2023年8月28日(月)
 昨日に続いて海外映画の鑑賞記録。


・「ギャラクシー・クエスト(1999年)」(ディーン・パリソット監督) 3.5点(IMDb 7.4) 日本版DVDで再見

 相変わらず面白く、おバカSFコメディであるにもかかわらず感動すらしてしまうのだが、さすがに何度も見ているとやや飽きが来るか(これまでは4.0点をつけて来た)。特に岩の怪物の場面はCGもショボくて今ひとつ。しかしよく出来ているコメディであることは間違いなく、元ネタである「スター・トレック」シリーズを知らなくても十分楽しめる(私自身よく知らない)。

 シガニー・ウィーバーやアラン・リックマンが思いの外素晴らしく、彼らが楽しんで撮影に臨んでいたことが分かる。

 

 

・「スター・トレック(1979年)」(ロバート・ワイズ監督) 3.0点(IMDb 6.4) インターネットで視聴

 上記「ギャラクシー・クエスト」の元ネタを見てみることに。ちなみにテレビ版は大昔に見たことがあるのだが、内容は全く覚えていない。

 今作はとにかくペースがのんびりしていて中盤に至ってようやく物語が動き始めるのだが、そこからクライマックスへと疾走する後半はそれなりに楽しめた。哲学的なのか、それとも一種のオカルトのようなものなのか、最終的な結論には煙に巻かれたような気がするものの、未知の知的生命体(実際には機械なので生命ではないが)との遭遇による脅威や、その正体を探って解決を見出していこうとする過程はなかなか見ごたえがある。

 冒頭からカーク艦長の横暴ぶりにはイライラさせられるが、それもまた最終的には今作の「解決」への布石のひとつと言えるかもしれない。

 とにかく音楽が「ギャラクシー・クエスト」とそっくりで驚いた(パロディなので当然と言えば当然なのだろうが)。順番を逆に見たため、今作が「ギャラクシー・クエスト」をパクったように思えて仕方なかったのはご愛嬌。

 

 

・「スタートレックII カーンの逆襲(1982年)」(ニコラス・メイヤー監督) 3.0点(IMDb 7.7) インターネットで視聴

 1作目がやや哲学的な内容だったのに対して、今作はテレビ・シリーズに準拠しているというカーンという悪役の登場で、一気にお馬鹿なSF活劇(つまり「ギャラクシー・クエスト」でパロデイにされる要素たっぷりの内容)となっている。

 見ているうちにこれは未来を舞台にしてはいるものの本質的に西部劇であるという印象を抱き、実際、最後のスポックの語りで西部開拓と宇宙の開拓が完全に重なり合っていることが分かる。

 悪役のカーンやその配下たちの名前がドイツ風なのは、悪役俳優は英国アクセントが基本となっている「スターウォーズ」に対抗して、今作ではドイツ風にしてあるのだろうか。

 まさかの○○○○(ネタバレになるので明記せず)の死で終わるが、しかし無から生命を生むというジェネシスが生み出した惑星に葬られることで、「再生」を予感させもする結末である。

 そしてカーク提督と息子の再会など、最後は「浪花節」のような感動モノになってもいる(もっとも私は少しも感動しなかったが)。

 

 次いでテオ・アンゲロプロス監督の初期作品を何作か。

 


・「放送(1968年)」(テオ・アンゲロプロス監督) 2.0点(IMDb 6.3) 日本版DVDで視聴
 処女作の短編。20分程の即興的な短編で、内容はともかく、Los Bravosというグループの「Black Is Black」という曲を知ったのは収穫だった。1960年代後半らしいサイケな一曲。 

 https://www.youtube.com/watch?v=LkgyV_tTQfQ

 https://www.youtube.com/watch?v=_CcdzkSlw2s

 

 

・「再現(1970年)」(テオ・アンゲロプロス監督) 4.0点(IMDb 7.3) 日本版DVDで視聴

 長編デビュー作。

 長らくドイツに出稼ぎに出ていた夫が帰郷し、愛人と一緒にいるところが発覚して夫を殺害してしまう女性と愛人との行動を、時系列をバラバラに配置した作品で、映画全般にわたって緊張感や不安感が横溢していて目を離せない。説明的な描写が一切なく、それゆえに見る側の想像力に委ねられていることが、かえって焦燥感や居心地の悪さを引き立て、とんでもない悲劇(まさにエッセンスだけで成り立っているギリシャ悲劇である)に立ち会っている感覚を刺激する。紛れもない傑作で、こんなものをデビュー作でいきなり撮ってしまったアンゲロプロスという人はやはり天才だと言うしかない。

