古典美術館にある大きなルーベンス大展示室。
ルーベンスは自分の工房にたくさんの弟子を持ち、弟子らに手伝わせながら、大量の大祭壇画を描きました。
チーム・ルーベンスで制作しているので、巨大な作品を何枚も描けた訳です。
入口方面から大展示室に入ると、正面にはキリストが十字架を背負って刑場に行くシーンを描いた《ゴルゴダの丘行き》が。
縦が5メートル以上もある縦長の大きな作品です。
上部が円く切れているのは、これが修道院の祭壇画として制作されたためです。
これはヴェロニカという女性が自分の白い頭巾で、血が滴るキリストの顔を拭いてあげたシーンです。この後、その布にはキリストの顔が転写されていた、という伝説があります。
《ゴルゴダの丘行き》に向かって右側の壁には、《東方三博士礼拝》《聖リビニュスの殉教》《聖母マリアと聖フランチェスコの神への仲介が神の稲妻を止める》と言う三作品が並びます。
東方三博士以外は、正直何のシーンを描いているのか分かりませんでしたが、なかなかのエグイ内容だったので調べてみました
聖リビニュスは、フランダースの聖人で、宣教活動中に盗賊に捕まり、舌を抜かれた上に首を切り取られて殉教したそうです
これは彼の抜かれた舌が、今まさに犬のエサになろうとしている瞬間です。
なんちゅうシーン描いてるんや
もだえ苦しむ聖リビニュスは天を仰ぎ、その先にいる天使が、彼にナツメヤシの葉と月桂樹の冠を渡そうとしています。
また、これら盗賊に対して完全にブチ切れている別の天使たちが、神の雷を落とそうとし、それに気づいた盗賊たち(および馬)が慌てふためいている様子だという事です。
ただ、こんな事で、聖リビニュスの気は晴れないでしょうし、果たして彼は救われたのか?
私には分かりませんね
蛇足ですが、聖リビニュスは切られた首を抱えて町まで歩いて行き、そこに彼の墓が作られたとの伝説があるそうです。聖人を人知れず野山で野垂れ死にさせる訳には行かない、という事でしょうか。
《聖母マリアと聖フランチェスコの神への仲介が神の稲妻を止める》はタイトル通りのシーンを描いているそうです。
堕落&腐敗した世の中(蛇に巻かれる地球)を、キリストが稲妻で焼き払おうとしています。
そこを、聖母マリアが止めに入り、聖フランチェスコが稲妻から地球を守ろうとしている
ギリシア神話でもそうですけど、人間に対して神は時々ブチ切れるんですよね。面白いですよね。
それから、なぜ聖母マリアは乳を片方だけ出しているのか?これは祭壇画として大丈夫なのか?
気になります
《ゴルゴダの丘行き》に向かって左側の壁には、《聖フランチェスコのいるピエタ》《聖母被昇天》《聖母マリアの戴冠》が展示されています。
これらは今さら説明不要の名作だと思いますので省略。
展示されている部屋は別になりますが、これは右の髭の人物が前面に出過ぎている気がして気持ち悪く、印象に残った作品です(どこ見てんの?って感じで。。。)
眼の色や大きさまで違う。すごい不思議な感じですが、マウリッツハイス美術館にあるおばあちゃんの絵を彷彿とさせる、ルーベンス自身も筆を入れた絵かも知れないなという感じで良いと思いました。
老人の顔の感じやキリストのさりげない後光、真っ黒な瞳など、ここはスゴイ良い感じで好きです。やっぱりルーベンスは上手いですね。