いつもツラツラ書いていますが、ちょっと方向を変えて番外編です。
当時、劇場ではどこでも対処に頭を悩ませていたことです。
日本中を震撼させたテロ事件に起因します。

入団前、自称宗教団体であった某カルト集団が、ラッシュの地下鉄内で毒ガスを撒くというテロ行為がありました。
駅員さんをはじめ、乗客が複数犠牲になりました。銀座にある大きな総合病院では、外来診療を中止してまで乗客の治療にあたりました。ネットでは、当時治療にあたった救急医が裁判で語った、事件当日の病院の混乱ぶりを示す記録が読めます。
前年には信州で、同じ毒ガスで住人が犠牲になっており、日本中が不穏な空気に包まれました。(犯人は同じ集団でした)

実は私、あの日バイト先に向かうため地下鉄に乗っていて、あと2本ほど前の電車に乗っていたら確実に巻き込まれていました。
赤坂見附駅で、強制的に電車を降ろされて、さてどうしたら良いのかと途方に暮れたのを覚えています。
当初は、銀座辺りで爆発事件があったという一報が流れていました。

信州の事件の際、治療にあたった医師の進言により治療の方向が決まり、事態は収束に向かうのですが、当然その毒ガスを撒いたのは、一体誰なのか?という話になりました。
某カルト集団の名前は、事件後間も無く報道され始めます。入団直後は、その話題で持ちきりでした。

困ったのは劇団です。
(劇場のように閉鎖された空間に人を閉じ込める行為に、みんなが恐れを抱いていましたが)上演開始後は、一定時間真っ暗の中に観客を置くことになります。何らかの事件後、上演を中止し場内を明るくし、全員無事に避難させるのは至難の業です。
それ以前に、何らかの危険物を場内に持ち込むのを完全に防ぐのも困難です。
ペットボトルに入った毒性のある液体を「飲みかけの水です」と言われては、没収することはできません。風体が個性的な人を、怪しむのも失礼な話です。
結局、観客の良心と秩序に頼り、手荷物検査を徹底するくらいしか対処方法は無かったと思います。

劇場や野球場、コンサート会場では、手荷物検査が念入りになっていました。若い人には信じられないかもしれませんが、昔は手荷物検査と言っても、ちらっとカバンを見て、後は口頭で「録音機器は持ってませんね?」と聞くくらいでした。
危険物を持ち込んでいるかもしれないという考えが薄かった様に思います。それより隠し撮りしたライブ音源や写真が、海賊版として出回る方に気をとられていた感があります。

今の様にカバンの底まで覗かれたり、カバンの周囲を手で押さえて武器のようなものが無いか手触りで確認したり、ペットボトルが没収されるなんてことは、この地下鉄毒ガス事件以降徐々に広まっていったのです。
飛行機に乗る際は、もっと厳しいです。こちらは9.11事件の影響ですよね。

昨今、特に欧州で続いたISによるテロ事件の報道を聞き、あの頃の日本の混乱ぶりを思い出しました。(実際、劇場での銃乱射事件がありましたね)今、パリのオペラ座では、手荷物検査だけでなく、観客のボディチェックも行なっているそうです。
20年前、地下鉄毒ガス事件は、海外でも恐ろしく報道されていたそうですが、喉元過ぎれば熱さも忘れてしまうのでしょう。

そういう私は、劇場にも映画館にも行きます。大丈夫と思いながらも、劇場に足を踏み入れる瞬間、あの日の赤坂見附駅を思い出すのです。
舞台を観るのも命がけの時代が来てしまうのでしょうか、、、。


こんなに厳しいのに、You Tubeには、コッソリ撮影したと思われる映像が、わんさか公開されています。どうやって撮影機器を持ち込んだんでしょう?

このカルト集団は様々なところで日本に影響を与えていました。劇団も例外ではなく、意外な形で関わってきます(そんなに深刻な話ではないハズ)それもおいおい番外編で。

地下鉄毒ガス事件の直前には、日本は神戸を中心とした大地震にも見舞われました。西の大地震、東の毒ガスと大変な年の幕開けだったのです。