 

 

・「1936年の日々(1972年)」(テオ・アンゲロプロス監督) 3.0点(IMDb 6.9) 日本版DVDで視聴

 歴史的背景などはよく分からないし、作中の台詞にも一切説明がなく、音楽も最小限で、音と言っては話し声の他には足音や物音が大部分なのだが、それがかえって緊張感を醸し出している。

 ただし最初から軍人や政治家が余りに愚かで(いきなり毒殺しようとせず、食べ物に睡眠薬を混ぜてから殺すことを考えつきもしなかったのか?)、リアリティが欠如しているのが玉に瑕。

 また犯人と人質の食事や排泄がどうなっているのかはっきりせず、その意味でも今作はリアリズム重視ではなく、当時のギリシャ政治を諷刺する一種の寓話なのだろう。

 俯瞰ショットが多いのは神の視点だからか?

 

 

・「キートンの警官騒動(1922年) 原題:Cops」(エドワード・F・クライン&バスター・キートン監督) 2.5点(IMDb 7.6) インターネットで視聴

 短編であっけないこともあり、キートンの他の傑作と比べてしまうと可もなく不可もない出来。

 

 

・「コレクター(1965年)」(ウィリアム・ワイラー監督) 3.0点(IMDb 7.5) 日本版DVDで視聴

 原作ジョン・ファウルズ(未読)。

 ウィリアム・ワイラー晩年の異色作だが、題名から内容や結末がある程度想定出来てしまうため、見ている間も見終わっても意外性を覚えるはことなく、その分面白みも感じなかった。

 そもそも片恋慕する女性を監禁しながら自分を愛して欲しいなどと妄想すること自体が矛盾そのもので、破綻を迎える結末は端から自明である(ただし彼は彼女に純潔な女性像を抱いているため自ら強姦することもなく、女から言い寄られても自分のもとから逃げるための術策だと考えて誘いを拒絶する)。そして彼女の死によって、蝶々をコレクションする自らの趣味と同じように、彼は新たな対象を求め始める。

 隣家の面倒くさそうな老人がもっと物語に絡んでくるのかと思いきや、1度だけの登場であっさり退場してしまうのは、今作が怪奇映画やスリラーを目指した作品ではなく、人間(男)の中の潜在的な「収集」願望を描いた心理映画だからか。

 映画冒頭に私が以前住んでいたロンドンのハムステッド周辺の街並みが登場するので(女性が拉致される場所は「The Holly Bush」という有名なパブのすぐ近くにある Mount Vernon という細い通り)、個人的な懐かしさを覚える作品でもある。

 

 

・「悪魔が夜来る(1942年)」(マルセル・カルネ監督) 3.5点(IMDb 7.3) 日本版DVDで再見

 ナチス占領下の抵抗云々といった解釈はひとまず措いておくとして、内容的には古臭いおセンチなおとぎ話なのだが、それでも最後には思わずホロリとさせられてしまうのは、ジャック・プレヴェールの巧みな脚本ゆえか、それとも少しも悪賢く見えない滑稽で憎めない悪魔役の個性派俳優ジュール・ベリの存在ゆえだろうか。

 ヒロイン役のマリー・デアは大して魅力的とは言えないし、若き日のアラン・キュニーも決して適役とは言えず(名女優?アルレッティも今ひとつ存在感の薄い役柄である)、俳優たちの演技も演劇調そのもので滑稽ですらあるのだが、それでもやはり最後に納得させられてしまうのは名作の名作たる所以だろうか。

 今作を見ていたら、数十年ぶりに同じ監督・脚本家コンビの「天井桟敷の人々」(1945年)も見返したくなって来た。

 

 

・「輪舞(1950年)」(マックス・オフュルス監督) 3.0点(IMDb 7.5) テレビ放送を録画したもので視聴

 アルトゥール・シュニッツラー原作(未読)で、アントン・ウォルブルック演ずる狂言回しの歌と語りによって登場人物がつながっていき、最後に円環(輪舞)となってぐるぐる回るオムニバス形式の作品。

