今、平安京の歴史をまとめているが(講座)、坂東武者があまりにも強かったという『平家物語』の一節を書いている。なぜ、関東の軍団が恐ろしかったのか。それは、藤原氏が坂東の武力を東北にさし向け、意味のない戦いを強い、「東の脅威」を取り除こうとしたからだ。夷をもって夷を制す策に出て、仮想敵を弱体化したのだ。そのころ都では、貴族が優雅に過ごしていた。東の人間は、みな平安京を恨みますよ。藤原氏に追いやられ野蛮視された源氏が坂東の武者を束ねて強大化していく根源には、京都の繁栄と、民の疲弊と困窮が隠されている。平安時代は、民にとって地獄の時代だった。あの時代の和歌が、どうしても好きになれないのは、武士や民を馬鹿にして、教養を鼻にかけていた貴族たちに怒りを覚えるからでもある。