枝:

 

 

 

冬も終わりそうな或る日の事。

のぴが昼メシを食おうと入った中華料理屋に、

 

ドヲエ「いらっしゃい」

 

あろうことかドヲエがいた。

他に誰の姿も見えない事から、どうやら店長らしい。

 

のぴはそれだけで不快になったが、

それだけで店を出るのはいくらドヲエ相手でも非礼に当たるだろうと、

席に着いて支那そばを頼んだ。

 

やがて出て来た支那そばには、

ドヲエの指が入っていた。

 

のぴ「おい、指が入ってんだよ!」

 

ドヲエ「ご心配無く。また生えて来ますんで……」

 

ドヲエが指の無い手で器用に、小さな丼を差し出した。

どうやら骨入れ用らしいそれを、のぴは心底苦々しい顔で睨み付ける。

 

のぴは試しにスープを啜った。

あっさりしながらも深いコクがあり、とても美味い。

麺は細縮れに独特な柔らかさで、スープにとてもよく合っている。

 

そして、のぴは躊躇いながらも、指に噛り付いてみた。

 

殆ど骨で、肉が少ない。

その上、肉も硬く筋っぽく、中々噛み切れない。

おまけに、味が無い。

 

何とか1本食い終えたが、後9本もある。

のぴは口直しに、指の下の支那そばを味わう。

こっちは美味いのだが……。

 

 

 

食い終わり、勘定を済ませて出た。

支那そば1杯200円と格安だが、

のぴは二度と行くまいと誓った。