 フランス風エスプリとお洒落に満ちた艶笑譚だが、正直大して面白くなく、オフュルスの演出も可もなく不可もなし。かつての名優たちの姿が見られるのが取り柄か。メリー・ゴー・ラウンドが男の性機能の比喩になっているのがおかしかった。

 

 

・「快楽(1952年) 原題:Le Plaisir」(マックス・オフュルス監督) 3.5点(IMDb 7.6) 日本版DVDで視聴

 ギイ・ド・モーパッサンの3つの短編に基づくオムニバス。

 2番目の「テリエ館」が白眉。娼婦たちが楽しげに田舎めぐりを満喫する雰囲気が良い。教会のミサで思わず落涙する娼婦たち。田舎の人々も彼女らを素直に歓迎(身元を知っているのかどうかは不明)。

 躍動するカメラ・ワークが素晴らしい。

 最初から最後まで時折モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」が流れる。

 

 

・「歴史は夜作られる(1937年)」(フランク・ボーゼージ監督) 3.0点(IMDb 7.3) テレビ放送を録画したもので視聴

 お気楽なロマンチック・コメディかと思いきや、いきなり殺人事件が起きて女性主人公は嫌いな夫からの脅迫でパリからニューヨークへと移動、彼女に一目惚れした男性主人公は殺人の嫌疑をかけられていることも知らぬまま彼女の後を追う。

 それからあれこれあって、主人公2人を乗せた豪華客船がタイタニック号と同じく氷山に衝突して沈没の危機・・・・・・といったとんでもない展開に。しかし最後はやはりお気楽ハリウッドの安直なハッピー・エンディングで幕・・・・・・。

 シャルル・ボワイエは若く魅力的なヒーロー像を好演し、相変わらずどこが良いのか分からないジーン・アーサーの演技も今作ではさほど悪くなく、そこそこ楽しめるおバカコメディになっている。

 シャルル・ボワイエをどこまでも追いかける料理長シザー(レオ・キャリロ)とシャルル・ボワイエはBL関係か? 主人公のストーカー夫も極端な造型で、3,000人の乗客を犠牲にしても妻と愛人の逃避行を阻止して殺そうとする狂気っぷりが凄まじい。

 映画「レオン」(1994年)での豚(ピギー)の手袋による腹話術はこの映画が元ネタか?

 

 

・「アメリ(2001年) 原題:Le fabuleux destin d'Amélie Poulain」(ジャン・ピエール・ジュネ監督) 3.5点(IMDb 8.3) 日本版DVDで再見

 最近見たボーイ・ミーツ・ガール(ガール・ミーツ・ボーイ)系作品であるポール・トーマス・アンダーソンの「リコリス・ピザ」が全く駄目だった一方、内容的に類似している今作が非常に面白く見られたのは単なる好みの違いでしかないのかも知れない(あるいは私がカリフォルニアという場所には一度も行ったことがないのに対し、パリのことはそれなりに知っているからか)。

 しかし今作は単なる恋愛ものではなく、アメリのような「不思議ちゃん」を始めとするやや変わった人々の生態の面白さを知る楽しみもあるし、独特な趣味の小物やアイテムがたくさん登場するところや、単なる純愛モノではなく舞台がポルノ・ショップだったりするフランス的なひねり等々、他に見るべき要素が多いからかも知れない。

 それでも初見時からすっかり年老いてコテコテのオッサンに成り果てた私には小っ恥ずかしい場面も少なくなく、今作を傑作とまで呼ぶことは難しい。同じ監督の作品であれば最初に見た「デリカテッセン」(1991年)が一番の好みである。 

 

 

・「チャップリンの冒険(1917年) 原題:The Adventurer」(チャーリー・チャップリン監督) 2.5点(IMDb 7.3) インターネットで視聴

 脱走犯のチャップリン。前半の追いかけっこはそこそこ面白いものの、ガラリと展開の変わる後半は、投げっぱなしの結末も含め今ひとつで、全体的に可もなく不可もない凡作。チャップリンの運転手や秘書を務めた高野虎市が出演し、交通事故で死亡したエリック・キャンベル最後の作品でもある。エドナ・パーヴィアンスが魅力的。

 

 

