【狂猫抄】弐「小生は幼少の頃より強がりで、また負けず嫌いでもありましたので、これまで随分と他の猫達や人間共に対し、威嚇を行ってきました。しかし先日、毛づくろいの最中に、ふと悟った事があります。鋭い爪は、普段柔らかな肉球の下に収納され、必要な時にだけギラリと光ればよいのだと。我ら猫族を愛玩動物としてしか見ない人間達には【肉球、ギザ可愛ユス】などと、好きに言わせておけばよいのだと。その方が、猫としては気品がある…そう小生、確信するに至ったのであります」猫はそう言い残したかと思うと、小鳥の後を追って木陰の向こうへと姿を消して行った。彼が今日も無事、獲物にありつけるといいのに。僕は心底、そう願った。