアシスタント)が来日して教えてくれる場合と、団内のダンス畑の方が教えてもらいに行く場合がありました。
ネズミー社から、演出の仕上げにやってくる日までに、ある程度の形に仕上げておかなければならないので、慣れない役者だと焦りが出てきます。怪我をされる方も、ちょくちょくおいでになりました。

歌、ダンスなどに分かれて各々稽古して、やがて一緒に繋げての立ち稽古に入ります。この辺りで、一旦ネズミー社の演出アシスタントが来日してきました。
もちろん英語で話しますので、演出部の方が通訳として側に付きます。

驚いたのは、役者さんの中に英語の得意な方が多くいらっしゃること。バレエやオペラなどで留学した経験をお持ちの方々は、日常会話以上のお話ができるようでした。ちょっとしたニュアンスの違いも伝わりやすく、英語が話せることのメリットを少なからず感じる出来事でした。

アトリエと呼ばれた大きな稽古場で、キャストが全員集合した際、ネズミー社のアシスタントが紹介され、「私の話している英語が分かる方は手を挙げてください」って言いましてね。それをまた、丁寧に通訳してはるんですよ(笑)わかる役者さんは、通訳しなくても手を挙げてますって。思わず突っ込んでしまったエピソードでした。

ちなみに裏方にも、ネズミー社からサポート役が付きます。仕込み作業が始まると同時に来日されました。
照明にはおふたりこられましてね。照明全体のサポート&アドバイスを担当される方と、ムービングと言って、コンピュータで動きや色を制御できる灯体(バリライトを使用しました)のサポート担当でした。
バリライトからは、日本代理店の旧バリライトジャパンからもサポート役が参加されました。ホント裏方も大規模です。何十億とイニシャルコストがかかるのは当たり前なんですね。

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