2020年4月1日(水)

 4月である。今日は日本では新年度や新学期が始まる節目となる日だが、今年は新型コロナウイルス(COVID-19。ちなみに韓国では「コロナ19」と称しているが、「じゅうきゅう」式ではなく「イチ・キュウ」式に発音しているる=コロナ・イル・グ)の影響で、先の見えないまさに五里霧中といった中でのスタートとなってしまった。

 

 そんな中でも季節は確実に巡り、ここソウルも徐々に春めいた気候になりつつある。これまでの夕刻であれば、仕事を終えて帰宅する会社員で一杯のバスや生徒たちを乗せて塾に送り届ける送迎ヴァンなどで混み合っていた近所の道路も、下の写真の通り、まるで旧正月や中秋の連休の時のようにすっかり閑散としているのだが、それでも上の写真からも分かるように、街のあちこちに植えられている樹木が新たな芽を出し花を咲かせている(上の写真には、韓国では春の到来の代名詞である黄色いレンギョウ(連翹)と、おそらくは梅だろう花が写っている)。

 

 

 

 ここ数日は桜の花も一気に咲き始め、例年であれば川沿いの桜並木を愛でようと訪れる市民で川べりの散策路がかなり混み合うのだが、今年は(主に)若者たちが桜並木を背景に写真を撮っている姿をポツポツ目にする程度に過ぎない(もっとも週末にはそれなりの数の散策客が川べりを散歩したり運動したりしていたのだが)。

 以下に私が撮った桜並木や花の写真を何枚か掲げておくことにする(ただしカメラがオンボロなため、3枚目の右上や4枚目の青空部分のように、レンズにゴミが付着して黒い染みのような影が写ってしまうので、出来るだけ染みの少ないものを選び、さらにトリミング機能で影の写った部分を切り取ったりしてある)。

 

 

 

 

 

  下の写真は自宅のすぐ隣の公園に咲いている桜の花

  こちらは同じ公園の(おそらく)梅の花

 以下は自宅アパート(韓国ではヴィラ=Villaと称する4階建てアパート)の庭に咲いている花(椿? 木蓮? 花に疎いため不明・・・・・・)

 いつもは川の中に頭を突っ込んで餌取りに余念のないカモ(マガモ?カルガモ?)たちも、このところ川べりの草むらで日光浴している姿を目にするようになった

 こんな時でも、路上などで売るため(あるいは自宅で食べるため?)に食用植物を採取している生活力(?)の高いオバさんたちもいる

 

 

 ついでだが、また訃報を2つ(以下、敬称略)。

 

 

 まずはポーランドの作曲家、クシシュトフ・ペンデレツキ(3月29日死去、享年満86歳)。

 と言っても私は映画「エクソシスト」(1973年)や「シャイニング」(1980年)でその音楽の片鱗に触れたことがあるだけでしかなく(実際、最初は同じポーランドの作曲家ヘンリク・グレツキと混同していたくらいである)、これらのホラー映画に用いられていることからも分かるように、その音楽は不安や恐怖の予感に満ち、聴いていて心地良い音楽とは完全に対極にある作風だと言っていい。

 よく知られている曲には、

 

 「広島の犠牲者に捧げる哀歌」 https://www.youtube.com/watch?v=CIk6s1AXN2E

 「Anaklasis」 https://www.youtube.com/watch?v=D_HmCryz6Jo

 「ルカ受難曲」 https://www.youtube.com/watch?v=SNWs-F9-f_M

 「UtrenjaⅠ」 https://www.youtube.com/watch?v=ZcuQFuN3P7U

 「UtrenjaⅡ」 https://www.youtube.com/watch?v=tMNlmEqQmGU

 「ポーランド・レクイエム」 https://www.youtube.com/watch?v=yN92JzGr0Ag

 「交響曲第3番」 https://www.youtube.com/watch?v=i_a2pfwKjIY

 

 などがある。

 ペンデレツキの音楽が使用された映画やドラマには、上記作品の他に、同じポーランド人監督アンジェイ・ワイダの「カティンの森」(2007年)、デイヴィッド・リンチの「ワイルド・アット・ハート」(1990年)や「インランド・エンパイア」(2006年)、ドラマ「ツイン・ピークス The Return」(2017年)、アルフォンソ・キュアロンの「トゥモロー・ワールド」(2006年。原題:Children of Men)、マーティン・スコセッシの「シャッター・アイランド」(2010年)、フィリップ・カウフマンの「ワンダラーズ」(1979年)、ピーター・ウィアーの「フィアレス」(1993年)などがある。

