あれから20年。
猫も仮面の男も健在みたいですね。
色々批判もありましょうが
数十年もの間、1つの劇団を規模を拡大しながら維持していけるのはすごいことだと思います。

ボッロボロのプレハブ小屋に案内された新人達。
小屋をぽかんと見上げておりました。
見ると、後ろには音響部も一緒です。
私達と同じように面食らっておりました。

この時期、例のD社(ネズミの国)ミュージカルの開幕だけでなく、少し先の信州冬季オリンピック開会式演出の準備にも入っており、劇団全体が手狭になっていたのでした。(D社のミュージカルは、東京と大阪同時開幕でしたので、俳優さんだって裏方だって、セットも機材も衣装も全部2倍要るんです。)

そのため、入団した頃は増改築を行なって、新しい稽古場を幾つかと、裏方用の事務所を作っている真っ最中でした。同時に、信州の方でも劇団専用の機材倉庫の新築も行なっていました。

増改築をしている間は、もともと劇団敷地の隅に建っていた機材倉庫を仮事務所として使っていて、私達が案内されたのはそこなのでした。
通称「フ◯ントム小屋」と呼ばれており、、、お分かりの方もいるでしょうが、「フ◯ントム」と呼ばれる仮面の男が出てくるミュージカルがありまして、、その舞台で使う音響と照明機材を仕舞っていた倉庫です。(衣装やセットはまた別の場所にあります)
元は、一階と二階で音響と照明が分かれて機材を置いていたらしいのですが、増改築に入り、一階に機材を集中させ二階に人が入ったわけです。まあ、、、狭かった😓

小屋の二階に上がるためには、鉄製の階段を登ります。みんなパンプスや革靴を履いていたので、カンカンうるさく音が鳴りました。音響と照明の20人近くの新人が一気に登って、小屋が潰れそうです。すでに中にはチーフさんはじめ、その時本番を担当していない先輩さんが居ましたので、あのボロ小屋に30人近くが入った訳です。
(「三十三間堂か?」って言った方がいました。まさに)

出迎えてくれた先輩さんたちも、私達の人数に圧倒されていました。
「明日からどうするの?」
という焦りとも不安とも取れる声が聞かれました、、、それは私達の方が聞きたい、、、。

その日は、各部署で事務所に居る方のみ紹介していただき、午前中で解放されました。
翌日から、日比谷にあるN劇場で大型ミュージカルの仕込みが始まる予定でした。入団以後は、全国公演を行なっている班などにも混じって、現場に慣れていく予定になっており、その第一弾がN劇場です。

今では、大都市圏に専用劇場を持っていますが、その頃はまだまだ発展途上の頃でしたので、既存の劇場を借りての上演です。
既存の劇場は大きさや設備に限界があり、必要なセットを組み込むために劇場自体を改築しなければならなくて、また借りられる期間にも制限がありました。チケットはまだまだ売れそうなのに、次の公演のため明け渡さなければならないことも度々あったそうです。それらの問題を解消するために、専用劇場の建設に踏み切った訳ですが、当時は仮設劇場での上演がようやっと、という感じでした。(新宿にあった「猫テント」とか、往年のファンの方ならご存知かな。入団当時は品川の港南口に「猫シアター」がありました。仮設の建物は、法律上使用期間の制限がありましたので、時折メンテナンスと称した休演期間を設けておりましたが、それも繰り返すのには限界があるようでした)

現場に行けば、その作品のチーフや関わる先輩さんにも会えるので、自己紹介はそこでそれぞれ行う、という事になりました。
初仕事は、仮面の男が怒りに任せてシャンデリアを落とすあのミュージカルでした。

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