2023年2月21日(火)

 前回までの読書記録や映画鑑賞備忘メモの最終回で、今回はテレビ・ドラマ編。

 

 当ブログでも採り上げて来た「孤独のグルメ」や「深夜食堂」などのグルメものを例外として、私は基本的にテレビ・ドラマ(特に連続もの)というものをまず見ない。

 大いなる偏見だと自覚してはいるものの、大抵1時間半乃至2時間程度で完結する映画に比べ、無理やり話を引き伸ばしたような長ったらしい作品が多く、ただでさえ短い人生の限られた時間を費やしてまで付き合う価値はないと思って来たからである。

 そもそもビデオ録画などが普及していなかった頃、連続ドラマに付き合うには毎週決まった時間にテレビの前にいる必要があり(そしてそんなことは社会人になってからはもちろん、学生時代でも容易なことではなかった)、しかも変に完璧主義なところがある私は、映画にしてもドラマにしてもわずか1分でも見逃してしまうともうそれ以上見る気が失せてしまう困った性格で、結果、子供の頃からドラマは1話完結ものが大前提で、大河ドラマや朝ドラなどはほとんど見たことがない(それでも山田太一や向田邦子、市川森一や倉本聰などの優れた脚本家による作品は何とか時間を都合して見るようにしていた)。

 

 そんな中、昨年久々にやり取りを再開するようになったドラマ好きの友人が私にあれこれドラマを勧めて来るようになり、毎回のように「(連続)ドラマは見ないから」と断り続けるのも何なので、軽く下調べして見るに値しそうなものを選別した上で何本か試してみることにした。

 ついでに手持ちのハードディスクが常時満杯状態なこともあり、これまでインターネットなどからダウンロードして保存しておいた古いドラマも少しずつ消化→削除し、容量を確保しようと重い腰をあげることにした(これまでは容量確保のため、せっかく保存した動画をろくに見もせず削除してしまうことの方が多かったのだが)。

 

 以下、視聴した順番で簡単な感想を(前回の映画同様、作品名などの情報の上下に放送局のウェブサイト等から拝借した当該ドラマの写真を貼付し、ドラマとドラマの間には「*」記号をつけて分別する。点数は映画と同じく5点満点)。

 ご覧の通り、当初は最近のドラマを見る気がなかなか起きず、ドラマ視聴の「リハビリ」でもするかのように、山田太一脚本の作品を中心とする古いドラマから見始めた。

 

 

・「想い出づくり。」(1981年、全14話。3.5点) 山田太一脚本、鴨下信一他による演出。インターネットで視聴。

 さすが時代を先取りする作品を立て続けに書き上げた山田太一で、40年前に作られたものにもかかわらず全く古びていないどころか、むしろ今の時代にこそますます受け入れられる内容だと言って良い。

 このドラマを見ていると、1980年代初めに女性たちが置かれていた状況はその後40年を経て多少変わりはしたものの、根こそぎ大転換するような変革を遂げたとは言えなさそうで、それ以上に男たちの言動はほとんど変っていないようにすら思える。

 古手川祐子、田中裕子、森昌子という主演3人組(古手川祐子は語り手も務めている)が仲良く出かけたり飲み食いしたりする場面は実に楽しそうで、ただ見ているだけでも快いのだが、そうした親密な関係も(世の常で)各自の恋愛や結婚によって徐々に薄れゆき、かくして若さや青春が喪なわれ、「売れ残った」独身者同士が密かに連帯したりする様などが面白おかしく描かれていく。

 主題曲はザンフィル(Gheorghe Zamfir)の「想い出づくり」(Pour La Douce Souvenance)→https://www.youtube.com/watch?v=RURSv8i8LrY

 

 

 古手川祐子が駄目男(レイピストでストーカー、定職につきたがらず意思薄弱で女性にルーズで冷酷)の柴田恭兵に盲目的に入れ込む様子は、まるで新興宗教にのめり込む狂信徒のようで恐ろしく思える程である。森昌子の演技は泣く場面などでは多少拙いものの意外にも達者で、この3人の中で個人的には最も好感が持てた。

 惜しむらくは結末がややありきたりなことで、これら3人の女性がもっと「自己」を貫くような内容にして欲しかったのだが、それもまた時代の限界か。

 男性陣では深江章喜演ずるマスター役が素晴らしかった。

 

 

 

 

・「早春スケッチブック」(1983年、全12話。4.0点) 山田太一脚本、富永卓二・河村雄太郎演出。日本版DVDで再見

 個人的な考えでは山田太一の最高傑作であり、これまでの日本のテレビ・ドラマ全体の中でも屈指の傑作だろうと思う。結末はいささか出来過ぎだが、しかし他により良い結末がありえたとも思えない高い完成度である。