 

 以下に「シャイニング」と「エクソシスト」から印象的な曲のアドレスを貼付しておく(「エクソシスト」は何と言っても英国のミュージシャン、マイク・オールドフィールドによる「チューブラー・ベルズ」が有名だが→https://www.youtube.com/watch?v=geFhtD-ZXoA、これはペンデレツキの作品ではない)。


 「シャイニング」 The Awakening of Jacob
 https://www.youtube.com/watch?v=5MEwiO563rY
 「シャイニング」 De Natura Sonoris No. 1
 https://www.youtube.com/watch?v=kqemsPQdVxE
 「シャイニング」 De Natura Sonoris No. 2
 https://www.youtube.com/watch?v=RjEdK1h1Fto

 「エクソシスト」 Polymorphia

 https://www.youtube.com/watch?v=cgAVtI6g4zg

 

 

 そして2つ目は、新型コロナウイルスに感染して亡くなったコメディアンの志村けん(3月29日死去。享年満70歳)。
 おそらく50~60代(初め)の日本人で、幼少年(少女)期にこの人の姿を目にしたことのない人はおそらくいないと言っていいだろう。私もご多分に漏れず「8時だョ! 全員集合」での志村けんには随分楽しませてもらった一人で、「東村山音頭」のシングルレコード(下の写真)を買って何度も聴き返したのを覚えている(志村けんの生まれ故郷・東村山市では、以下のようなページまで設けている→https://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/smph/shisei/shokai/higashimurayamaondo/ondo-ken.html)。

 


 正直、中学に上がった頃からコメディやお笑いにほとんど興味を失ってしまった私は、それ以降の志村けんの活動にさほど親しむことはなかったのだが、今回の死去に関する日本のみならず海外メディア(特に東アジア)での報道を目にして、この人が日本のコメディ界を代表する一人だったことを今更ながら再認識させられたと言っていい。

 何よりも日本では、今回の新型コロナウイルスの犠牲となった最初の有名人だったことや、症状が急激に悪化して発症から亡くなるまでの時間が短かったことなどから、衝撃をもって受け止められたのだろう。

 そしてこのところ新型コロナウイルスに対する警戒心が日本全体で弛緩しつつあった中、この人の突然の死は、コロナウイルスの危険性を改めて人々に認識させ、行動の見直しを迫るひとつの大きな契機になったとも言える。志村けんという一個人はコロナウイルスによる数多くの犠牲者の一人に過ぎないが、しかし本人が意図しない形ではあれ、身をもってその恐ろしさを広く人々に伝えたことで、最後まで(真の意味での?)「コメディアン」であり続けたのかも知れない。

 

 この2人の死を深く悼み、心より冥福を祈りたい。

 

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 この間、引き続きカート・ヴォネガット・ジュニアの作品を読んでおり、以下の2冊を読了。
・カート・ヴォネガット・ジュニア「母なる夜」(早川書房Kindle版、飛田茂雄訳)を再読。ただし以前読んだのは白水社刊の池澤夏樹訳。
・カート・ヴォネガット・ジュニア「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」(早川書房Kindle版、浅倉久志訳)

 先日読んだ「猫のゆりかご」より分かりやすいと思い込んでいた「母なる夜」は、主人公がナチス・ドイツでアメリカ向けに積極的な反ユダヤ的広報活動を行っていた男でありながら、実際にはアメリカのスパイだったというややこしい設定になっており、これだけを見ても今作も「猫のゆりかご」などと同じく一筋縄では行かない作品であることが改めてよく分かった(初読の時の記憶は全く残っていなかったのである)。

 続く「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」は、先祖から譲られた巨万の富や恵まれた境遇に疑問を抱き、平凡で貧しい庶民の中で生きようとするイエス・キリストのような(?)人物が描かれており(あるいは長らくアメリカでは危険視されて来た社会主義的/共産主義的な傾向を持った人物だとも言えるだろう)、表向きは直截的なメッセージを含んだ分かりやすい作品だとも言えるが、果たして「それだけ」なのか正直よく分からない、これまた掴みどころのない作品である。

 そして今は「スローターハウス5」を再読しているところで(さらに続く「チャンピオンたちの朝食」まで読もうかどうか迷っているのだが)、一連の作品を読んだ後で感想なり読後感なりを書いてみたいと思っている。

