2022年7月20日(水)
うっかりしていて数日過ぎてしまったのだが、去る7月17日は俳優・丹波哲郎(1922年~2006年。上の写真)の生誕100周年に当たる記念すべき日だった。
丹波哲郎と言えば、「霊界」について熱く語る一風変わった姿を記憶している人も少なくないだろうが、私にとっては日本映画全盛期に活躍した名優の一人であり、今でも時折その姿を見たくなってDVDや動画ファイルを取り出しては、クールでニヒルな姿と重厚で魅力的な声にしばし浸ることがある。
もっとも私と同世代の50代かその下の世代にとっては、丹波哲郎と言えばまずはテレビドラマ「Gメン'75」の黒木警視(正)を思い起こすに違いないし、実際私にしてもこの人のことを初めて知ったのはこのドラマによってであった。
しかしその後たびたびテレビで放送された「砂の器」(1974年)や「007は二度死ぬ」(1967年、上の写真)におけるこの人の演技に接するうちに、「Gメン'75」時代よりも若々しく、それでいて既に個性的な演技力やカリスマ性を全身から放っているこの俳優のさらなる魅力を見出すようになり、そうした思いは古い日本映画(詳細は以下で)を数多く見ていくうちにますます強まっていくことになった。
一方で、伊丹十三の「マルサの女2」(1988年)や山田洋次の「たそがれ清兵衛」(2002年)をはじめ、映画館やテレビでほぼ同時代に接した多くの映画やドラマにも出演し続けており(いちいち年度は記さないが、映画は他にも「宇宙からのメッセージ」、「聖職の碑」、「野性の証明」、「白昼の死角」、「二百三高地」、「魔界転生」、「誘拐報道」など枚挙に遑がない)、丹波哲郎は決して「過去の名優」ではなく同時代の現役俳優であり続けた。
その演技が今でも強く記憶に残っているものとしては、最初に挙げた「砂の器」(上の写真)や「007は二度死ぬ」(ただし英語の台詞部分は吹き替えで違和感があった)の他にも、滝口康彦原作の大傑作「切腹」(1962年、最初の写真)をはじめ、「十三人の刺客」(1963年)、黒澤明と谷口千吉による脚本をリメイクした深作欣二版「ジャコ萬と鉄」(1964年)、司馬遼太郎原作の「暗殺」(1964年)、遠藤周作原作「沈黙」でのフェレイラ役(1971年)、小泉八雲原作の「怪談」(1964年)、結城昌治原作の「軍旗はためく下に」(1972年)、小松左京原作の「日本沈没」(1973年)、大岡昇平原作の「事件」(1978年)、「新幹線大爆破」(1975年)などなど、これまた枚挙に遑がない。
中でも「豚と軍艦」(1961年、上の写真)は、今村昌平監督による映画そのものも屈指の傑作だが、胃病に苦しむヤクザの親分役・丹波哲郎のユーモラスな演技も実に魅力的で、長らく見たいと思っていたこの作品をニューヨークのリンカーン・センター内にあるWalter Reade Theaterでようやく見ることが出来た時も、丹波哲郎が末期胃癌を悲観して鉄道自殺をしようとして果たせない場面(下の写真)では、場内に大爆笑が湧き起こったのをまざまざと覚えている。
既に歿後15年以上を経て、生前の丹波哲郎を記憶する人はこれからますます少なくなっていくだけだが、その姿は今も数多くの旧作映画やドラマで目にすることが出来、個人的にはむしろ日本映画黄金期におけるその重要性がこれから再評価されることを心から願う俳優の一人である。
今回の生誕100年を祝いながら出演作の何本かを見直して、改めてその稀有な俳優人生を振り返ってみたいと思っている。
最後に007つながりで訃報を1件(敬称略)。
映画「007シリーズ」でお馴染みの「ジェイムズ・ボンドのテーマ」(下記のYoiTubeを参照)を手掛けたことで知られる英国の作曲家モンティ・ノーマン(7月11日死去、享年満94歳)。
https://www.youtube.com/watch?v=U9FzgsF2T-s
https://www.youtube.com/watch?v=vGhCrNUiN4o
シリーズ第1作目「007/ドクター・ノオ」(1962年、上の写真)のテーマ曲を依頼されたモンティ・ノーマンが作曲したこの曲は、その後も最新作の「No Tine to Die」に至るまで用いられ続け、007シリーズを象徴する代名詞となっている(ただし往々にして編曲を担当したジョン・バリーが作曲者だと誤解されるようである)。
ちなみに以下のYouTube動画では、007シリーズ各作品の冒頭部をまとめて紹介しており、シリーズの変遷が見て取れるようになっていて興味深いので、あわせてアドレスを書いておく。
☆第1作「007/ドクター・ノオ」から2015年の「007 スペクター」まで
https://www.youtube.com/watch?v=PV7h55ha52E
☆最新作「No Time to Die」まで(ただし韓国では視聴不可となっていて、日本で見られるかどうかも不明)
https://www.youtube.com/watch?v=uwE2_ERW31E&t=0s
英紙ガーディアンによるモンティ・ノーマンの訃報関連記事は以下の通り。
Monty Norman obituary
https://www.theguardian.com/music/2022/jul/11/monty-norman-obituary
Bond theme composer Monty Norman dies aged 94
https://www.theguardian.com/film/2022/jul/11/bond-theme-composer-monty-norman-dies-aged-94
最初に記した丹波哲郎と共にこれら2人の死を悼み、冥福を祈りたい。






