2024年4月6日(土)

 本題に入る前に今月3日に台湾で発生した大地震の被害がこれ以上拡大しないことを祈りたいと思う。今年は年初の能登半島地震を始めとして日本各地でも頻繁に地震が発生していて全く他人事とは思えず、台湾の被災地にも国内外から救援や支援の手が差し伸べられ、1日も早い復旧・復興が進むことを願わずにいられない。

 

 

 

 先日書くつもりで先延ばしにしていた、3月23日に82歳で死去したイタリアのピアニスト・マウリツィオ・ポリーニについて(敬称略。以下同様)。

 

 クラシック音楽に全く通暁している訳ではない私にとって、ポリーニというピアニストは、スヴャトスラフ・リヒテルやエミール・ギレリス、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ、フリードリヒ・グルダ、アルフレッド・ブレンデル、グレン・グールド、マルタ・アルゲリッチといった、20世紀後半に活躍した世界的ピアニストの代表格の一人という認識ではあったものの、特に熱心に聴いて来た訳でもなかった。

 

 

 

 それでも(おそらく今でも)名演奏/名盤として挙げられるベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ集(28番~32番)を始め、ショパンの「練習曲集(エチュード)」や「ポロネーズ」、ベートーヴェンのピアノ協奏曲集(カール・ベームとオイゲン・ヨッフム指揮、ウィーン・フィル)、ブラームスのピアノ協奏曲2番(クラウディオ・アバド指揮、ウィーン・フィル)やピアノ五重奏曲(イタリア四重奏団)などのCDは折に触れて聴き返して来た。

 

 

 

 かつて私が偏愛していたモーツァルトのピアノ協奏曲23番も、名演とされる数々の演奏を聴き比べた末にこれぞ理想的な名演だと思って愛聴盤になったのがカール・ベーム指揮、ウィーン・フィルによるポリーニ盤で、それこそCDが擦り減るくらい繰り返し聴いたものである(もっとも今回久々に聴いてみたら、晩年のベームらしく非常にテンポが遅い演奏で、所々でもどかしく感じてしまったのも確かである・・・・・・)。

 

 

 

 しかしこれらの演奏のほとんどは1970年代のもので、それ以降のポリーニの演奏というものを私は真面目に聴いて来なかったというのが正直なところで、せいぜい2000年代に入って満を持してリリースされたバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻(上の画像)を聴いたくらいで、しかも正直、熱心に聴き込んだとは決して言えないのである。

 

 要は1990年代頃にクラシック音楽雑誌などで名盤として紹介されていたCDを何枚か聴き齧っただけで、同時代に演奏活動を続けていたこのピアニストの「現在」にはおよそ無関心だった訳である。

 ただしこれはポリーニに限ったことではなく、クラシック音楽のみならずロックやポップスに関しても、私はもっぱらCDで数十年前の演奏を聴くのが常で、(例外はあるものの)コンサート会場での実演はもちろんテレビやラジオで同時代の音楽や演奏を追うこともほとんどなかったのである。

 

 などという私のどうでも良い趣味嗜好についてはこれくらいにして、上に挙げたものを含め、この人の代表的演奏でYouTubeで聴けるもの(出来るだけ公式版で揃えることにする)を以下に幾つか紹介して追悼の言葉に替えたいと思う。RIP.

 

以下は上のうち23番の演奏を収録した動画。

ベートーヴェン後期ピアノ・ソナタ集

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集(上の後期ソナタを含む)

後期ソナタ28番、29番の再録音版

 ベートーヴェンのピアノ協奏曲集1〜5番

 

 

 

ショパンの練習曲集 他

ショパンのポロネーズ

 

 

 バッハの平均律クラヴィーア曲集、ベートーヴェンのディアベリ変奏曲、ショパンの前奏曲

 

(追記)当記事をアップしてから以下のYouTubeサイトに気づき、この中にポリーニの貴重なライヴ演奏が数多く紹介されているので、あいにく公式版の音源ではないものの、アドレスを掲げておきたい。

 

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 続いてここ数ヶ月間メモしておいた(私が関心を抱いて来た人々の)訃報を簡単に。

 個々の経歴を記していくとキリがないため、基本的に職業と逝去年月日、享年だけを記すことにし、一部の人については代表作などを付記する。

 


 声優の北浜晴子(2023年11月2日死去、享年満86歳)。米国ドラマ「奥さまは魔女」のサマンサ・スティーブンス役。

 


 歌手の大橋純子(2023年11月9日死去、享年満73歳)。「たそがれマイ・ラブ」や「シルエット・ロマンス」。


 

