技術思想の創作に対して与えられる独占権としての特許権。
特許権は、土地の所有権と同様、人に認められた権利だ。
しかし、少し変わった権利で、突然、「初めから無かったことになってしまう危険を孕んだ権利」だ。
土地の所有権は、(海に沈むなどない限り)、そう簡単には消滅しないのと異なる。
非常に不安定な権利だ。
特許権侵害訴訟で、特許権者(原告)が、被疑侵害者(被告)に訴え提起すると、
被告は8割がた「特許無効の抗弁」を出し、進歩性がない等といって、特許を無効だと主張する。
(また、併せて、あるいは、選択的に、特許庁に無効審判を提起することもある。)
裁判所で、特許が無効と判断されると、権利行使が許されない(権利が無いに等しい結果となってしまう。)。
特許庁で、特許が無効と判断されると、初めから無かったことになってしまう(事実としては現に存在していたのに)。
そこで、特許のクレームは、後で、被疑侵害者等に潰されないように、つぶれにくいものにしなければならない。
具体的には、事前に調査した先行技術文献や、審査官が提示した先行技術文献を、適切に回避し
(言い換えれば、それらの先行技術文献との関係で、新規性・進歩性を有するようにクレームを工夫する。)、
つぶれにくい特許クレームを作る必要がある。
これは、弁理士の腕の見せ所。
先のブログで書いた、特許のクレームは広いほうがよいという点との折り合いが難しいが、
理論的には、「潰されないように(先行技術文献をうまく回避して)、その上で、できる限り広い特許クレームを書こう」、
ということになろうか。
現実には、あらゆる先行技術文献を調査し、それを踏まえて特許のクレームを書くのは不可能なので、非常に難しい作業だ。