あれから20年。時の流れるのは早いですね。
日比谷のN劇場で公演することは無くなったみたい。

仮面の男のミュージカルの現場研修は、数日で終わりました。私達、入ったばかりのペーペーにでも出来そうな事はあまり無かったのです。
次にこの劇場に来たのは、アメリカの、、、ロミオとジュリエットをベースにしたミュージカルの仕込みの時になります。

劇団には、いくつかの決まり事が存在していました。
仕込みが終わると、照明だとアタリをとったり(シュートとも言います。照らすべき場所に灯体を向ける作業です)シーンごとの明かりを作って、操作卓に入力するなどします。
こんな時は、作業をしている様子を見学させて貰う事が出来ました。
照明の操作をする部屋を「調光室」と言いますが、ここは余り広さがないので、客席からアタリの様子を見せて貰う事が多かったです。
ただし、座る場所は決まっています。というか、座ってはいけない場所が決まっていました。

客席っておおまかに表すと、通路で前後2ブロック、更に上手、中央、下手の3ブロックに分かれています。このうち、中通路より前の中央ブロックは座ってはいけません。

というのも、仕込みが終わり舞台の上での稽古が始まると、演出家が劇場入りされます。
中通路に演出家用の椅子が用意され、そこから稽古をつけるのです。なので、彼の視界を遮らないように、前の中央ブロックは、いつも座ってはいけないゾーンになっていました。
舞台稽古の時には、演出家の横に「ダメ取り」と呼ばれる、演出家が出した「ダメ」(直すべき箇所)をノートに書き取る係の子が座ります。
演出家お気に入り、、、というと御幣があるかな、、、期待している若手女優さんが書き取りされていました。
ひと通り稽古が終わると、演出家を囲むように、俳優も裏方も客席に集まります。係が、書き取った「ダメ」を1つづつ読み上げて、それに演出家が注釈をつけます。俳優へのダメだけでなく、道具の出入りが遅いとか、背景幕の昇降スピード、照明の明るさや転換のタイミングなど裏方へのダメも含まれています。

それが終わると一応解散です。裏方なら作業をやり直したり修正します。
役者さんは、時間のある時には稽古をしたり、劇場の閉館時間が迫っている場合には劇団に帰って稽古する事もあったようです。

そのほかにも、舞台の上で作業をする際には腕組みをしないとか、不文律ですね、決まっていました。
そして、誰もそれを教えてはくれないんですね。叱られて初めて知るという、ちょっと変わった世界です。

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