彼の世の魂、未だ暁にあり:

 

 

 

ドヲえもんが下校途中、後の世で「空」と呼ばれる物を見上げると、

灰色のぼんやりしたものに覆われていた。

目を凝らして見ると、おじいさんの顔に見えなくもない。

 

学校にも町にも、人の気配は全く無い。

 

帰宅すると、のぴ太が出迎えた。

 

のぴ太「おかえり! さあ、遊ぼう!」

 

歓喜のあまり飛び上がったのぴ太は、天井に頭をぶつけ、

気絶して床に伸びた。

 

すると、のぴ太の体から、

たくさんの人間の体をバラバラにして、

デタラメに繋ぎ合わせ一塊にした様な物が抜け出で現れた。

 

それを見た瞬間、ドヲえもんはそれがのぴ太の「喜」の感情なのだと理解した。

 

無論、初見である。それどころか、知識すら無かった。

それだのに唐突に理解が及んだ所を考えると、

こういう次元の存在は、どうやら直接相手の脳に記憶を書き込む事が出来るらしい。

 

「喜」が体の外に出たまま、のぴ太が冷静な様子で起き上がる。

 

のぴ太「さて、遊びに行こう」

 

冷静なのぴ太と町に出るドヲえもん。

のぴ太から出た「喜」も同行して来る。

 

相変わらず町に人の気配は無い。

 

後の世で「空」と呼ばれる物を見上げると、

灰色のぼんやりした物に覆われていた。

目を凝らして見ると、おじいさんの顔に見えなくもない。

その表情までは判別出来ない。

 

道端に、かさかさに乾燥したスヌ夫が落ちていた。

風に吹かれ、かさかさと揺れている。

 

ドヲえもん「ほら、のぴ太くん」

ドヲえもんがのぴ太の注意をスヌ夫に向けると、

 

のぴ太「きゃーっ!!」

 

のぴ太は驚きのあまり絶叫して気絶した。

 

地面に伸びたのぴ太の体から、ジヤイアン雄が出て来た。

 

ジヤイアン雄「よう」

 

ジヤイアン雄は軽く挨拶し、のんびり何処かへと歩き去った。

 

のぴ太の「喜」が、気絶したのぴ太の中へと戻って行った。

 

のぴ太「さあ、遊ぼう!!」

 

のぴ太が再び元気良く飛び起きた。

ドヲえもんが試しに道端の乾燥したスヌ夫に注意を向けると、

 

のぴ太「きゃーっ!!」

 

のぴ太は再び気絶した。

 

 

 

※※※

 

 

 

翌日。

休日なので家でのぴ太と遊ぶドヲえもん。

のぴ太は相変わらず、喜んだり驚いたりと、感情豊かである。

 

ドヲえもんは窓の外を見てみた。

 

相変わらず人の気配が無い町で、

ジヤイアン雄が乾燥したスヌ夫を投げて遊んでいる様子が見えた。

 

後の世で「空」と呼ばれる物を見上げると、

灰色のぼんやりした物に覆われていた。

目を凝らして見ると、おじいさんの顔に見えなくもない。