2021年2月22日(月)

 前回書くのを失念してしまったが、13日夜に福島県沖で発生した地震で被害を受けた方々にお見舞いの気持ちをお伝えしたい。

 2011年の東日本大震災による津波や原発事故による甚大な被害に加え、その後も風評被害などにより物心両面で多くの人が打撃を受け続けているなか、容赦なく襲いかかって来る自然災害には激しい脅威と言い知れぬ怒りを覚えるしかない。被害を受けた方々が1日も早く平和な日常に戻れることを心より祈念するのみである。

 

 日本(の一部)もそうだったようだが、昨21日はソウルでも20度近くまで気温が上昇し、久々に春めいた気候が到来した。ここ韓国では気温が上がると悪くなりがちなのが大気の状態で、近所を散策するにもコロナ対策だけでなく大気汚染対策でマスクを着用する必要が出て来る(大気汚染さえなければ、人の余りいない川べりを散歩する際に私はマスクをつけないのだが・・・・・・)。

 昨年はコロナの影響で航空便や自動車の数量が減ったためか、例年に比べると大気汚染はさほどひどくなかった印象なのだが、各国でワクチン接種が始まってコロナの脅威が徐々に後退するにつれて、再び深刻な大気汚染が常態化するのではないかと危惧しているところである。

                   

 すっかり書くネタが尽きてしまったこともあるが、今回はしばらく放置していた「懐かしの味」の4回目(番外編を含めれば5回目)を以下に簡単に(実際には「懐かしくない味」なのだが)。

 

 以前も採り上げたことのある日本のテレビ番組「秘密のケンミンSHOW(現在は番組タイトルの最後に「極」という言葉がついている。https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502042045.html)では、たまに「北関東」というくくりで、群馬や栃木、茨城などの特集を組むことがある。東京や千葉、神奈川などの首都圏に隣接しながら、いまひとつ「田舎臭さ」や「垢抜けなさ」の抜けきらないこれらの地域に対する多少(?)冷笑まじりの内容ではあるのだが、互いにライヴァル意識を燃やし合ったり、反対に県境地域などでは両県文化が混ざってほとんど一体化していたりと、自分の生まれ育った土地に対してほとんど郷愁や地元意識を持ったことのない私のような人間にとっても、未知の場所に関する新たな発見があって興味津々である。

 

 ある時そんな「北関東」特集を見ていて、私は子供の頃に何度か食べた(そして正直余り好きにはなれなかった)食べ物が、北関東(や東北地方)の郷土料理だったことを初めて知ることとなった。そのひとつがタイトルにも掲げた「(生)味噌おにぎり」である。

 

 これは読んで字のごとく、白米を握って表面に味噌を満遍なく塗りたくるだけの、ほとんど料理とすら言えない代物で(括弧入りで「生」と書き加えたように、味噌を塗った後に焼くこともせずそのまま食べるのである)、どういうシチュエーションでこの食べ物を食することになったかも既に忘れてしまったのだが、おそらく食事の時間帯ではない時に小腹がすき、たまたま手元に白米(の残り)だけがあった状況で、とにかくおなかが膨れればと、ささっと作って食べることになったに違いない。

 そうした食べ方はむろん私が考え出したものではなく、上記の「ケンミンSHOW」を見るまでは北関東や東北でポピュラーだということも全く知らなかったのだが、この番組を見てその味噌を塗っただけのおにぎりが「北関東」出身の父親と関わりがあったことを、図らずも知ることとなったのである。

 

 最初に掲げた写真は以下のブログから勝手に拝借したものだが(https://rocketnews24.com/2017/04/25/891801/)、味噌おにぎりはまさにこの見た目通りの、何の飾りもない、ただ白米に味噌をまぶしただけのものである。味にしても味噌そのものの塩辛い味と、ふにゃふにゃした白米の味と食感だけで、これまた何の工夫も新味もないと言っていい。

 インターネットで検索してみると、北関東や東北出身の方々がこの味噌おにぎりについて熱く(?)語っているブログが目につき、味噌おにぎりは北関東のソウルフードだとか、上記ブログの筆者の方のように「人生半分損してる」とまで言い切る人さえ存在する。

   そんな熱狂的な「味噌おにぎり」愛好者の方々には誠に申し訳ないのだが、何度かこの食べ物を食べて(食べさせられて)、私は子供心にも全く「おいしい」と思わなかった(はっきり言って、まずいと言うより、どこか悲しくせつない味だった)ことを正直に告白しなければならない。

 

 もし手元に白米(と調味料)しか残っていないような状況でおにぎりを作るとするなら、私であれば表面に塩をまぶした塩おにぎりにするか(海苔があればなお良いが、ここでは海苔もないものと仮定しておく)、ごはん全体に醤油をまぶして握る(あるいは表面に醤油を塗って焼きおにぎりにする)くらいが精々で、仮に味噌を塗るとしても生(なま)のままではなく、表面を炙って焼きおにぎりにすればまだ何とか食べられるかも知れないと思う(もっとも私は焼きおにぎりという食べ物も余り好きではないのだが)。

 

 子供の頃に家でこの味噌おにぎりが出て来た時に、当時ほとんど料理というものをしなかった父親が自分で握ってくれた特別な記憶もなく(もし父親が直接作ってくれたのなら、父親と関連した食べ物なのかも知れないと想像する余地があっただろう)、母親にしても東京で生まれ育ったため(ちなみに母方の祖父母は千葉出身である)味噌おにぎりなる食べ物のことはおそらく知らなかっただろうから、父親からそうした食べ方を教わったのではないかと思う。もし当時そのことが分かっていたなら、今は亡き母親にこの素朴な食べ物に対する率直な感想を訊いてみたかったものである。

