2023年3月3日(金)

 気がついたら既に3月である。

 

 

 今日は亡き愛犬の月命日(上の写真と下の動画)。

 カメラ・レンズの汚れで動画画面が汚いのが残念なのだが、大の臆病者だったにもかかわらず(←どうでも良いことだが、PCの漢字変換ソフトのせいなのか、最近文筆業を生業としている人ですらもこれを「関わらず」と表記しているケースが見られ、気になって仕方がない)、亡き愛犬は鳩やカササギといった身近にいる鳥類にだけは大胆で、近所の公園で鳩などに遭遇すると下記動画のように飛び跳ねるようにして一目散に追いかけていくのが常だった。

 もっとも実際に鳥を捕まえたりしたことはなく、そもそも近づいて行っても相手が全く物怖じせずに堂々と構えていたりすると途端にへっぴり腰になり、そばに近寄ることすら出来ないまま遠くから様子を伺っているだけで、とにかく人(犬)一倍臆病な性格なのだった。
 そう考えてみると、愛犬はおそらく戸外で吠えたこともなかったのではないかと思われる。上述の通りひどい怖がり屋だったため、見知らぬ人(子供であっても)が近づいて来て自分に触れたりしようとすると、自己防衛本能からかたちまち牙を剥き出しにして威嚇したものだが、その際も吠えたり噛んだりするようなことは一度もなかった。

 一方で家にいる時には、玄関の向こうに人の気配でも感じようものなら驚くような速度で駆けつけていき、気でも違ったようにめったやたらと吠えたてたもので、大の臆病者には不似合いなそうした行動を取れたのは、家という自分の「テリトリー」を守ろうという強い意思に裏打ちされていた上、我々家族がすぐそばにいて心強かったためだったに違いない。

 しかし一旦外に出てしまえばそこは完全な「アウェー」で、たとえ我々飼い主がそばにいてもいつどこから「敵」に襲われるか分からないため、周囲を常時警戒することに忙しくて吠えるような余裕を持てなかったのだろう。

 実際、家族が皆出かけてしまってひとりで留守番をさせられた時など、郵便や宅配の人がやって来てベルを鳴らしても、吠えたてるどころか、そもそも本当に家の中にいるのかどうか分からない程の無反応ぶりで、おそらくひとりでぶるぶる震えながら飼い主たちの帰宅をひたすら待ち続けていたに違いない。

 従って「番犬」としては全く役立たずだったのだが、バカな飼い主(特に私)は愛犬のそうしたダメっぷりをも心からいとおしく思っていたものだった。RIP.
 

 

 

 

 以前このブログで、女優・樹木希林を映画界の「至宝」と書いたことがあるのだが(★)、それから約5年が過ぎ、現存する女優の中で改めて「至宝」と呼びうるのは、若尾文子や岸恵子、有馬稲子なども思い浮かびはするものの、最初に写真を掲げた香川京子が筆頭に挙がるかも知れないと思っている。

《★ 寺内周平の死、あるいは映画界の至宝・樹木希林(悠木千帆)

 https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502041999.html

 「至宝」樹木希林ついに逝く

 https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502042140.html

 他にも久我美子や岡田茉莉子、山本富士子、司葉子、岩下志麻、浅丘ルリ子、芦川いづみなどを忘れている訳ではないし、さらに名女優というより「迷女優」と呼んだ方が良いだろう吉永小百合に、佐久間良子や栗原小巻、十朱幸代、加賀まりこ、藤純子や梶芽衣子などもおり、もう少し若手(?)では松坂慶子や桃井かおり、田中裕子や原田美枝子などの名前も思い浮かぶ(例えば以下の記事では他にも数多くの名女優たちが紹介されていて大変参考になる→https://www.hitomi-shock.com/entry/houga-actress)。

 

