ねこは ひとりぼっちだった
誰のミルクも飲まなかった
けれど 青年がねこをやさしく撫でた
ねこは 眼鏡の青年についていった
ねこは 首輪がついているけど ノラだった
誰も信じないノラだった
ねこは 彼のミルクを飲んだ
あたたかな毛布で眠った
ねこは 彼の靴の音を覚えた
僕がついているよ と笑った
「ずっとずっと一緒にいるよ 僕が守ってあげるよ」
ねこは 嬉しかった 寒い夜が終わった
ある日 ねこは見た
青年は 眼鏡をかけていなかった
いつもの帽子もかぶっていなかった
いつもと違う匂いで 美しい女性を連れて
綺麗な毛並みの猫を抱いていた
今日は ねこに逢いに来なかった
青年の気まぐれだと
ねこは 気づいていなかったのだった
毎日すごした 公園で
ねこは 泣いていた
ねこは もう
青年のコトバを 信じなくなった
青年は いつも ふらっときて
「おまえは可愛い」と
ねこを愛おしそうに 可愛がった
たくさんあそんで たくさんえさをあげた
けれど それは気が向いた時だけだ
ねこが待っているときは
あの靴音はきこえてこない
ねこがお腹を空かせても 彼は気づかない
にゃーと鳴いても 届かない
ねこは また 寒くなっていた
寂しさで 凍えていた
青年の手を離し
別の街に向かったねこは
また あたたかな毛布をもらった
そのひとの手から ミルクをのんだ
もう 泣かなくていいのかな
ねこは 独りで眠る
その晩は 眼鏡の青年の夢を見なかった
月明かりの下で
ねこはノラのままだった