 作家の酒見賢一(2023年11月7日死去、享年満59歳)。「後宮小説」、「墨攻」、「陋巷に在り」など。


 

 俳優の鈴木瑞穂(2023年11月19日死去、享年満96歳)。「帝銀事件 死刑囚」、「地の群れ」、「遥かなる山の呼び声」など。



 米国の元国務長官で国際政治学者のヘンリー・キッシンジャー(2023年11月29日死去、享年満100歳)。1973年にノーベル平和賞受賞。



 詩人で作家の三木卓(2023年11月18日死去、享年満88歳)。詩集「東京午前三時」や「わがキディ・ランド」、小説では芥川賞を受賞した短編「鶸」を含む「砲撃のあとで」や「裸足と貝殻」、映画化された「震える舌」、「K」など。



 SF作家・脚本家の豊田有恒(2023年11月28日死去、享年満85歳)。



 米国の俳優ライアン・オニール(2023年12月8日死去、享年満82歳)。「ある愛の詩」や「ペーパー・ムーン」、「バリー・リンドン」、「ザ・ドライバー」など。



 元NHKキャスターで外交評論家の磯村尚徳(2023年12月6日死去、享年満94歳)。NHK欧州特派員やワシントン支局長などを経て「ニュースセンター9時」初代キャスター。その後パリ日本文化会館初代館長やユネスコ事務総長特別顧問などを歴任。

 


 米国の俳優アンドレ・ブラウアー(2023年12月11日死去、享年満61歳)。
 1993年から1999年まで放送された刑事ドラマ「ホミサイド/殺人捜査課」でフランク・ペンブルトン刑事役を演じ、TV批評家協会賞やエミー賞主演男優賞を受賞。映画にスティーヴン・キング原作の「ミスト」など。



 ジョージア出身の映画監督オタール・イオセリアーニ(2023年12月17日死去、享年満89歳)。「素敵な歌と舟はゆく」や「月曜日に乾杯!」など。



 在日朝鮮人2世の作家・徐京植(2023年12月18日死去、享年満72歳)。「プリーモ・レーヴィへの旅」や「ディアスポラ紀行」など。


 

 写真家・篠山紀信(2024年1月4日死去、享年満83歳)。



 米国出身の俳優で歌手のデイヴィッド・ソウル(2024年1月4日死去、享年80歳)。映画「ダーティハリー2」やテレビ・ドラマ「刑事スタスキー&ハッチ」のハッチ刑事役。



 女優の中村メイコ2023年12月31日死去、享年満89歳)。上の写真右(左は長女で作家の神津カンナ)。



 演歌歌手の八代亜紀(2023年12月30日死去、享年満73歳)。「なみだ恋」、「舟唄」、「雨の慕情」など。



 カナダ出身の映画監督ノーマン・ジュイソン(2024年1月20日死去、享年97歳)。「シンシナティ・キッド」、「夜の大捜査線」、「華麗なる賭け」、「屋根の上のバイオリン弾き」、「ジーザス・クライスト・スーパースター」、「ジャスティス」、「月の輝く夜に」など 。



 女優の山本陽子(2024年2月20日死去、享年満81歳)。


 

 米国の俳優チャールズ・ディアコップ(2024年2月25日死去、享年満87歳)。「明日に向かって撃て!」や「スティング」など。



 イタリアの映画監督パオロ・タヴィアーニ(2024年2月29日死去、享年満92歳)。兄ヴィットリオ(2018年4月15日死去、享年満88歳)と共に「父パードレ・パドローネ」、「サン★ロレンツォの夜」、「カオス・シチリア物語」、「グッドモーニング・バビロン!」、「太陽は夜も輝く」、「塀の中のジュリアス・シーザー」などを手掛け、兄ヴィットリオ死後の2022年に「遺灰は語る」を監督。



 漫画家の鳥山明(2024年3月1日死去、享年満68歳)。「Dr.スランプ」や「ドラゴンボール」。

 


 彫刻家の舟越桂(2024年3月29日死去、享年満72歳)。



 米国の小説家ジョン・バース(2024年14月2日死去、享年満93歳)。「酔いどれ草の仲買人」や「やぎ少年ジャイルズ」、「フローティング・オペラ」、「旅路の果て」など。



 元NHKアナウンサーの鈴木健二(2024年3月29日死去、享年満95歳)。「クイズ面白ゼミナール」や紅白歌合戦の司会で知られる。1982年には「気くばりのすすめ」を出版し、大ベストセラーに。兄は映画監督の鈴木清順(2017年に満93歳で死去)。

 

 これらの方々の死を悼み、心から冥福を祈りたい。RIP.