多くの子どもたちを見ていて、強く思うことは、どんなに勉強や運動ができても、すぐにキレたり、物や人に当たったり、不安が強くなってしまったら、自分の力を十分に発揮することはできないということです。
かつては、子どもの発達に課題があると、勉強さえできれば何とかなる、と考える保護者がたくさんいました。果たして、本当にそうなのでしょうか。
情緒が不安定だと、必然的に対人関係もうまくいかなくなってしまいます。
人は、いつ不安定になるかわからない相手と安心して過ごすことは難しいのです。
そして、子ども時代の「情緒面の不安定さ」をそのままにしておくと、やがて二次障害(不安症、うつ、不登校、ひきこもり、強度行動障害など)につながっていく可能性があります。ここで、2つの例を紹介しましょう。
〔大学を休学して、なかなか卒業できないAさん〕
Aさん(男性)は小学生の頃から成績がよかった。しかし、人とのやりとりが苦手で、常に不安傾向が見られた。何とか中学・高校に進み、大学は自分の成績よりもレベルを下げた学校に進学する。1年生は授業に出ていたが、2年生になると、大勢の中にいることがつらくなり、休みが増え、単位の大半を落としてしまった。その後、朝起きられなくなり、やがて休学する。毎日、SNSやYouTubeを見ながら、2年間家にひきこもっている。
〔特別支援学校卒業後、なかなか就労に結びつかないBさん〕
特別支援学校を卒業したBさん(男性)は、在学時、文字やかずの勉強が得意だが、すぐにキレるという特性が見られた。高等部3年生のとき、働く場としての生活支援の施設をいくつも受けたが、どれも面接で落とされてしまう。初めての場に馴染めず、激しく動き回ったり、物や人に当たってしまうため、面接は毎回、途中で切り上げになった。今は行く場もなく、毎日家でゴロゴロ過ごしている。
いかがでしょうか。
2人ともいろいろな力を持っているのに、それをうまく発揮できず、大きな壁にぶち当たっています。
AさんにはASD(自閉スペクトラム症)の傾向があり、他者視点の弱さが見られます。
友だちがいないわけではありませんが、そこまで仲良しになることはなく、いつの間にか1人ぼっちになっていました。
不安が表情に出やすいため、周りの人も、どうかかわってよいのか、わかりません。
また、母親がとても心配性で、いつもAさんに対し不安そうに「大丈夫?」と聞いていました。
子どもは心配性の人が身近にいると、より不安が強まってしまいます。
それもあり、どんどん悪循環に陥ってしまったのです。
Bさんは、幼少期から親の強い希望で勉強ばかりしていました。
知的障害とASD、ADHDの診断を受けましたが、元々記憶力がよく、パターン的なことは入りやすかったため、学習的なことは結構得意でした。
しかし、学年が進み内容が抽象的になると、問題が解けず、イライラして机を倒したり先生に嚙みつくようになりました。
一般的に、特別支援学校の子が教科学習を行っても、将来それを活かす場はありません。
むしろ、こだわりを強めてしまい、情緒的により不安定になることも少なくありません。
それよりは、誰かと何かを一緒にする(一緒に歌う、楽器を演奏する、ボールを転がす)など、三項関係を日常的に経験した方が、遥かに情緒面や対人関係の力が身につくものと思われます。
どちらのケースも、早期に専門的な教育を受けた方がよかったと思われます。
特にキレやすい子は、キレたときに注意をされたり、なだめられたりと、間違った対応をされることが多く、それにより、さらにキレやすくなることが心配されます。
正しい対応さえわかっていれば、2人ともここまで深刻な事態に陥ることはなかったはずです。それは、ビリーブに長く通っているお子さんたちが証明してくれています。
子ども時代は、勉強や訓練を行うよりも、人に対する信頼感(安心感)を育てていくことが大切です。
問題行動を減らすだけでは人は育ちません。
それよりはむしろ、人との関係が豊かになった方が、将来的に情緒の安定や対人コミュニケーション力、認知力が高まっていきます。
そうすれば、大人になっても、周りの人に助けてもらいながら、自分の力を発揮できるようになるのです。
5月もよろしくお願いいたします。
【発達支援教室 ビリーブ】
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