・「アメリカの伯父さん(1980年)」(アラン・レネ監督) 3.0点(IMDb 5.8) 日本版DVDで視聴

 臨床心理学者の理論説明と、3組の男女の話とを関連づけて描いていくのだが、理論と物語とがうまく噛み合っておらず、結末に至っても一体そうした理論付けに何の意味があったのか判然とせず、むしろドラマの緊張感などを失わせているだけでしかない。試みとしては面白いかも知れないが、映画として成功しているとは思えず、単に思いつき程度のアイディアだけだったと言うしかない(似たようなプロットではジャン・ルノワールの「草の上の昼食」(1959年)が嚆矢か?)。

 

 

・「イエスタデイ(2019年)」(ダニー・ボイル監督) 3.0点(IMDb 6.8) インターネットで視聴

 出だしは悪くないのだが、中盤からありきたりな恋愛モノに移行していき、そのまま盛り返すことなく終わってしまった。「もうひとつの世界」では早世せずに長生きしている「あの人」(かなり本人に似ている)が登場する場面には感動したが、所詮そこまで。設定は面白いのだが、それを十分活かしきれていない。

 私は基本的にザ・ビートルズの曲はオリジナルしか認めない「オリジナル原理主義者」なのだが、今作に登場するカヴァー曲は決して悪くない。

 エド・シーランというミュージシャンはよく知らない人だし、なぜそこまで評価されヒットしているのか理解しがたいものの、こんな地味な映画にあっさり出演してしまう点には感心したし、挿入曲も(突出して良いとは思わなかったが)悪くはなかった。

 また、もしザ・ビートルズが無名のまま終わっていたなら、今作に出てくる「イエロー・サブマリン」も「サージェント・ペパーズ」もなかったはずで、そうした細かい矛盾点がやや気になった。

 

 

・「鬼が来た!(2000年)」(姜文監督) 4.0点(IMDb 8.2) 日本版DVDで視聴

 残り30分までは不条理なドタバタ・コメディ調なのだが、そこから一転して不条理かつ残虐な殺戮場面へと移行し、そこでこれはやはり結局は反日・抗日映画なのかと思わせたかと思ったら、途端にマジック・リアリズムばりの荒唐無稽な結末へと怒涛のごとく流れていく。これこそまさに中国という複雑怪奇な土地でこそ生まれる作品であり、その意味では日本や韓国などの反戦・反日映画などは足元にも及ばない、巨大で広範な視点の存在を感じさせる。

 最初に登場した銃が最後にまた登場する(それによってあの「私」が誰か分かる?)らしいのだが、改めてじっくり再見してみないといけない。

 原作もあるようだが、見事な映像化を成し遂げた姜文の才能に脱帽。今作で大きな存在感を示し、その後大成した(そしてあっさり転落した)香川照之の演技も見ものである。
 日本兵や慰安婦などに日本人あるいは日本語ネイティブを用いて不自然さが全くないことにも製作陣の意気込みを感ずる。

 

 

・「地獄の天使(1930年)」(ハワード・ヒューズ監督) 3.5点(IMDb 7.3) テレビ放送を録画したもので視聴

 莫大な費用と時間をかけて撮られたらしいが、その甲斐あってか、1930年の作品とは思えない航空戦の迫力と撮影の見事さで、つくづく映画なるものはこの時代に既に完成期を迎えてしまっていたのだということを痛感させられる(その後は技術の発達だけが進んだだけで、しかもCGの濫用などで結局リアリティを失ってしまっている)。

 特に飛行船との空中戦の不気味な静けさと、その果ての飛行船の最後の美しい(?)散りざまは恐ろしい程である。最後の空中戦も実際の飛行機を用いた撮影だからこその迫力があり、時間の経つのを忘れてしまう。

 物語は他愛ない上、軽薄な弟の言動にも終始苛々させられるが、それも最後の数分で一気に挽回してしまう素晴らしさ(ただし弟の演技はかなり臭いし、何よりも長い)。

 当時から特攻隊のような行為が存在していたことが分かり、飛行船を救うために自ら死を選ぶドイツ軍の兵士たちの行為も特攻隊と同じと言えば言える。

 こういう戦争映画となると頭から否定するようなゴリゴリの反戦主義者がいるものだが、映画として冷静に評価すべきであって、おのれのイデオロギーに凝り固まって端から駄目と決めてかかることほど愚かなことはない。そしてそうした単純で頑なな思考こそが、えてして戦争などの愚行を導きもするのである。

 

 

