

イヤに薄汚れた、くたびれた1本の竹トンボ。
ん?なんか見覚えがあるようなないよう…そう思いつつ手にとって見ると……驚きました。
竹トンボの羽の裏を見ると鉛筆か何かでうっすらと、汚い字で何やらひらがなで文字が書いてある。
自分の名前だった。
しかも自分で書いた…。
思い出した。
コレ、確か…私が小学校に上がるか上がらないかくらいの頃、父親が私に作ってくれたヤツだ。
それで、モノに何でも自分の名前を書き込むクセ(?)がある私が小学校に上がる前からじい様に教えてもらってたひらがなで自分の名前を初めて書き込んだ第一号だったような…。
でも、そんな恐ろしく大昔に貰った竹トンボを何故父親が持ってる??
とっくの昔に飽きて捨てたモノだとばかり思ってた。
てか、仮に父親が持っていたにしても、過去に土砂災害で自宅が流されているので、そもそも現存しているワケがない。
じゃあ、何故???
疑問に思った私が母親に聞いてみると、母親はこの竹トンボのコトを知っていた。
母親の話によると、この竹トンボは私が遊ばなくなっておもちゃ箱に放置してあったモノを父親が拾い出し、ずっと手元に保管していたらしく、さらに土砂災害で家が流される際も非常持ち出し袋や家財道具と一緒に持ち出して無事だったらしく、その後もずっとこの竹トンボを手元に置いていたらしく、私が家を飛び出して帰らなくなってからも変わらなかったらしい。
……何でこんなガラクタを後生大事に持ち続けてるんだよ…うちの父親は…。
保管していただけならまだしも、家が土砂で流されるのを、身の危険を分かっていて金目のモノじゃなく、こんな一円の価値にもならない、子供に作ってやった自作の竹トンボを真っ先に持ち出すバカがあるか…普通…。
………ホント、どうしようもない父親だなぁと思うのに、思ったコトとは裏腹に何故か涙が込み上げてくる。
呆れたような、悲しいような、嬉しいような…何とも言葉じゃ言い表せない…。
まさか、あの父親が私の竹トンボを数十年もの間ずっと大事に仕舞っていたとは思わなかった…。
私ゃ今でも父親のしたコト(=勘当)は決して許せないし、これからも一生、死ぬまで許すコトはありませんが、ほんの少し…ほんの少しだけ父親に対する見方が変わったよう気がする瞬間でした。