 山崎努の存在感は今作でも圧倒的だが、妹役の二階堂千寿がそれに次ぐ存在感を示していて目を惹く。平凡で事なかれ主義の父親役を演じている河原崎長一郎も素晴らしく、不良少女役の荒井玉青も早くして俳優業を辞めてしまったことが惜しまれる好演ぶりである(石原まき子・裕次郎の姪とのこと)。樋口可南子や鶴見辰吾、岩下志麻にとっても代表作と呼べる会心の作品になっているだろう。

 山崎努が「おまえたちは徹底的に陳腐でありきたりだ!」と何度も口にする台詞は、まさに陳腐でありきたりな(そして画一的極まりない)「正義」や「正論」が我が物顔をして独り歩きし、少しでもそうして公認された規範や常識から外れると「正義ヅラ」した人間たちが寄ってたかって糾弾・非難しようとする今のような時代にこそ、意味深い言葉だと思えてならない。

 このドラマが作られた40年近く前、後の世界がこれほど「徹底的に陳腐でありきたり」な(そして窮屈極まりない)ものになるなどと、山田太一らは想像していただろうか。

 

 

 

 

 

・「岸辺のアルバム」(1977年、全15話。3.5点) 山田太一脚本、鴨下信一他演出。インターネットで視聴

 DVDが発売された時に途中までレンタルして見たことがあるのだが、世評の高さに反してほとんど興味を持てず、そのまま見るのをやめてしまった。

 改めて最後まで見てみると、当時としては問題作であり衝撃的な題材だったのかも知れないが、「早春スケッチブック」を見た後だということもあり、今ではその価値がかなり陳腐化して霞んでおり、登場人物たちが余りに善良/純情過ぎる点などもリアリティを著しく欠いている(特に息子役の国広富之)。

 そんな中で杉浦直樹演ずる父親だけは徹底的に頑固かつ短気で、心底自己中心的なプライドの塊のような俗物なのだが、根っから凝り固まったそんな厄介者ですら結末に至ってあっさり反省・和解に傾くような予定調和的な収斂具合もまたご都合主義的過ぎる。

 また父親の勤める会社が手を染めざるをえなくなった「非社会的行為」なるものも余りに唐突かつ現実味を欠き、もう少し説得力ある設定に出来なかったのか疑問に思うしかない。

 題名にある家族の「アルバム」に固執する余り、堤防決壊という大惨事のさなか、警察等の制止にもかかわらず自宅に戻って取って来ようとする主人公一家の行動も自分勝手過ぎ、微塵も共感を覚えることは出来ない。

 主題歌はつい最近もグラミー賞の「Best Folk Album」部門の候補になって健在ぶりを示したジャニス・イアンの「ウィル・ユー・ダンス」→https://www.youtube.com/watch?v=TUnR4759m5w

 

 

 

 

 

・「3人家族」(1968-69年、全26話。2.5点) 山田太一脚本、中川晴之助・川頭義郎演出。インターネットで視聴
 「木下恵介アワー」の1本。これも山田太一脚本ということで見てみたのだが、脚本家としてのキャリア初期にあった山田太一の個性が少しも発揮されておらず、「木下恵介アワー」のほのぼの路線を踏襲しているだけの平凡な出来。

 主題歌も歌っているあおい輝彦が可愛らしいと言って良い程、性格の良い(主人公・竹脇無我の)弟役を好演していて(主題歌「二人だけ」は→https://www.dailymotion.com/video/x6tegov あるいは 

https://www.youtube.com/watch?v=VUPwBiBYFKI)、上記「岸辺のアルバム」の国広富之同様、実に素直で「良い子ちゃん」として描かれているのはどういう訳か(そう考えると「早春スケッチブック」の鶴見慎吾もやはり決してワルになれない優等生の典型である)。

 あおい輝彦の彼女役(?)である沢田雅美にしても、上司と不倫関係にあるОL役の「岸辺のアルバム」とは違い、少女のような幼い青臭さが残る瑞々しさ&愛らしさである(「ヒロイン」は主演の栗原小巻や、あおい輝彦の片思い相手の川口恵子の方なのだろうが、個人的には沢田雅美の方が遙かに好ましい)。

 古い日本映画でお馴染みの三島雅夫演ずる父親役や、その父親に色目を使う家政婦役の菅井きんもユーモラスで可笑しい。

 

 

 

 

 

