20年前の思い出話です。
懐かしいなーーーと自分でも思っています。

 
1日目の仕込みは、仕込む場所に機材を吊り込んで終わりました。ケーブル関係は、一部だけ這わせて終わりました。照明だけが仕込む訳ではないので、音響や道具と兼ね合いをつけながら作業は進んでいきます。

外国産のミュージカルを輸入して上演する場合、オリジナル版を周到する場合と、自国で一部内容を変える場合とに分かれます。 

この仮面の男のミュージカルも、大抵はロンドンのオリジナル版の演出や美術で上演されていますが、国によっては美術デザインや振り付けが違います。美術が違うだけで、かなり印象が異なりますが、どれもオリジナル版のアレンジにしか観えないという方もおられるので、世界的な評価としては、オリジナル版は秀逸の出来のようです。日本はオリジナル版をそのまま輸入してます。(一部アレンジされてますが、ほぼロンドンやブロードウェイと同じです)
音楽は変えてはいけません。これは全世界共通です。
ただ、この作品唯一大幅なアレンジを加えた版がありましてね。ラスベガス版がそうです。本来2幕仕立の作品を90分程の1幕モノに変えてあります。カジノに足を向けさせるために、ベガスのステージは短時間なのが必須だそうです。シャンデリアなんかハデですよーー。上演前はいくつかのパーツに分かれているのですが、オーバーチュアの音楽に合わせて合体して天井に上がります。ステージというよりショーなのですな。ラスベガス・スペキュタクラーって言ってましたっけ?

私、この作品で「何とかならんかったのか?」と思った箇所が一つありましてね。歌姫の楽屋の鏡、、、あれ開き戸みたいになってるんですよね。鏡が横にガラリと開いて、仮面の男とご対面→地下通路→地下の隠れ家へと導かれる訳です。
私としては、クルンと回る鏡の扉が良かったんです。(忍者屋敷のどんでん返しですね)これ、初めて観た時から思ってました。
なんでできないのか?
楽屋の書割を見るとわかるんです。「あー、これは仕方ないわー」って思いました。
あの楽屋、歌姫側と仮面の男の立つ側と二つの書割に分かれてるんです。で、仮面の男の方だけ奥上がりの傾斜がついています。八百屋って呼ばれる状態です。なので、鏡を回したくても床が引っかかって回せない訳です。いや、回すことを前提で話しちゃダメなんですが「回すのは無理だなーって」裏方にまわって初めてわかった訳です。

反対に、台本と音楽だけ輸入して、振り付けと衣装は日本で作った作品もあります。猫だらけのミュージカルはそうですね。この作品の場合、日本に居てロンドンには居ない猫がいます。また、同じ名前の猫がいても、全く違うキャラクターになってたりします。歌うパートも違います。
 日本でアレンジできるのは、良いこともありますよね。近年、この猫さんたち衣装がコロッと変わったりしましたし、飾られているゴミも上演地ならではの物があったりするので、観る方としてはそれもまた楽しいのではないでしょうか?

日本人は真面目、器用、効率化を図るのが上手い国民であるようで、外国の舞台よりかなり仕込み期間が短いです。
仕込みの間も、劇場の借り上げ代金がかかるので、早く仕込んでチケット代で回収しないといけない事情もあるでしょう。
海外だと、半年近くチンタラやってる事も、1月半位で終わらせていました。(海外はロングラン前提なので、仕込み期間中の借り上げ代はゆっくり回収すれば良い訳。早々にクローズすると赤字なのはどんな作品も一緒)
私が知る作品だと、D社(ネズミーランド)のスタッフがビックリしてました。一つ前の開幕地はロサンゼルスでしたからね。

そんなこんなで、キャットウォークで吊り込み作業やらアタリをとって初日が終わりました。
帰ったら夜の10時でした。やはり普通のサラリーマンやOLとは違います。

1日目からグッタリ疲れて、早々に寝てしまいました。まだまだネットはパソコン通信などと呼ばれていた黎明期。スマホなんか無くて良かったです。

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