古典美術館の奥にあるブリューゲルの間。

 

 

残念ながら、有名な《バベルの塔》は、当時栄華を誇ったハプスブルク家のお膝元、ウィーン美術史博物館にあります汗

 

 

それでも、個人的に大好きな《イカロスの墜落》や、有名な《ベツレヘムの戸籍調査》《ベツレヘムの嬰児虐殺》などが所蔵されており、見応えあります。

 

 

中でもこの《堕天使の墜落》は、異様な光景であるにも関わらず美しくもあり、ずっとでも見ていられる作品で好きですね。

 

最初に見た時はギョっとしましたがてへぺろ

 

 

これは、大天使ミカエル(ブリュッセルの守護聖人であり、ジャンヌ・ダルクに神の啓示を与えたりもした。モン・サン・ミッシェルは大天使ミカエルに捧げられた修道院)が、神に反旗を翻した大天使長ルシフェールを打ち負かす所を描いたもの。

 

 

負けた反逆天使たちは、地獄に落ちて色んな姿のキモチ悪い悪魔、つまり堕天使となっています。

 

悪魔の表現に関しては、1つ前に記載したボスの影響をかなり受けていることが分かりますね。

 

ムール貝にカブトエビ、腹の裂けたカエル?に闇落ちしたぐりとぐら。一体一体見てるだけで面白い。

 

ちなみに、カブトエビが反逆天使のルシフェールだそうです。かつて天界でラッパを吹いていた名残が見られます。

 

 

僕が好きなのはココですね。

 

天国から、まだ天使の面影を残している反逆天使たちが次々と落ちてきている。

 

ここの描写は、世紀末美術館で見た、ベルギー象徴主義画家たちに影響を与えていると感じました。

 

また、次から次へと落ちてくる敵に、「こりゃキリねぇぞ」という差し迫った状況にも関わらず、優雅に戦う少数精鋭の天使たち。中にはラッパを吹いている者さえいます。カッコよすぎでしょおねがい

 

 

それから、コバエの様な虫が湧いてる黒い悪魔に、今まさに切りかかろうとする天使。

 

それを止めようとする星のカービィ風の可愛らしい悪魔。

 

 

一人カメラ目線、余裕の表情の天使。

 

ちなみに、このシーン。聖書に完全に基づいたものではないようです。

 

旧約聖書の「ダニエル書」と新約聖書の「ヨハネの黙示録」の記載や伝説などが混じり、中世に人々に一般的に信じられていた逸話を基に描いたようです。

 

「ヨハネの黙示録」の、大天使ミカエルが聖母を守り竜を倒す話にインスピレーションを受けている事は、大天使ミカエルが竜らしきものを踏みつけている事から想像できます。

 

 

ってことは、印を付けた犬やキリンの様なものが、竜の首なのかも知れません。

 

いずれにしても、ある一つのテーマに対して、画家があれこれ想像力を膨らませて作品にしていく。この手の絵画の中でもブリューゲル作品は飛びぬけて面白いなぁと思いました。

 

それから、これを見た当時の人々が、「地獄には絶対行きたく無いなぁ。ちゃんとお祈りしよう。」と思っただろうな、とも思いました。