2023年8月19日(土)
ブログ更新がすっかり滞っているが、夏休み気分でのんびりしていた訳ではなく、日本から韓国に北上してきた台風6号をはさんで最高気温が35度前後を記録する猛暑日が続いて夏バテ気味だったことに加え、そもそも今年は健康面で厄年らしく体調の優れない日が例年よりも多く何もする気になれないでいたのである(おまけに今週はふくらはぎの筋を痛めてしまい、散歩などは論外の上、家の中でもビッコをひきつつおとなしくしているしかない状態である)。
そんな中ふと思いたって、昔、友人から貰ったNHK「世界ふれあい街歩き」という番組のロンドン・シティ編とスコットランド・エディンバラ編の2つを収めたDVDを久しぶりに見返してみた(いずれも最初に放送されたのはなんと今から17年も前の2006年のことである)。
このDVDは、番組の放送された2006年に仕事で英国に赴任した私に、学生時代からのポン友がわざわざ日本から送ってくれたもので、おそらく友人は全く意識していなかっただろうし、当の私自身もDVDの中身を実際に見てみるまで気づかなかったのだが、「ロンドン・シティ編」には当時私が勤務していたオフィスのあるフィンズベリー・サーカス(Finsbury Circus)という円形広場(Circus)と庭園とが登場していたのだった。
そもそもこのブログにしても、その後2011年春まで約4年半勤務することになったロンドン滞在中に、英国で触れた様々な風物を紹介するため2010年に始めたもので(当時はYahooブログ)、仕事面では波乱続きで正直今でも余り思い返したくない息詰まるような日々だったものの、ロンドンという街での生活自体は、これまでの私の人生において最も刺激的で胸躍るものだったと言って良いほど気に入っていた(そうしたロンドンや英国に対する私の好意的な感情は当時書いたブログの記事を読んでいただければ自ずと感じられるだろうし、2011年の東日本大震災直後に泣く泣く帰国することになった日本(横浜と東京)での1年間や、その後移り住むことになった韓国ソウルでの記事とは明らかに熱量やトーンが異なるはずである)。
ロンドン大火記念塔(Monument to the Great Fire of London)。階段で展望台に登ることができる。
しかしロンドンを離れて既に12年以上の歳月が過ぎ、当時の懐かしい記憶も日々の生活の中で自然と薄れ、今ではロンドンや英国のことを思い出すことも余りなくなってしまい、私自身の怠惰(と体調不良から来る気後れ)のせいではあるものの、英国で知り合った何人かの貴重な人々との交流もこのところ間遠になってしまっている。
英国とのつながりという意味では、その後思いがけずも英国人と親戚関係が出来たことと(ただし生来の出不精と人嫌いの性格から、新たな親戚たちに会いに行くどころか、未だに電話などでも話したことすらない有り様である)、かろうじて週に1度、在英中も愛読していた「ジャーニー」と「ニュースダイジェスト」という日本語誌の記事をインターネットでざっと閲覧してはいるものの(★1)、逆に言えば私にとって英国との関係はもはやそれ位稀薄なものでしかないのである。
★1「ジャーニー」 https://www.japanjournals.com/
「ニュースダイジェスト」 https://www.news-digest.co.uk/news/index.php
バンク駅近くにある旧王立取引所(Royal Exchange)
しかし今回、上記のDVDを久々に見返してみると、まるでプルーストの「失われた時を求めて」における紅茶にひたしたマドレーヌ菓子(madeleine)のように(関連記事 ★2)、番組で紹介されている街並みの風景ひとつひとつが、私の中に埋もれてしまっていたロンドンの記憶を生き生きと甦らせ、やはりプルーストが記している日本の水中花のように(★3)、ロンドンという街の雑多なイメージや匂い、音や雰囲気などが私の内部で一気に花開き、溢れ出すようですらあった。
★2 https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502040130.html および https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502040131.html
★3 ただし林良児という研究者によれば、これは我々が想像する「水中花」以前の「酒中花」(過去の水中花)だっただろうとのことである→https://www.dsjn.jp/dsj-archive/wla/
というのも、上記の通り仕事場がいわゆる「シティ」(参考までに日本語版Wikipedia→★4)の一角にあったことから、この番組で採り上げられている地域の多くには個人的にも馴染みがあり、特に子供の進学の関係で家族が英国を離れて単身赴任生活を送るようになってからの私は、仕事のストレスを解消する目的もあって、週末や休日になるとこのシティ地区を始めとするロンドン市内やその周辺をさんざん歩き回ったからである。
そうしたロンドン散策(の一部)はこのブログでも随時紹介して来たが、例えば上にマンション・ハウス(Mansion House)と称する公邸の写真が写っているシティ市長(Lord Mayor of London)に関しては、以下の記事で就任パレード(Lord Mayor's Show)のことを紹介している。
「兵(つわもの)どもと馬の糞、あるいは冬空の下の竜」 https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502038840.html