 

 この間に見た映画やドラマは(感想は省略)、

 

・「配達されない三通の手紙(1979年)」(野村芳太郎監督) 3.0点(IMDb 6.5) 日本版DVDで再見

 エラリー・クイーン「災厄の町」が原作(未読)。

 佐分利信、乙羽信子、小川真由美、栗原小巻、松坂慶子、神崎愛、片岡孝夫、蟇目良、渡瀬恒彦、小沢栄太郎、竹下景子、北林谷栄、米倉斉加年、蟹江敬三、稲葉義男など、豪華出演陣。

 

・「リリス(1964年)」(ロバート・ロッセン監督) 2.5点(IMDb 6.9) 日本版DVDで視聴

 ウォーレン・ベイティとジーン・セバーグ、ピーター・フォンダ、キム・ハンターなどが出演。

 

・「ナイアガラ(1953年)」(ヘンリー・ハサウェイ監督) 3.0点(IMDb 7.0) 日本版DVDで視聴

 マリリン・モンローとジーン・ピーターズの2大美女のダブル主演で、「第三の男」のジョゼフ・コットンが若く派手な妻(マリリン・モンロー)を持つ精神的に不安定な中年男を演じている。

 正直見る前はこんな内容(サスペンス映画)だとは思っていなかったのだが(ナイアガラを舞台にしたロマンス映画かと思っていた)、ヒッチコック作品にも通ずる(年代的にはむしろヒッチコックを先取りしていると言えるかも知れない)カット(画面)や撮影は興味深いものの、サスペンスとしては平凡な出来。

 作品の内容からすれば、マリリン・モンローはミス・キャストか。また、ちょっと聴いてみただけだが、DVDに収録されている声優・向井真理子による日本語吹き替えは、今作でもいつもながらの色っぽく白痴的な声のままで違和感を覚えるしかない。

 

・「エクス・マキナ(2015年)」(アレックス・ガーランド監督) 2.5点(IMDb 7.7) 日本版DVDで視聴

 

・「ベテラン(2014年)」(リュ・スンワン監督) 3.0点(IMDb 7.0) 日本版DVDで視聴

 

・「インサイダーズ 内部者たち(2015年)」(ウ・ミンホ監督) 3.5点(IMDb 7.0) 日本版DVDで視聴

 中々の佳作。イ・ビョンホンとチョ・スンウの好対照なコンビが面白く、ユーモアとサスペンスの配分も良い。プロットはありがちで意外性がないものの、韓国社会の抱える問題をうまくエンターテインメント化していて見せる。

 

・「サボテン・ブラザース(1986年) 原題: ¡Three Amigos!」(ジョン・ランディス監督) 3.0点(IMDb 6.5) 日本版DVDで視聴

 今作そのものは凡庸だが、その最大の功績は、設定をSFに変更しながら更にブラッシュ・アップさせた傑作「ギャラクシー・クエスト」(1999年)を結果的に(?)産み出したことだろう。

 

・「破壊!(1974年) 原題: Busting」(ピーター・ハイアムズ監督) 3.0点(IMDb 6.3) 日本版DVDで視聴

 エリオット・グールドとロバート・ブレイク主演。

 

・「続・激突! カージャック(1974年) 原題: The Sugarland Express」(スティーヴン・スピルバーグ監督) 3.0点(IMDb 6.8) 日本版DVDで再見(全く記憶になかったので、実際は初見かも知れない)

 ゴールディ・ホーンと共に「スローターハウス5」(1972年)のマイケル・サックスや、西部劇の名作佳作に数多く出演して来た名優ベン・ジョンソンが共演。

 

・ドラマ「コタキ兄弟と四苦八苦」(監督:山下敦弘、脚本:野木亜紀子) インターネットで視聴

 友人に勧められて見たドラマだが(1エピソードだけ視聴不可だった→その後これも視聴)、毎回異なった仏教用語をモチーフに、たまたま「レンタルおやじ」という仕事をすることになる冴えない中年男の兄弟と、その仕事を通じて出会う人々との関わりを描いた作品で、(普段余りドラマは見ないものの)久々に感心させられたドラマだった。

 古舘寛治と滝藤賢一のダブル主演で、他に芳根京子、宮藤官九郎、中村優子、市川実日子、門脇麦、岸井ゆきの、小林薫、手塚理美、北浦愛などが出演している。