・「パラサイト 半地下の家族(2019年)」(ポン・ジュノ監督) 3.0点(IMDb 8.5) 日本版DVDで再見
 聞き取り能力の不十分な韓国語で初めて鑑賞して以来、今回は日本語字幕付きによる2度目の鑑賞となるのだが、初見時と同じくなぜこの作品が高い評価を受け、商業的にも成功したのかよく理解できないままである。

 むろん決して詰まらない訳ではなく、それなりに良く出来てはいるのだが、しかし映画史に残るような傑作かと言えば、むしろ作品そのものの出来は平凡である。特にリアリティのなさは随所に見られ、また登場人物の性格にも一貫性がなく、ところどころで仕掛けられているユーモラスな場面もクスリとさせられはするが、所詮それだけでしかない。

 そして今作の根底にある社会の格差や「上下」関係に対する諷刺や批判なども凡庸かつ浅薄でしかない。要するに過去の映画史に残る傑作群が持っているような、革新的で価値観を転倒させるようなものがないのである。
 私はポン・ジュノという監督を、現存する映画作家たちの中で間違いなく突出した才能を持った人として高く評価しているが、ハリウッド(アメリカ映画)に進出して以降の作品には残念ながら評価を留保せざるをえない状況が続いている。

 無惨な失敗作と言うしかない「スノーピアサー」(2013年)以後、やはり決して成功しているとは言い難い「オクジャ/okja」(2017年)、そしてそれらの海外での経験を経て満を持して韓国に戻って撮られた今作も、残念ながら全盛期のポン・ジュノ作品と比べてしまうと、なんとも凡庸極まりない。

 

 

・「男と女II(1986年) 原題:Un homme et une femme, 20 ans déjà」(クロード・ルルーシュ監督) 2.5点(IMDb 5.8) Amazon Prime Videoで視聴

 別段つまらなくはないが、あえて作る必要のなかった続編。しかし最終作の「男と女 人生最良の日々」を先に見てしまったため、この中間作も見てみようという気になったものの、正直見ても見なくても構わなかった凡作。シネフィルのクロード・ルルーシュらしく作中のテレビで映し出されるヒッチコック作品を巧みに取り入れたりしているようなのだが、所詮映画監督としてはキワモノ作家でしかない。

 

 

・「サンダーバード6号(1968年)」(デビッド・レイン監督) 3.0点(IMDb 6.3) インターネットで視聴

 実写と組み合わせたミニチュア撮影は相変わらず素晴らしい。特に爆発シーンの迫力は見事で、本当にミニチュア撮影なのかどうか分からない迫真の出来栄え。

 内容的には凡庸で敵の陰謀が呆気なく失敗してしまうのはご愛嬌。

 

 

・「ROMA/ローマ(2018年)」(アルフォンソ・キュアロン監督) 4.0点(IMDb 7.7) インターネットで視聴

 かなり映像的な技巧が随所で駆使されているが、そうした加工を不自然に思わせないモノクロ画面はひたすら美しい。

 話らしい話はないと言ってもいいくらいなのだが、それでも最後に赦しや癒やしの感覚が一気に押し寄せて来る。

 主人公たちが海で溺れそうになる場面は、最初に荒波が出て来た時点で予想してはいたものの、思いのほかリアルで、作品全体の要となる息詰まる名場面となった。

 

 

・「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年)」(クエンティン・タランティーノ監督) 4.0点(IMDb 7.6) 日本版DVDで視聴

 実際には当時のハリウッドのことなど何も知りもしないのに郷愁を感じさせられる映画。あり得たかも知れない「もうひとつ」の1969年8月。結末が思っても見なかった勧善懲悪だったのは良し悪し。フィルム映画やドラマへの愛情が感じられ、美術やセット、音楽の使い方も相変わらず上手い。クエンティン・タランティーノ作品では久々の良作。

 

 

・「デス・プルーフ in グラインドハウス(2007年) 原題:Death Proof」(クエンティン・タランティーノ監督) 4.0点(IMDb 7.5) 英国版DVDで視聴

 かつてのB級カー・チェイス映画へのオマージュ&パロディで、残酷で下品、しかし痛快無比この上ないカー・チェイス映画の傑作。

 脚本と迫力満点のカー・チェイスの勝利。カート・ラッセルの使い方も見事。前半と後半の対比も絶妙(前半のダラダラした会話も全体を見て効果的なことが分かる)。ゾーイ・ベルらスタント・ウーマンたちの格好良さ。

 音楽の選曲もいつもながら素晴らしい。