ちなみに下の写真で通りがかりの人が説明してもいるように、ロンドンにはいわゆるロンドン市長(Mayor of London)とは別に、シティ地区限定の市長(Mayor)がおり、任期は1年のみで、そのため毎年、上記の就任パレードが行われるのである。
ちなみに今回のDVDには出て来ないが、シティ地区の市庁舎はギルドホール(Guildhall)と呼ばれる勇壮な建物と大きな庭で(下の写真。Wikipedia→★5)、この建物の内部には数千点の絵画等を擁するアート・ギャラリー(Guildhall Art Gallery)や、ローマ時代の遺跡を展示するスペースが設けられ、私もお昼休みに同僚たちと見学に訪れたことがある。
また以前このブログで紹介したことのあるパンケーキの日(Pancake Day)には、このギルドホールの庭でパンケーキ・レースが行われるなど、各種イヴェントが頻繁に開催される場所でもある(https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502037949.html)。
上記日本語誌「ニュースダイジェスト」の関連記事は→https://www.news-digest.co.uk/news/listing/events/16065-pancake-day.html。
パンケーキ・レースの動画→https://www.youtube.com/watch?v=-B3CW-Wgbww。
というようにいちいち思い出話を書いているとキリがないので、ロンドン・シティ編のDVDに出て来た場所で、私が個人的にもよく歩いたところの画像を以下に貼付しておく(同DVDから勝手に拝借しました)。
まずはイングランド国教会の主教座聖堂であるセント・ポールズ大聖堂(St Paul's Cathedral)。
当ブログの関連記事は→「聖夜の祈り」 https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502038948.html
下はタクシー運転手たちが休憩場所に利用しているシティの一角(Piccolo Barというバー兼食事処の周辺)。
以下はアーケード式の「レドンホール・マーケット(Leadenhall Market)」。ここはテムズ川対岸のロンドン南部にあるバラ(Borough)地区のマーケットと共に、ロンドンの観光スポットや食事処としてお勧めである。
このマーケットを詳しく紹介しているサイトがあったので、以下にアドレスを。
https://tripnote.jp/london/leadenhall-market
また当ブログの関連記事→「クリント・イーストウッドのロンドン」 https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502039789.html
下は私が勤務していた事務所のあった円形広場「フィンズベリー・サーカス」(Finsbury Circus)へと向かう道。
下の画像は同広場内にある庭園。
春から夏にかけて好天の日のお昼になると、近所のオフィスに勤める大勢の会社員らがランチを兼ねた日向ぼっこに訪れていたものである(私も下の画像に写っているベンチに腰掛けて何度か昼食をとったことがある)。
この庭園にはパブやボウリングの前身と言われる「ローンボウルズ(lawn bowls)の競技場(グリーン)も設置されていたが、その後ロンドンを横断する鉄道網「クロスレール」(後のエリザベス・ライン)の工事が始まると、この庭園は機材を地下に運び入れたり建材置き場とするために閉鎖されてしまった(現在は復旧されているようだが、どこまで元通りになっているかは不明→比較的最近のこの広場の様子を以下の動画で見られる→https://www.facebook.com/watch/live/?ref=watch_permalink&v=391317215871692)。
以下のマーケットは(確かではないものの)、上のフィンズベリー・サーカスから最寄りのリヴァプール・ストリート駅(Liverpool Street station)を通って、ザ・ビートルズの「Being for the Benefit of Mr. Kite!」(https://www.youtube.com/watch?v=bJVWZy4QOy0)にも登場する「ビショップスゲイト」(Bishopsgate)という通りを渡った「Middlesex Street」や「Wentworth Street」に設けられた「ペティコート・レイン・マーケット」ではないかと思われる。
日本語誌「ニュースダイジェスト」の「ペティコート・レイン・マーケット」関連記事は→https://www.news-digest.co.uk/news/columns/city/14115-1443.html
当ブログの関連記事は→https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502038349.html
これまたDVDには登場しないもののの、上記ビショップスゲイトを北上して東に折れると、スピタルフィールズ・マーケットという大きな市場が出現する(詳しく紹介しているサイト→https://360degreestravelflight.com/2019/07/20/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A7%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%95%E3%81%AE%E3%81%82%E3%82%8B/)。
