約三十人の報道陣が取り囲む中、母親はか細い声で、質問に答えた。
龍琥ちゃんに言ってあげたい言葉を尋ねられると、母親は「あの時助けられなくてごめんね、としか言えない」と言葉を詰まらせた。
昨年ごろ四、五カ月間、ベビーシッターの紹介サイトを通じ、物袋容疑者に長男の龍琥ちゃんと乳児の次男を週二回のペースで預けていた。
料金は二人分で月八千円と、格安だった。
しかし、帰宅した龍琥ちゃんの顔や背中にあざがあることが何度かあった。余分な支払いを請求されるトラブルも。「もうこの人に預けるのはやめよ う」と、母親は決めていたが、今回、物袋容疑者が紹介サイトで仮の名前(ハンドルネーム)を「山本」と名乗っていたため、気付かずに再び依頼し、龍琥ちゃ んとは二度と会えなくなった。
「事件のニュースで物袋容疑者の関与を知った。知っていたら預けなかった」とうつむいた。
紹介サイトでベビーシッターを雇ったのは「お金も、頼る当てもなかったから」と話したが、「今回は『まさか』という思い」と後悔をにじませた。
最後 にも「龍琥に申し訳ない」と繰り返し、気丈に立っていた母親はひざから崩れ落ち、横にいた祖母に体を支えられた。