世間はオリンピックだ金メダルだと大騒ぎしてるのに、1人マイペース。昔を思い出しながらブログ書いてます。
昔のお話ですので、今とは随分違うことを念頭において読んでください。


劇団入り口を入ると、左突き当たりに階段があります。すれ違いができる程度のあんまり広くない階段です。その階段手前に掲示板があり、稽古場ごとの練習演目やキャスト表などが貼り出してあります。熱心な劇団ファンと思われる志望者は、その掲示板を穴が開くほど見つめていました。

「面接に来た方はこちらへ」の案内矢印は、この階段をおりるように指示していました。少し急なその階段を、慣れないスーツでおりていくと、すぐ右に曲がる廊下につながりました。
この廊下はひたすら真っ直ぐで、廊下に沿って色々な部屋があり、食堂もこの廊下沿いにありました。
廊下の右側にあるお手洗いを通り過ぎると、扉が開けっぱなしの部屋がありました。どうやらそこが面接に来た者の待機室として割り当てられている様子。覗くと稽古場だと一目でわかります。
入って右手に鏡があり、床はリノリウムが敷いてあります。自分が通ったバレエの稽古場を思い出しました。(たしか第1稽古場だったと思います)

劇団は坂の途中に建てられているので、窓は全面にはありません。この稽古場だけでなく、たいていは壁のかなり上の方にしか窓は無かったです。周りに遮る建物がありませんので、採光はそれなりにありました。


稽古場にはぎっしり人がいます。
パイプイスを並べてくださっていましたが。少しふっくらした方だと縮こまって座らなければならないほど、隙間なくイスが並んでいます。イス2〜3列が1つの部署に割り当てられていました。

劇団では裏方全体を「技術部」と称していて、さらにその中が照明係や音響係などに分かれていました。
自分もバレエ公演で経験していたはずですが、改めて舞台に関わるスタッフの多さに驚きました。
舞台監督、照明、音響、大道具、小道具、衣装などなど。
今回の面接は、技術系のスタッフを採用するものでしたが、他には事務系(総務課、経理課、営業など)、音楽部、俳優を採用するための試験が時期を見て行われていたようです。

衣装部門は、一目でそれとわかる女性の受験者が多かったです。皆さんリクルートスーツじゃないんです。殆どが服飾系の大学や専門学校を出た方なので、面接の時の服は、ご自身でデザインし縫製した物を着てこられていました。それもアピールの1つだったのでしょうね。確か、面接時に作品を1着提出するようになっていたはずです。

ガテン系の男の方が多かったのは、大道具さん。公演の際の、舞台の道具の出し入れだけでなく、作成も行いますので、力のありそうな方が多かったです。工業科、建築科辺りを出られた方も居ましたし、元大工ですって方もいました。この時の面接では一番人数が多かったように記憶しています。
(本当に大きな道具、、、例えば大きなお城全体とかは、別の工房に発注して作ってもらうのですが、背景幕や城の中の家具などは、大道具さんが作ってました。俳優さんが手に持つものは小道具さんが主に担当します。衣装は女性の方が圧倒的に多く、大道具は男性ばかり、半々なのが音響、照明、小道具、舞台監督だったかな。それでも全体的に男の方が多かったです)

稽古場の入り口にいた、おそらく事務の方に「どこの部門ですか?」と聞かれたので、「照明です」と答えると、奥から4列目辺りを示され、「あちらの椅子でお待ちください」と案内されました。
照明はイスが2列になっていて、20人以上が面接に来ておりました。同じ学校から受けに来たと思われる子たちが数人いましたが、殆どが知らないもの同士。特に話すこともなく、みんなうつむいたり目を瞑ったりして待っていました。
私は、稽古場に行くとワクワクする習性があるので、天井を見上げたり鏡を見たり、壁に寄せてある移動型のレッスンバーをちょっと撫でてみたりと落ち着きなく過ごしていました。面接に来た喜びより、稽古場にテンションが上がっていました。緊張してはいましたが、顔はニコニコしていました。鏡に映る顔が嬉しそうにしてたのを覚えています。周りがみんな競争相手だということも、すっかり忘れていました。

面接開始時刻になると、稽古場の入り口が閉められました。事務の方が、面接の進め方を淡々と説明され、私達はシーンと静まり返って聞いていました。
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