現在、スマホを持ってない風俗嬢はきっといないでしょう。中国じゃあ風俗だってWeChat payの時代です。
けど、あたしが北京の風俗嬢だった2015年当時はもっぱらニコニコ現金払いの時代でした。あたしの情報力が弱かったのかも知れないけれど現金以外には、学内のプリペイドカードと交通電子マネーがあるだけで、WeChat payやアリペイを使ってるのはよっぽどのガジェット好きでした。


てなわけで北京の同僚達の実家への送金方法は郵便局か農業銀行の二択です。どうせ風俗嬢の地元ってえのは「ここに生まれちまったが最後」みたいなド田舎なので、郵便局か農業銀行しかないのです。日本で言うとこの郵貯や農協ですね。


さて、北京でのあたしは将来有望なエリート大学生(あたしはビザさえ揃えりゃ入れる語学科に通ってましたが、中国人学生達の学ぶ本科は難関なのでした)の学友を大事にするのと同じく、考えられる未来が何にもない風俗店の同僚を大事にしておりまして、暇さえあれば彼女らと遊びながら中国語を勉強しておりました。
※北京の店とは、人付き合いが嫌いで個室待機の店に勤めてる嬢なんかは絶対に働けない環境なんです。同僚達はライバルだけど戦友でもあるから。客の愚痴を言い合うのはこの上なく楽しい。



ある日ある同僚と郵便局か農銀に一緒に行ったその足でローラースケート場に行って走り回り、そっから一緒に出勤した事がありました。
 

ローラースケートをしていると彼女の携帯が鳴りました。彼女の話してるのを聞いてみると、


啊,干嘛呀,有事儿呀?有事儿过来说。(あ?何、何か用?用があるなら来て話してよ)
不过来?不过来打电话干嘛?(来ないの?来ないならどうして電話掛けるの?)
今天我休息,不过来算了。挂了吧。(今日あたし休みなの、来ないならもういいね。切るよ)
大姨妈。滚。(生理。失せろ)


お客だったみたい。
いくら来る来る詐欺客の面倒い電話でもこんな返し方あたしには絶対出来ません。
面と向かえば強気に出れるけど電話で「来ないならどうして電話掛けるの?」とか言えないって。


でも思うの。
風でも昼でも仕事ではモノをはっきり言うって多分大事なんだろな。
むしろその方が本気で相手と向き合ってる。
日本語を話す時よりも中国語を話す時の方が正直な気がするもん。
日本では客自身が自分は神様だと思ってて、サービス側も触らぬ神に祟りなしだと思ってる。けどもうちょっと人と人との付き合いだって事を理解した方が色々やり易くなるんじゃないかな?と思う今日この頃です。