このマーケットの東端にはスピタルフィールズのクライスト・チャーチ(Christ Church, Spitalfields)という大きな教会があるのだが(下の写真。インターネットから拝借)、ここをさらに東に向かうとバングラデシュ人の一大コミュニティが集う「ブリック・レイン」(Brick Lane)という通りに突き当たる(当時の私は本格的なカレーが食べられる飲食街と認識していたのだが、今ではアートとファッションの最先端として知られているらしい)。
ちょうどその突き当たりに位置していたのが下の画像に写っている「BanglaCity」というスーパーマーケットで(ただしこの店はその後、残念ながら閉店してしまったようである)、私も何度かここでバングラデシュやインドの食材を買ったことがあるのだが、店内には様々なスパイスや食材の香りが漂い、顧客の多くもバングラデシュやインド、パキスタンなどから来た移民たち(あるいはその子孫)だった。
下はおそらくそのブリック・レインという通りで、ここには上記の通り本格的なカレー料理を食べさせるレストランや、ベーグルやソルト・ビーフ・サンドウィッチを売るユダヤ系の「Beigel Bake」という店などが軒を連ねている(インターネットから拝借した2枚目の写真参照。関連記事→https://www.travel.co.jp/guide/article/17464/)。
当ブログのソルト・ビーフ・サンドウィッチに関する記事→https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502038013.html
また、下はおそらくポール・マッカートニー主演の映画「ヤァ! ブロード・ストリート」(Give My Regards to Broad Street)に登場する「Broad Street」地区にあると思われる実にイースト・ロンドンらしい古いレンガ造りの建物。
そしてイースト・ロンドンと言えば「切り裂きジャック」である。
当ブログの関連記事→「愚者たちの夜」 https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502038118.html
下は再び旧王立取引所やイングランド銀行、上記のシティ市長公邸「マンションハウス」などのある「Bank」駅の入口(のひとつ)。番組でも触れられているように、この「Bank」とは銀行のことではなく、テムズ川の河岸(Bank)を意味する言葉である。
ちなみにナレーションを担当している中嶋朋子は「River Thames」のことを「テームズ」川と発音していたのだが、これは伸ばさずに「テムズ」と発音するのが正しい(発音例→https://ja.forvo.com/word/river_thames/#en あるいは https://ja.forvo.com/word/thames/#en)。
ようやく番組も終わりに近付き、夕方になって仕事を終えた人々がロンドン橋を渡って帰路についている(橋の向こうには地下鉄とナショナル・レールが乗り入れるロンドン・ブリッジ駅=London Bridge stationがある)。
ロンドン橋からロンドン塔近くのタワー・ブリッジを望む。
と、極めて個人的な思い出にもとづいて適当に書き散らして来たが、今回このDVDを見ていてつくづく痛感させられたのは、今自分の生きている世界が余りに狭く単調なものだということで、例えば卑近な例をひとつ挙げるなら、私の周囲に存在する人々のほとんどは同じような髪の色や顔つきをした韓国人(あるいは中国人や日本人などの東アジア人)ばかりで、一歩外に出れば否応なく多種多様な人種や国籍の人々と行き交うことになるロンドン(あるいはニューヨーク、パリなど欧米の大都市)とは決定的に異なるということである。
こんな場所に住んでいれば自然と考えも狭小かつ単調になりがちで、もはや生きた屍(しかばね)とも言って良い私が日々同じことを連綿と繰り返すだけで、あらゆる意欲を喪失したつまらない日常にどっぷり埋もれていることには、周辺コミュニティの狭さや単調さが影響しているに違いない(ただし本質的な原因は私自身の内部にあって、周囲の状況はあくまで「一因」に過ぎないことは自分でも承知している)。
そう考えると、私は自分が「余生」を送るのに韓国という(異論はあるだろうが)「単一民族国家」にやって来たことが決定的な間違いだったのではないかとすら思ってしまうのだが(ただし日本に暮らし続けていたとしても状況は似たりよったりだっただろう)、かと言って何の能力も特技も持たない私のような人間が、会社を辞めて英国や米国、フランスなどで生計を立てていく道などそもそもなく、端から「他の可能性」などは存在しなかったのも厳然たる事実である。
それでもなお私は、今回上記のDVDを見、そこに写し出されている多種多様な人種や国籍の人々の姿を目の当たりにして、そうした混沌たる場所にこそ自分の居場所があるのではなかったかと思わずにはいられないのである。嗚呼・・・・・・。
※スコットランド・エディンバラ編については、改めて採り上げるかも知れないし、採り上げないかも知れない(結局そのままになってしまった)。






