・「高原へいらっしゃい」(1976年、全17話。3.5点) 山田太一脚本、高橋一郎他演出。インターネットで視聴

 田宮二郎主演。やや時代的な古めかしさはあるものの随所に山田太一らしいひねりが効いていて、単なる成功譚やハッピー・エンディングに終わっていないところが良い。後の市川森一による傑作「淋しいのはお前だけじゃない」(1982年)は今作を下敷きにしているのかも知れない。田宮二郎はもちろん名優・益田喜頓や北林谷栄なども存在感ある名演ぶりで、田中信夫のナレーションも印象的である。

 苦境を脱して成功を遂げた夫と一緒に暮らすために妻が仕事を辞めるという設定は、昨今の風潮であれば却下されているかも知れないが、当時としては特に違和感がなかったのだろう。

 舞台となるホテルは、八ヶ岳に実在する「八ヶ岳高原ヒュッテ」(旧尾張徳川邸)で、現存するうちに是非とも一度は訪れてみたいものである。
 主題歌は小室等(「お早うの朝」→https://www.youtube.com/watch?v=p1gZEvxtB8o)。

 

 

 

 

 

・「拾われた男」(2022年、全10話。3.5点) 足立紳脚本、井上剛演出。インターネットで視聴

 松尾諭原作(既読)。

 ひょんなことから思わぬ幸運をつかんで&生来の図々しさも結果的に奏効して少しずつ俳優としてのし上がっていくまでの前半部は文句なしに面白いのだが、それ以降は徐々に大風呂敷が過ぎて作り話めいていき低調に。しかし最終話でかろうじて挽回し、全体を通じればそれなりに見られるドラマではある。

 モデルである松尾諭同様、大げさな演技が白々しい主演の仲野太賀よりも、伊藤沙莉や石野真子、安藤玉恵、北香那、井川遥、薬師丸ひろ子、鈴木杏などの女性助演陣が多彩かつ演技巧者揃いで、このドラマは内容自体悪くないものの、それ以上に俳優(ことに女優)に恵まれた作品だと言えるだろう。

 

 

 

 

・「あなたのブツが、ここに」(2022年、全24話。3.5点) 櫻井剛脚本、盆子原誠他演出。NHKワールドプレミアムで視聴
 昨年始まった1話15分のNHK「夜ドラ」の1本で、たまたま見始めただけなのだが毎回見どころがあって結局最後まで視聴。

 突然のコロナ禍によってキャバクラ嬢から宅配ドライバーに転職することになったシングルマザーとその同僚たちの奮闘を描く作品。主演の仁村紗和の他、娘役の毎田暖乃が好演。脇を固める社長役の岡部たかしやパワハラ気質の同僚ドライバーを演ずる津田健次郎などの熱演ぶりも見事である。
 ただし主人公に恋着してうるさくつきまとう「ミネケン」役の佐野晶哉というアイドル(俳優?)だけは、演技も役柄もうるさ過ぎで白けるしかない。

 主題歌はウルフルズの「バカサバイバー」→以下は俳優たちによるダンス付き動画→https://twitter.com/nhk_dramas/status/1564251525974736897

 

 

 

 

・「妻、小学生になる。」(2022年、全10話。3.0点) 大島里美脚本、坪井敏雄他演出。インターネットで視聴

 村田椰融による漫画が原作(未読)。

 「あなたのブツが、ここに」で好演していた子役・毎田暖乃の演技に注目して、保存してあった動画で見てみることにした。

 ややお涙頂戴のほのぼのファンタジーで、個人的な好みからは程遠いものの、いつの間にか毎田暖乃演ずる(亡き妻の生まれ変わりである)小学生に亡き愛犬を重ね合わせてしまい、これまた最後まで見続けてしまった。

 全体的な評価としては平均点で、内容的にも見終えた後に(亡きものに対する)名残り惜しさだけが残ってカタルシスはないのだが、(よくありがちな)安直なハッピー・エンディングになるぎりぎりのところで踏みとどまっている点は評価したい。

 主題歌は優河(石橋凌と原田美枝子の子供で、女優・石橋静河の姉とのこと)の「灯火」で、これはドラマそのものより遙かに優れた傑作である→https://www.youtube.com/watch?v=fRIHgWFqB-c あるいは https://www.youtube.com/watch?v=oBfrAIY6jGU

 

 

 

 

・「分身」(2012年、全5話。2.0点) 田辺満脚本、永田琴監督。インターネットで視聴
 東野圭吾原作(未読)。

 クローン人間など生物工学上のタブー問題を扱いながら、余りに短絡的な勧善懲悪的な結末や陳腐なハッピー・エンディング、凡庸な演出等で、5時間近くも費やして見た甲斐の全くなかった凡作。

