なかなか作業までたどり着かないー。
20年前であっても、あの寒さは忘れない。


以前書いた通り、わたくし北陸の雪の多い地方の生まれです。今年の冬は流石に実家が潰れないか心配いたしました。久々に雪掻きをして全身痛くなりましてね、、、歳を感じました。閑話休題。
そんなこんなで、寒さには強いはずだったのですが、このO町は更にその上を行く寒さ。朝起きてから夜寝るまで「寒い」のです。
初めて訪れたのは、夏休みが終わって間もなく。横浜では、まだ「暑いーー💦」と言いつつ作業をしていた時期です。

ところが、車で高速に乗ってO町に近づくにつれて、空気がヒンヤリしたものに変わってきて、着いた頃には「寒い」に変わっていました。先に倉庫に行っていた方から、冬の服を一応持って行くようにとアドバイス頂いた理由が分かりました。長袖のトレーナー、パーカー、ウインドブレーカ、薄手のセーターなどカバンに入れていましたが、どれも無駄にはなりませんでした。
当時、UNIQLOがあったら、かなり助かっていたでしょうね。ヒートテック、フリース、ウルトラライトダウン、、、。一式セットで持参していただろうな。

ここへ行く方法は2つありまして、劇団所有の車使用か電車です。電車は途中で在来線に乗り換えるのと、駅から倉庫までの送迎が必要なので、手間がかかるため、各部署乗り合いで車を使うことが多かったです。
一度、電車で向かった時に、ウトウトしていたら降りる駅を間違えましてね(苦笑)。焦った焦った。都会の電車やバスと違って本数が少ないんですよ。次の電車をヤキモキしながら待ちました。

ここへ行くと、まず管理事務所に出向いて、部署や氏名、宿泊日数を申告して受け付けて貰います。荷物を宿泊部屋(合宿所みたいな畳の部屋)に置いて着替え、そこから各部署の倉庫や作業場まで向かうことになります。

倉庫内は更に寒いです。遮る建物が近くに無いので明るいのです。が、風が強くダイレクトに吹き付け、暖房が無い(当時は石油ストーブのみでした)ので下手をすると、外の方が陽が当たる分、暖かいときもありました。

照明部で管理していたのはユニット、ケーブル、灯体、スクローラー(ゼラの色を変えることができる灯体の付属品)、マシン系、ゼラ、替えの電球がメインです。一番スペースを占領するのは灯体とケーブルでした。(なんせ大量に作ってましたからね)
ユニットはひとつひとつが大きいのですが、劇場建設に合わせて直接納品されるものが多かったので、倉庫には余り置いてありませんでした。

一番初めの仕事は、劇団が所有している機材を整理することでした。棚はあらかじめ納入されてありましたので、置き場所を決めて収納し、在庫数を記録し、メンテナンスすべきものは直すことでした。
全国公演を終えてトランポが帰って来ると、間髪入れずに、新しい公演のために荷出しが始まります。出納表があっという間に埋まっていきました。
倉庫が出来た頃は、割とのんびりしていた各作業ですが、一旦本格稼働し始めると、作業が重なる時期は慌ただしく1日が過ぎます。

トランポに乗って帰って来るのは、照明機材だけではありません。一番場所を取るのは、大道具でした。これらはある程度の大きさにバラしてトランポに乗せて運びますが、倉庫に帰って来ると、一度修理していたようでした。木材が多いので、割れや色落ちが目立ちます。公演先でもマメにメンテナンスしていましたが、大きな修理は場所と時間が必要なのです。
反対に、道具を組み立てるための場所やクレーンも倉庫にはありましたので、荷出しの前には更なる確認と、劇場内で扱いやすい程度の規模まで組み上げていました。

各部署で、倉庫のテリトリーがありましたが、トランポが横付けされる場所はある程度決まっていました。搬入口が備えてある棟がありまして、荷出しの際は、トランポ到着時刻に合わせて機材をそこへ降ろします。

最初に悩むのは、トランポへの積み込み順です。トランポ内でピタリと収まると、道具や機材が揺れたりズレたりして傷むことが少なくなります。ただテトリスの様にピタリと収まるだけでなく、仕込む時に必要な順で降ろすことが出来なければ非効率的なので、後から必要になる物から積み込みます。大きな道具から積めば収まり易いのですが、大抵、大道具の方は最初に組み上げないといけません。作業に時間を取られるのと、道具自体にも照明を仕込むことがあるので、他の作業にも障りが出てきます。そういう事を考えながらの積み込みでした。

当時、私が知るうちで一番トランポ数が多かったのは、タップダンスのミュージカルです。全国公演で回ると決まった時には、スタッフ一同頭を抱えたそうです。多いんですよ、機材も道具も。確かトランポ3台で全国を回ったはずです。先輩曰く、3台で収まったのは凄いんだそうな。トランポだって、運転手やトラックの借り上げ代が必要なので、道具が多いから沢山トランポを使用すれば良いわけではありません。この時は、模型を作ってまで積み込みのシミュレーションをしたとか。乗せきれなかったら笑い話では済まないので大変だったようです。

ここでの作業に慣れてきた頃、しばらく倉庫との縁が切れました。
子供向けミュージカルと例のD社のミュージカルの準備で、関東に拘束される事が増えてきたからです。いよいよ、劇団初の大きなプロジェクトが本格的に始まりました。専用劇場での仕込み開始までもう間もなくです。

{3F5D8B85-3FA4-4EB0-B6CD-9E799C0A4C7A}