 香川京子は小津安二郎の大傑作「東京物語」をはじめ、溝口健二の「近松物語」や「山椒大夫」、黒澤明の「天国と地獄」や「赤ひげ」、成瀬巳喜男の「おかあさん」や「稲妻」、「驟雨」など、錚々たる名監督たちの代表作と言って良い傑作・名作において主演を務めたり重要な役どころを演じており、他にも(代表作とまでは言えないものの)川島雄三の「女であること」や豊田四郎の「猫と庄造と二人のをんな」、今井正の「ひめゆりの塔」などの名作・佳作にも出演してはその存在感を示して来た(たまたま最近見直した怪獣映画の名作「モスラ」にも出ている)。

 30代始めに結婚し、新聞記者だった夫の転勤で米国に居を移すなどしてキャリアが一時的に中断したにもかかわらず、その後も「男はつらいよ」でマドンナ役を演じたり、熊井啓の「深い河」や周防正行の「Shall we ダンス?」、是枝裕和の「ワンダフルライフ」などの話題作への出演を経、昨年公開の「峠 最後のサムライ」に至るまで「現役女優」を貫き通している点も見事と言うしかない(先日の映画鑑賞備忘メモにも書いた、最近映画監督として再評価されつつある「映画監督」田中絹代の「恋文」と「女ばかりの夜」の2作にも出ている)。

 

 

 1931年生まれで現在91歳の香川京子のことを思い出したのは、今はなき「大映」の創立80周年記念で1月から始まった「大映4K映画祭」(★)で溝口健二の「近松物語」が上映された際、この人が登壇して監督との思い出などを語ったという記事をインターネットで目にしたからである(例えば以下のアドレス参照)。

☆香川京子、溝口健二監督との思い出語る 監督からの忘れられない言葉「反射して」
 https://www.cinematoday.jp/news/N0134911

☆香川京子、溝口健二監督の「反射していますか」の教えに感謝「黒澤組でも役に立ちました」

 https://hochi.news/articles/20230205-OHT1T51091.html?page=1

 これらの記事で語られている「反射」を連発していた溝口健二に関しては、新藤兼人による「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」(1975年)というドキュメンタリー映画があり、以下のYouTubeで視聴可能である。→https://www.youtube.com/watch?v=h2tRY-DYtVY あるいは https://www.youtube.com/watch?v=xcjU69vtRko

 

★大映4K映画祭の公式ウェブサイト→https://cinemakadokawa.jp/daiei-80/

 また以下で検索すれば、今映画祭で上映される作品の4K修復版予告編を色々と見られる。

 https://www.google.com/search?q=KADOKAWA%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%80%80%E5%A4%A7%E6%98%A04K%E6%98%A0%E7%94%BB%E7%A5%AD&newwindow=1&tbm=vid&sxsrf=AJOqlzUHJGCh3-xKDPuEvnk74dNyRhC4tA:1677813112480&source=lnt&tbs=dur:s&sa=X&ved=2ahUKEwi_ksb05L79AhWE62EKHYxkBpIQpwV6BAgTEBk&biw=878&bih=410&dpr=2.19


 

 あたかもその少し前に黒澤明の「悪い奴ほどよく眠る」(上の写真)や「赤ひげ」(下の写真)を見返したばかりで、前者における足に障碍を抱える純粋無垢な若妻役と、後者での全身から殺気をみなぎらせる狂女役との全く性格の異なる対照的な演技に改めて驚嘆したものだった。

《果たして日本で視聴出来るかどうか分からないものの、当記事で紹介した作品について、古今東西の名作映画が数多くアップされている「Internet Archive」というウェブサイトのアドレスを一応紹介しておく。ただし地域によってはこれらの動画の視聴に法的問題が生ずるおそれあり)。

 「悪い奴ほどよく眠る」→https://archive.org/details/the-bad-sleep-well

 

 「赤ひげ」→https://archive.org/details/red-beard あるいは https://archive.org/details/Akahige

 

 

 これら2作品ほど重要な役どころではないものの、黒澤作品では他にも「天国と地獄」や「どん底」にも出演し、遺作となった「まあだだよ」では松村達雄演ずる主人公・内田百閒の妻役を演じており、黒澤明からは最晩年まで深く信頼されていたことが分かる。

 

 「天国と地獄」(1963年)

 「天国と地獄」→https://archive.org/details/highandlow1963_201908 あるいは https://archive.org/details/high-and-low