 



 

 

・「両刃の斧」(2022年、全6話。3.5点) 鈴木謙一脚本、森義隆監督。インターネットで視聴

 大門剛明原作(未読)。

 真犯人像が毎話のように二転三転して全く息をつかせない見事なプロットに、テレビ・ドラマとは思えない重厚な雰囲気や演技も見もので、久々に堪能出来るドラマ作品だった。

 柴田恭兵や井浦新の重々しい演技は見ていて息が詰まる程で、風吹ジュンや高岡早紀、奈緒らの女性助演陣の熱演も素晴らしい。元警官のサイコパス役を演ずる黒田大輔の怪演ぶりも凄まじいのだが、その極端な人物造型はさすがにやり過ぎでやや無理があるか。

 最終話を見るまでは「傑作」(4.0点か4.5点)の高評価を与えようと思っていたのだが、原作通りなのだろうとは思うものの「事件の真相」が余りに説得力を欠き、全くありえないとまで言えないとしても、リアリティという意味では大いに疑問を覚えるしかない。

 以下はネタバレになってしまうが、例えば「真犯人」が犯行現場となるアパートでサイコパス警官にレイプされ、「被害者」が帰宅したのをそのサイコパス警官がまた戻って来たものと勘違いし、凶器を用いて抵抗したというような設定には出来なかったのだろうか。現実的にまずありえないだろう「極端な偶然」の重なりで犯罪が「起きてしまった」という真相ではすんなり納得出来ず、消化不良による失望感を覚えるしかない。

 

 

 

 

・「エルピスー希望、あるいは災いー」(2022年、全10話。4.0点) 渡辺あや脚本、大根仁他演出。インターネットで視聴

 近頃見たドラマの中で圧倒的に素晴らしいだけでなく、(ほとんどドラマを見ない私が言うのも何だが)10年に1作あるかないかの傑作ドラマだと言えるだろう。

 内容的には昔からよくある権力者による事実揉み消し事件がテーマだが(同系統の初期完成形のひとつは黒澤明の「悪い奴ほどよく眠る」(1960年)だろう)、悪が完全勝利したり能天気なハッピー・エンディングによる単純な善悪二元論に終わることなく、善悪という価値観自体を揺るがしたり相対化することに本作最大の意義があるだろう。

 これはある慧眼の持ち主が指摘していたことなのだが(正直私は全く思いも至らなかった)、今作は「DNA」と同じ二重らせん構造になっていて、その構造があらゆる状況設定に至るまで影を落としており(その最も顕著なのがタイトルである)、そうした周到かつ緻密に設計された見事な脚本にこそ今作成功の秘訣があると言って良い(寡作な人らしいので次作がいつになるか分からないが、渡辺あやという脚本家には今後も注目していくしかない)。

 数々のジレンマにぶつかって懊悩する主人公を演ずる長澤まさみと眞栄田郷敦がいずれも甲乙つけがたい素晴らしさである(特に後者は初めて知った俳優なのだが=かの千葉真一の子息らしい、見た目以上に演技は堅実で説得力もあり、今後が大いに楽しみである)。

 上記「あなたのブツが、ここに」でユーモラスな社長役を演じていた岡部たかしが、今作では節操なくチャランポランなセクハラ&パワハラ気質のディレクター(と思わせながら、ねじくれた真の顔が徐々に浮き上がってくる複雑な役柄)を巧みに演じていて見せる。この人も(単に私がこれまで知らなかっただけだが)注目株である。

 主題歌は余り印象に残っていないのだが、Mirage Collectiveの「Mirage」という曲らしい→https://www.youtube.com/watch?v=dmkeUhNcfnE あるいは https://www.youtube.com/watch?v=L5oYevaPsZw

 

 

 

 

・「おっさんずラブ」(2018年、全7話。1.5点) 徳尾浩司脚本、瑠東東一郎他演出。インターネットで視聴

 評判が良かったようなので見てみたのだが、最近流行りの同性愛男性を扱った作品で、余りにノリの軽い薄っぺらなコメディで、俳優たちの演技も大げさでわざとらしく内容的にも見るべきものがなく、正直、時間の浪費でしかなかった。

 同系列の(?)「きのう何食べた?」(2019年)というドラマの動画も持っているので、比較のためにも近いうちに見てみたいと思っている(のだが、今作同様時間の無駄にならないか心配で逡巡しているところである)。

 当然主題歌も全く記憶にないのだが、スキマスイッチの「Revival」という曲らしい→https://www.youtube.com/watch?v=O3JwiKJj7-8