2024年4月19日(金)

 先日近所の川べりを散歩していたら、かつて何度も耳にしたことのある懐かしい音楽が聴こえて来た。下の写真にあるように橋の下で誰かがサクソフォンをライヴ演奏していたようで、階段状の座席に腰掛けている何人かの人々がその曲に耳を傾けていた(下の写真の右端)。

 散策路を歩きながら果たしてなんの音楽だったろうかと考えつつ曲を聴いていると、やがて思い浮かんで来たのは間違いなく加山雄三の「君といつまでも」だった。

 未だにテレビやラジオで日本語の大衆音楽が流れることがほぼ皆無のここ韓国で(ただし法律で禁じられている訳ではなく、テレビ局や放送局が勝手に自粛しているだけである)、どうしてよりによって加山雄三なのかと訝しくも思ったのだが、さすがの私も演奏者のところに行って質問してみるような度胸(?)は持ち合わせておらず、そもそも出来るだけ他人とは関わりたくない人嫌いゆえ、そそくさとその場を早足で立ち去っていつもの散歩道を辿っていったのだった(後から考えて、この演奏者が日本人だった可能性も完全には排除できないと思っている)。

 

 

 本題に入るとすると、既にインターネットなどでも報じられている通り、1970年公開のマイケル・リンジー・ホッグ監督によるドキュメンタリー映画「Let It Be」がピーター・ジャクソン監督率いるチームによって修復され、5月8日からディズニー・チャンネルで配信されることになったそうである。

 メンバーそれぞれが家庭を持ち、ソロ活動に意欲的になっていたこともあって、かつてのような一体感を失いつつあったザ・ビートルズの面々を捉えたこの映画の雰囲気は暗く寒々としており、演奏方法を巡ってポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンが口論する場面などが含まれていたせいもあってか、初公開された後はまるで端から存在しなかったかのように長らく打ち棄てられて来た(一説にはあるメンバーが強硬に再公開等に反対していたとも言われている)。

 しかし「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビット」で知られるピーター・ジャクソンが、この「Let It Be」制作時に撮影された映像や音声のアーカイヴをもと2021年に発表した8時間超のドキュメンタリー映画「ザ・ビートルズ:Get Back」が好評だったこともあり、オリジナルである「Let It Be」の再公開や再発売も遠からず実現するのではないかと見られていた。

 

 下は日本語版の予告編。

 

 結局この「Let It Be」は、劇場再公開やDVD/Blu-ray等のソフト販売といった形ではなく、「ザ・ビートルズ:Get Back」と同じくディズニー・チャンネルで配信されることになった(ただし「ザ・ビートルズ:Get Back」はその後DVDやBlu-rayでも発売されたので、今回の「Let It Be」もいずれソフト化される可能性はある)。

 

 

 その一方で、上のザ・ビートルズ研究家によれば、今年発売されるのではないかと期待されていたアルバム「ラバー・ソウル」(1965年)のリミックス盤は今のところペンディングになっているようで、発売60周年を迎える来年に持ち越される可能性も示唆されているようである。

 個人的にはしかし、2021年公開の「ザ・ビートルズ:Get Back」が非常に優れたドキュメンタリー映画だったこともあり、たとえ映像や音声が最新技術で修復されて格段にクリアになっていたところで、今となっては「ザ・ビートルズ:Get Back」の縮小版としか思えなくなってしまった「Let It Be」が再発売/再公開されるとしても、まったく食指が動かないというのが正直なところである(そうでなくてもこの映画自体は、映像・音声共に状態は良くないものの、YouTubeなどで今も見ることが出来る)。

 

 

 

 むしろ私としては、最後の新曲「Now and Then」やベスト盤「赤盤」「青盤」のリミックス版発売によって一旦中断してしまった正規アルバムのリミックス作業を今年こそ再開してもらいたかったものである(確か上の研究家によれば、「ラバー・ソウル」やその前作「ヘルプ!」(1965年)のリミックス作業は既に終了していて、昨年中に2作セットで販売することも検討されていたらしい)。

 しかし現実(ビジネス)的には、今後1年でも長く「ビートルズ商法」を存続させていくためには、「ラバー・ソウル」と「ヘルプ!」のリミックス盤は、発売60周年を迎える来年に先送りされる公算が大きいだろうとも思う(懸念しているのは、昨年から色々とトラブルに見舞われている健康問題から、果たして自分が生きているうちにこのリミックス・プロジェクトを最後まで見届けられるかどうかということである。もっとも昨年発売になった「赤盤」「青盤」のリミックスを聴いてみた結果、当初期待していたような目覚ましい改善が為されていたとは思えず、仮に見届けられなくとも悔いを覚えるようなことはないだろうと思ってもいる)。

 

 

 最後に、先日ジミー・バフェットという米国人歌手の追悼コンサートでポール・マッカートニーが「Let It Be」を披露した動画を紹介しておく(上のYouTube参照)。

 この動画を見ていて思ったことは、かつてどんな曲でも巧みに歌い上げることの出来たポール・マッカートニー程の歌唱力の持ち主でも寄る年波には打ち勝てず、かくも弱々しくほとんど聴くに耐えない歌声になってしまうのかということだった(せめて現在の声量に合わせてキーを下げるなどの工夫は出来なかったのだろうか)。

 むしろ5月にまた新しいEP「Crooked Boy」を出すというリンゴ・スターの方が、最年長でありながら若かりし頃と比べてもほとんど遜色のない張りのある歌声を披露していることに今更ながら驚かざるをえないでいる(下のYouTube動画を参照。失礼ながらこの曲は意外にも決して悪くない)。

 

 以下はEP「Crooked Boy」全4曲

 

 4人のメンバーの中で一番最後にグループに加入したこの「遅れて来た」ビートルが、ザ・ビートルズというバンドの歴史の最後を飾ることになるだろうことは、果たしてアイロニーなのか、それとも必然の結果なのか、いずれにしても私はこれからもこの2人の健康と長寿を祈りたいと思う。Peace & Love!(by Ringo Starr→下記の動画参照)