 

 「どん底」(1957年)

 「どん底」→https://archive.org/details/the-lower-depths

 

 「まあだだよ」(1993年)

 「まあだだよ」→https://archive.org/details/madadayo

 

 

 と、ごくごく簡単な紹介だけですっかり長くなってしまい、他にも書きたいことはたくさんあるのだが、このままではキリがなくなっていつまで経っても記事をアップできそうにないため、中途半端だが今回はこれまでにして、以下に「近松物語」(まぎれもない大傑作のひとつで、女優・香川京子の代表作と言って間違いないだろう)をはじめとする出演作(のごくごく一部)の写真を貼付してお茶を濁すことにしたい。

 ともあれ、日本映画の黄金時代を代表するこの「至宝」のさらなる活躍と、末永い健康&長寿とを心から祈念したいと思う。

 

 溝口健二監督「近松物語」(1954年)

 「近松物語」→https://archive.org/details/a-story-from-chikamatsu

 【大映4K映画祭/近松物語】特別映像→https://www.youtube.com/watch?v=JwArAHRWW9M

 

 

 溝口健二監督「山椒大夫」(1954年)

 「山椒大夫」→https://www.youtube.com/watch?v=HIAjLELtfDI

 【大映4K映画祭/山椒大夫】特別映像→https://www.youtube.com/watch?v=E7sy1ki4kGI

 

 

 小津安二郎監督「東京物語」(1953年)

 以下は2018年に開催された映画祭「小津4K 巨匠が見つめた7つの家族」に関する記事

 https://www.cinemaclassics.jp/news/1483/

 

 

 成瀬巳喜男監督「銀座化粧」(1951年)

 YouTubeで見られる「銀座化粧」→https://www.youtube.com/watch?v=0FRJFcP2we4

 「Internet Archive」→https://archive.org/details/ginza-cosmetics



 豊田四郎監督「猫と庄造と二人のをんな」(1956年) 

 清楚なイメージとは異なる、中年男(森繁久彌)を手玉にとって前妻(山田五十鈴)とも激しくやり合う蓮っ葉な女を演じており、珍しく(肉体的な)露出度も高い。 

 YouTubeの「猫と庄造と二人のをんな」→https://www.youtube.com/watch?v=UJbHAZngPm0 削除されてしまい、リンク切れ

 

 

 これ以降はインターネットでは見られないが、成瀬巳喜男監督「おかあさん」(1952年)

 

 成瀬巳喜男監督「驟雨」(1956年)

 

今井正監督「ひめゆりの塔」(1953年)

 

 本多猪四郎監督「モスラ」(1961年)

 今作でも清楚でおしとやかといった一般的なイメージと異なる、活動的でハキハキものを言う新聞記者役を演じている。

 

 山田洋次監督「男はつらいよ 寅次郎春の夢」(1979年)

 

 

 最後に香川京子には「愛すればこそ スクリーンの向こうから」や「凛たる人生 映画女優 香川京子」というインタビューを元とした著書があるらしく、次回日本に帰省した際には是非読んでみたいと思っている(以下のAmazonのアドレスを参照)。

 

 

 

「愛すればこそ スクリーンの向こうから」

https://www.amazon.co.jp/%E6%84%9B%E3%81%99%E3%82%8C%E3%81%B0%E3%81%93%E3%81%9D-%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%90%91%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%8B%E3%82%89-%E9%A6%99%E5%B7%9D%E4%BA%AC%E5%AD%90/dp/4620318574/ref=sr_1_3?qid=1677842446&s=books&sr=1-3&text=%E9%A6%99%E5%B7%9D%E4%BA%AC%E5%AD%90

 

「凛たる人生 映画女優 香川京子」

https://www.amazon.co.jp/%E5%87%9B%E3%81%9F%E3%82%8B%E4%BA%BA%E7%94%9F-%E6%98%A0%E7%94%BB%E5%A5%B3%E5%84%AA-%E9%A6%99%E5%B7%9D%E4%BA%AC%E5%AD%90/dp/4898303145