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 2018年1月5日(金)

 私が毎週楽しみに見ている数少ないテレビ番組に、NHKの「ドキュメント72時間」という25分ほどの番組があるのだが(もうひとつはやはりNHKの「サラメシ」である)、毎年年末の恒例企画として「朝まで!ドキュメント72時間」という総集編が放送される。これは1年間の番組から視聴者投票によって年間ベスト10を選出し、そのまま放送するというものである。単にベスト作品を再放送するだけではなく、番組制作秘話やそこで紹介された人たちの「その後」などを、評論家&コラムニストの山田五郎と放送作家の鈴木おさむ、そして番組のナレーションを担当している吹石一恵の3人が紹介し、作品についての思い出などを語ったりする内容となっている。


 さらに今回は、番組の主題歌「川べりの家」を歌っている松崎ナオが、2017年に放送されたこの番組の1本のなかで紹介された、町なかに置かれていて誰もが自由に弾けるというピアノで主題歌を歌うおまけまでついている(もうひとつの「そうして回る」という曲を含めたこのライヴの模様は、右のNHK公式サイトで視聴できる→http://www4.nhk.or.jp/72hours/36/#kawaberi←いつの間にか松崎ナオの動画は消えてしまった)。
 このライブ演奏版も決して悪くはないのだが、ヴォーカルがやや叫び気味で強烈すぎる印象で、やはりよりヴォーカルのおとなしいオリジナル演奏の方が個人的には好きである(以下のアドレスで聞くことが出来る)。

 

 

 

 下は別ヴァージョン


 今更ながらではあるが、この番組は読んで字の如く、72時間の間、ある場所に焦点を据えて、そこに集う人々を観察してインタビューする様子を収めているだけの実に単純なものなのだが、毎回選ばれる場所がユニークであったり、そこを訪れる人々が個性的だったりして、実質3日間のごく限られた時間を定点観測しているに過ぎないにもかかわらず、その場所に生きる人々の姿だけでなく、現在の日本人や日本に暮らす人々の姿、ひいては人間存在なるものの相貌を垣間見ることが出来る、実に興味深い社会番組でもある(これまでも何度も紹介しようとしてきたのだが、つい放置しているうちに5年以上の歳月が過ぎてしまった)。
 実はこの番組のコンセプトはここ韓国にも「輸出」され、公営放送のKBSで「ドキュメンタリー3日(다큐멘터리 3일)」というタイトルで放送されており、以前この日韓双方の番組がコラボして、お互いの番組を日韓双方で放送し合ったこともある(ただし韓国版は、当初はNHKと同じ作りで開始したものの、韓国の視聴者にとっては大人し過ぎたようで、今では微妙に番組構成が異なり、往々にして「定点」からはみ出してしまったりもして、そもそも放送時間も1時間とNHK版より長い)。

 この番組の最大の魅力は毎回異なる場所の選定と、そこに集う人々の個性にあることは間違いないものの、それに加えてこの松田ナオによる主題歌にあると言っても決して過言ではない(そしてそのこともあってか、私はKBS版の「ドキュメンタリー3日」を余り面白いと思ったことがないのである)。松崎ナオの少年のような(実際上のライブ演奏やYoutubeの映像などを見ると、彼女の所作や言葉遣いはかなり男っぽく、更に原発反対運動などにも積極的に参加して歌を披露しているらしい)、しかしどこか切なくもある歌声によって歌われるこの主題歌が流れてくるだけで、私は(そしておそらく多くの番組ファンたちは)、なぜか自分の心が押さえつけられるような思いがするのを抑えることが出来ないのである。そして毎回全く異なる場所で、全く個性も境遇も異なる人々の姿が映し出されているにもかかわらず、これぞ人間、これぞ人生だという感慨を抱かないではいられないのだ。

 この番組では、今年から視聴者からの推薦を積極的に取り込んでいくらしいのだが、これからもちょっと風変わりな場所で、日本(人)や人間存在の一面を垣間見ることの出来るような番組作りを続けて行って欲しいと切に願うものである。