 

 

 

 味噌おにぎりと同じく、「ケンミンSHOW」の北関東特集を見ていて父親由来の食べ物だと気づいたものに「すいとん」がある(漢字で「水団」や「水飩」と書くことを今回初めて知った)。

 小麦粉に水を加えてこねたものを手でちぎったり丸めたりして、野菜などを具にしただし汁に投入して煮込んだもので、我が家では醤油ベースのだし汁にネギや大根などのシンプルな具だけが入っていたと記憶している。

 すいとんを食べるたびに父親は戦時中にお米代わりにこのすいとんをよく食べたという話を繰り返し家族にしたもので、だから私はこれがどこかの郷土料理かも知れないとは全く思わず、戦時中の代用食というイメージをより強く記憶に刻んだのだった(当時は貴重な小麦粉ではなく大豆や高粱などの粉を用いたさらに質素なものだったようだが)。

 戦時中お米代わりにやむなく食べたものを、どうして白米でも何でも自由に食べられるようになってからも父親が懐かしむように食べ続けたのか、直接本人に訊いてみないと分からないことだが、やはり生まれ故郷の郷土料理に対する親しみや懐かしさがあったからかも知れない。

 北関東の垢抜けない質素な食べ物だからという訳ではないものの、残念ながらこのすいとんも幼い私にとっては決しておいしいものではなく、たまにすいとんが食卓に上がると(やはり)子供心にもがっかりしたのをよく覚えている。

 

 

 

 実はここ韓国にも「スジェビ」(수제비)と称する「すいとん」によく似た食べ物があって、これは作るのも容易なことから家庭の食卓にものぼる気軽な食べ物で(それでも作るのが面倒だという場合には、スーパーなどでインスタント製品を買うことも出来る)、トッポッキやおでん、海苔巻などの軽食を食べさせる「粉食店」という庶民的な飲食店(過去記事→https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502040290.html あるいは https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12502040334.html)などのメニューにもよくある極めてポピュラーな料理である。

 上の写真にあるように、韓国のスジェビにはどういう訳かエホバク(애호박)というズッキーニに似た野菜が入っていることが多いのだが(正直、具として合っているとは私には思えないのだが)、すいとんに対する子供の頃からの否定的イメージが未だに影響しているのか、このスジェビという食べ物も私はどうしても好きになれないでいる。

 

 

 

 最後に、幼い頃のやはり余り懐かしくない&どこか垢抜けない食べ物として、ウドの味噌汁を挙げておくことにする。

 私はもともとショウガ(生姜)やミョウガ(茗荷)、シソ(紫蘇)、セロリなど、香りの強い野菜類が余り得意な方ではないのだが(とは言え食べられない程ではなく、同じく匂いが強い野菜でもニンニクやネギ、タマネギなどはむしろ好きである)、このウドという野菜もその独特な匂いと食感が苦手で、特に味噌汁になって出てくると匂いがより強調されるようで大嫌いだった(これは単なる冗談だが、背丈が大きいだけで体力にも筋力にも乏しい虚弱体質の自分をまさに的確に言い表している「ウドの大木」という言葉から、ウドに対して良いイメージを持っていないことも影響しているかも知れない)。

 

 ウドの味噌汁はどうやら北関東の郷土料理という訳でもなさそうなのだが、いずれこのブログで採り上げるつもりでいる(懐かしの、そして今は無き)洋食屋や中華料理屋などをどこからか見つけて来ては家族を連れて行ってくれたような母親の好みとも思えず、やはり上記の味噌おにぎりやすいとんなどの食べ物を懐かしんで食べていた父親の好みではなかったかという気がしている(手遅れにならないうちに近いうちに父親に尋ねてみようと思っている)。

 

 私が物心ついた頃には既に父方の祖父母とも亡くなっていたこともあり、私は父親の故郷である北関東地方を訪れたことがほとんどない。それでも幼時には帰省する父親について行ったこともあるらしいのだが、幼すぎたせいで余り記憶に残ってはおらず(多分その時のことだろうと思うのだが、いくら経っても目的地につかぬまま延々自動車に揺られ続けてひどく退屈した記憶が薄ぼんやりと残っている)、その後高校生くらいの時に1度だけ、どんな関係だったかもはや記憶にない親戚のひとりが亡くなり、その葬儀に参列するために訪ねたことがあるだけである。

 私自身、ほとんど東京とは言えない場末に育った「東京の田舎者」であることもあって、北関東地方に対しても「東京目線」による偏見のようなものは一切持っていないつもりだが、一方で父親の郷里というだけで親近感を抱いている訳でもなく、上記の通り「ケンミンSHOW」の北関東特集にしても、他地域と同じく全くの他人事のように客観的に見て楽しんでいるだけである。

 だから北関東の食べ物にしても端から色眼鏡で見ているつもりは微塵もないつもりなのだが、たまたま相性が悪かったせいか、幼い頃に接することになった北関東由来のいくつかの食べ物には、残念ながら余り馴染めなかったようである。

 そうでなくても出不精な私が、いつか再び父親の故郷やその近県を訪れることがあるとはまず思えないのだが、もしそんな機会が出来たなら、子供の頃の余り懐かしくない味の思い出はひとまず忘れて、それぞれの地域の郷土料理を純粋に楽しんでみたいと思っている。