今朝の日本経済新聞(2024.10/08)に経済学者の小林慶一郎氏(慶応大学)の「認知的制約がバブル作る?」という話が載っていた(以下[ ]内が引用文)。
まず、コロンビア大学のマイケル・ウッドフォード教授の話として
[人間は有限の認知的資源を最適に使おうとするため、主観的な事前予想(参照点)と実際の結果との差に反応すると論じた。その結果、人間の行動に「参照点依存性」が生じるという。]
とある。
ここに出てくる参照点依存性とは、『期待値をベースに思考したり行動したりする』という意味だと考えてもよい。
そして
[合理性期待理論は「完全合理性」だけではなく「再帰性」という性質も持つ。期待の「再帰性」を、政府Gと市場参加者Mの例で考えよう。(中略)
GはMがどう考え、反応するかを予想して政策を立案する。ここでGが持つ期待(期待G)は「『Mが持つ期待』についてのGの期待」である。
逆にMは、自分の行動がGの政策にどう影響するかを考えながら、政策に反応する。ここで「Mが持つ期待」とは「『期待G』についてのMの期待」である。つまり期待Mは期待Gによって決まり、期待Gは期待Mを介して期待Gが入っている。自分の定義の中に自身が再帰しているという、この性質を「再帰性」と呼ぶ。]
と説明があり、この後
[期待の再帰性が絡むと、有限の取引期間の経済でも無価値な紙切れが貨幣として流通する貨幣バブルが起こることが知られている。]
と続く。
そして小林氏は、貨幣バブル(貨幣の価値が上がる)ということは、財・サービスの価値が相対的に下がる(デフレ)ということなので、日本の長く続いたデフレがこの理論で説明がつくかも知れないと結んでいる。
僕なんか経済はよくわからないので(大学では学んだ筈なのだが)、ふ~~~ん…、という感じなのだが、これをに似た話が教育にもみられる。
親(P)が子ども(C)に「優秀になってほしい」と期待したとする。
すると子どもは親の期待(期待P)を感じて「『期待P』に応えて頑張って勉強したら親は喜んでくれ、僕を応援してくれるだろう」という期待(期待C)をする。
そうしたら母親はその期待Cを感じて「私が頑張ってパートとかに行って、参考書代とかを稼いだりして応援したら、もっと頑張ってくれるかもしれない」と期待(期待P2)する。
となると子どもは「もっと参考書や問題集をやって頑張ったら、親はもっと喜んで応援してくれるかもしれない」と期待する(期待C2)。
すると今度は父親が期待C2に対して「オレが頑張ってもっともっと残業して塾の費用を…」(期待P3)
そしたら子どもが「親があんなに苦労して頑張っているから期待に応えて…」(期待C3)
これで「頑張り」が、(期待値の上昇に乗って)エスカレートしていくということになる。
ちなみに日経新聞のこういう学者や先生方の記事には、難しい言葉が散りばめてあることが多いのだが、小林先生も日経新聞の読者ならこれくらいの用語は知っていると期待されているのだろう。
そして読者は、難しい言葉がいっぱい並んでいるから、この内容は価値があるだろうと有難がって尊敬し、今後も掲載してほしいと期待する。
すると先生方は、期待に応えて益々難しい言葉を使って書く。
きりがない話なのだが、僕のカウンセラー講座も似たようなことをやっているような気がする。
確かに「認知的制約がバブル作る?」かもしれない。
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