別れ話
僕には付き合って2ヵ月になる彼女がいます。
傍にいると猫の様にいつも寄り添って来て、本当に可愛くて。
優しいし、文句の付けようがないぐらいの自慢の彼女です。
今日もいつもの様に僕の家で2人でのんびり。
『ふぁ…』
僕のあくびを見て、彼女は…
「いつもお仕事大変だもんね。疲れてるでしょ…?」
とそっと頭を撫でてくれた。
『ありがと。でも、仕事疲れはお互い様だから。君の方も大変だしね』
「ん…ねぇ、新作のネックレスが出たの」
『欲しいの?』
「すごい可愛いんだよぉ」
『でも、この前買ってあげたよね』
「えー。欲しいよ~」
『我慢しなさい』
「そう。なら別れるわ」
『いや、待ってよ。冗談だよ』
「だよね。私のこと愛してくれてるんだもんね。ありがとう、大好き」
と言って、彼女はキスをして来た。
軽いキスからだんだんと長い時間のキスへ変わり、そっと胸の方へ手を持っていく…
「あっ…」
『ん。』
「ちょっと待って」
『え?どうしたの?』
「用事思い出しちゃった。帰る」
『そ、そうか』
「じゃあね。ん~次会う日は来週の水曜にしようか。その時にネックレスも買ってね。じゃ!」
この所、彼女に良い様に自分が利用されているのではないかと思わされることが度々ある。
でも、そんなことは信じられなかった。彼女の大好きという言葉が頭から離れない。
次の水曜日、約束通り僕は彼女へネックレスをプレゼントした。
嬉しそうな彼女の顔。愛しくてたまらない。
「ありがと。どう、似合う?」
『うん、とてもよく似合ってるよ』
「じゃ!」
『え…?この後、食事とか行こうよ』
「予定入ってんだよね、ごめんね」
彼女は早足で行ってしまった。せっかく会えたと思ったのに。
今月の給料も彼女へのプレゼントで半分程消えてしまった…でも、彼女の笑顔の為なら。
その何日か後、ぱったりと彼女との連絡が途絶えた。なんだろうか、この絶望感…
僕は彼女を必死で探した。しかし、見つけることが出来なかった。
1ヵ月後、仕事帰りのことだった。
楽しそうに他の男と喋っている彼女の姿が有った。
『探したよ』
「あ…」
誰だよこのださい男~と笑う男に僕ははっきりと、
『この子の彼氏です』
と答え、僕は彼女の腕を引きその場を後にした。
「ねぇ、痛いよぉ…」
『ごめん。でも、さっきの男は何だい?』
「しつこいナンパ男よ。もう、手離して」
『ずっと探したんだよ。何か有ったの?』
「風邪引いて寝込んでただけ」
『もう大丈夫…?こんな格好でまた風邪引いたら』
「平気だから。離してってば!」
無理やり僕の手を振り解いて、彼女は走って行った。
追いかけて行ったら嫌われてしまうだろうか?そんな不安がよぎり僕は動けなかった。
その何週間後、彼女から連絡が入った。
「すっごい可愛い指輪が出たの。店員さんがね、この指輪はぁ私の為にあるようなもんだっていうぐらいで」
『分かった…』
この前のことも有って、素直に言うことを聞かないと嫌われると思った。
指輪を手に入れた彼女は満足げだった。
そして、いつものように大好きと笑顔で言って何処かへ行ってしまった。
『あ、しまった…』
財布を見ると空だった。仕方なく銀行へ行くことにした。
その時、僕がプレゼントした指輪を自慢げに見せながら友達と話す彼女の姿が有った。
僕は何も言わず、その様子を見ていた。
「本当さ、バカ。あいつ、私に振られるのが怖くて仕方ないのよ。絶対、童貞だし。あんなキモいのと本当に好きで付き合うわけないじゃない」
少しだけど、勘付いてはいた。僕はただ良い様に利用されていただけだったんだ。
僕は怖かった。そんなの信じたくなかった。でも、もう遅いんだ。
呆然と立ち尽す僕に彼女は気付いた様で慌てて、僕のもとに駆け寄ってきた。
「あれ?ど、どうしたの?」
『さっきのこと…』
「え、あ、あれは。他の人のこと。あなたのことじゃないよ。ねっ!好きだから、安心して」
『もう、君のことは信用出来ない、さよなら』
この別れをした後、僕は何か心の重荷が取れた様な感じがした。
そして、僕は次は嘘の恋愛なんかしないで、ちゃんとした恋愛をするんだと決心した…