ベルギー王立美術館のうち、多くのガイドブックで一番多くページを割かれているのが、古典美術館(old masters)でしょう。
フランドルを代表する画家、ブリューゲルとルーベンスの大作が所蔵されていますから当然かも知れません。
以下、古典美術館の中で私が気になった作品を幾つか紹介して行きます。
ちなみに、古典美術館には、主に15世紀から18世紀の絵画が展示されています。
時代から想像できる通り、やはり”古典”美術館ですから、宗教画が多いんですよね。
↑は、ご存じ《受胎告知》。
これは何て言うか、"人物(大天使ガブリエルとマリア)"と"部屋"、"真ん中の机"の三者のパースがおかしくて、それが味になっている感じですね。
特に真ん中の机は、奥に行くほど広がっており、机として見るより、何かの象徴として見るべきなのでしょう。
丸くなく角を付けたのはデザイン上の理由なのか、イエスの人生を表わしており、それは平坦なものではない、という意味なのか?
花瓶には、聖霊の象徴であるハトが描かれています。また、純潔の象徴である白い花がさされていることから「マリアの懐妊を祝福している」様に思います。
燭台には一本だけロウソクが立てられており、マリアの清貧さを表わすと共に、イエスの誕生を暗示、つまり「これから生まれるイエスに光を灯すためのロウソクかなぁ?」なんて思ったりしました。
で、生まれた後は、「聖書に記されるような行いをした後に、最期は布に包まれる。」というイエスの受難までを机の上に表したかったのかな?と言う感じです。
次も良く見る題材《ピエタ》ですね。
ルーベンスの《キリスト降架》と同じく、マリアは青、使徒ヨハネは赤の衣装を着ています。
右の女性は前に香油壺があることから、マグダラのマリアと分かります。
それは良いとして、この骸骨は一体なに
アダムの頭部だそうです
ひやー、オレ、あんなのになっちゃったよ
”イエスはアダムとイブが犯した罪(原罪)をあがなう為に十字架に上った”という事を示しているのだそうです
リンゴを食べちゃったばっかりに、頭蓋をさらされてしまうアダム。かわいちょ
《聖アントニウスの誘惑(レプリカ)》ヒエロニムス・ボス
あと、カッコ良かったのは、ボスの三連祭壇画ですね。
この絵は、聖アントニウスという人物が、悪魔から様々な誘惑や迫害を受けてながらも耐え、キリスト教の戒律を厳しく守っている様子を表わしています。
例えば右のパネル。
酒やパン、裸の女性など、様々な誘惑が襲い掛かろうとも、びくともしない聖アントニウス。
この様に、一つ一つのキャラクターが何をしている所なのかの解説を読むのも面白いし、単純に色んなタイプのカッコ良い悪魔を見て行くだけでも面白いと思いました。
特に、中央パネルの燃えさかる町の描写は「ハウルの動く城」の世界そのもので、すごく興味深かったです。
あとこれも、何のシーンを描いてるかは分かりませんが、良いなと思いました。
空には、群れて飛ぶ不気味な黒い鳥。
不吉な出来事が起きることを暗示している様です。
それに対して、
「みなさーん!危ないことが起きますよー」と注意を促す神のような存在。
にも拘わらず、現世では、足元の問題しか見えておらず、(本質的でない)議論を続ける人間たち。
問題が起こってからでないと、対策を考える事ができない人間の性の様なものを感じさせます。
解釈は全く違っているのかも知れませんが、私的には、絵を見ているのに、耳の痛い思いのする作品でした。
長くなったので、ブリューゲルとルーベンスはまた別途。