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 2013年7月4日(木)
 今月2日から21日まで、ソウル市内のデジタルメディアシティ(★)にある韓国映像資料院の「シネマテックKOFA」で、「スタジオ大映特集 増村保造と市川崑」(★★)と題する特集上映が行われている。

《★以前はソウル南部にあったソウル日本人学校も数年前に移転し、今ではこの地域の一角に位置している。
★★日本語より「英語に発音が近い」ことがご自慢の韓国語では「스튜디오 ステュディオ」である。もっとも「大映」の方はなぜか「다이에 ダイエ」と中途半端な表記なのだが…。》


 今回上映される27作品(★★★)のうち21作品は、テレビから録画したものを含めてDVDで所有しているので、今回は残りの6作品を見ようと、初めてこの韓国映像資料院を訪れてみた。今回の特集をはじめこの映像資料院で上映される映画は基本的に無料であることもあり、ケチな上にすっかり引きこもり生活に慣れてしまった重い腰を上げて、昨年韓国に来てから初めて映画館に映画を見に行くことにしたという訳である。

《★★★上映作品は以下の通り。
 増村保造監督作品は「青空娘」、「氷壁」、「くちづけ」、「暖流」、「巨人と玩具」、「からっ風野郎」、「妻は告白する」、「卍」、「足にさわった女」、「『女の小箱』より 夫が見た」、「清作の妻」、「刺青」、「赤い天使」、「遊び」、「陸軍中野学校」、「盲獣」の16本(この後巡回する釜山の「映画の殿堂」では更に「爛」、「華岡青洲の妻」、「セックス・チェック 第二の性」の3作品が上映される予定)。
 市川崑監督作品は「日本橋」、「処刑の部屋」、「満員電車」、「炎上」、「野火」、「鍵」、「ぼんち」、「おとうと」、「破戒」、「黒い十人の女」、「私は二歳」の11本。》


 映像資料院では上映2日前に入場券が配布開始となるが、電話やインターネットでの予約は受け付けておらず、その場に券を取りに行かねばならない仕組みになっていて、この場所に行くだけで片道1時間半近くかかる私は事前に行くことは早々に諦め、当日会場に行ってチケットを確保することにしたのだが、万一売り切れはしないかと心配だったので、出発前に配偶者に窓口に電話してもらい、前売り(正確には事前配布)状況を確認することにした。
 テレビ番組すら定刻に始まらないことの多い韓国らしく(もっともテレビの放送時間は米国や英国でも守られないことがままあったので、この方が「世界標準」なのかも知れないが)、午前11時から出勤する「はず」の窓口担当者がなかなかやって来ず、何度か電話をかけ直して結局30分ほどたってから漸く確認できた。
 平日の、それも毎日午後2時から夜7時過ぎまでの3回の上映ということで、満員になることなどないと担当者は失笑していたらしいのだが、実際、会場に足を運んでみると、大きさの違う3つの映写室のうち328人収容できる最も大きな映写室に、今日は一番多い回でも100人いるかいないかというくらいの入りだった。

 定職のない自由な身であることから、私は今日は、午後2時の回(「足にさわった女」)と午後7時半の回(「『女の小箱』より 夫が見た」)の2本を見ることにしたのだが、途中で4時間近く間があいてしまうため、結局午後4時半の回の「巨人と玩具」も見てしまい、中学生時代に家の近くのオンボロ映画館(いわゆる二番館)によく通った3本立て上映以来、30数年ぶりに1日に3本立て続けに映画を見ることになった(今日の上映作品はいずれも増村保造作品)。
 明日も1本(「陸軍中野学校」)、明後日と明々後日には、増村保造や川島雄三、市川崑作品などに数多く出演し、昭和を代表する美人女優(「のひとり」ではない)と言っていい「若尾文子様」が来場して映画上映後に韓国の映画批評家と対談することになっているので各日1本(これらの回の上映作品は、いずれも既に見たことのある「清作の妻」と「刺青」なのだが)、そして来週も火曜(市川崑「日本橋」)、木曜(増村「氷壁」)、金曜(増村「暖流」)と各日1本ずつ見に行くことにしているので(ここまで来ると「暇人」を通り越して完全な「マニア」かも知れないが)、詳細については後日改めて書くことにしたい。

 この韓国版「シネマテック」はその名称からしてフランスのパリにあるシネマテックをモデルにしているものらしく、特に併設されている韓国映画博物館は、かつてはエッフェル塔正面のシャイヨ宮内にあったパリの映画博物館(シネマテックも同じ建物の中にあった)にかなり似た作りであるように思った(もっとも規模はかなり小さく、かつ外国人が訪れることを想定していないのか、展示には韓国語での表記しかなかった)。
 韓国映像資料院のウェブサイト(http://www.koreafilm.or.kr/)自体、一応英語のページもあるものの、プログラムなどは韓国語中心である上ページ・レイアウトなども非常に見づらく、そのためか(それとも単に平日だったことからか)今日はほとんど日本人観客がいないように思われた(そもそも今やソウルに住んでいる「普通」の日本人にとっては、増村保造や市川崑という映画監督名や「大映」という映画会社名は、もはや遠く見知らぬ存在でしかなくなっているのかも知れないのだが…。→後日追記 5日には日本語で話している観客が少くとも3人はいるのが確認できた)。
 上記のようにチケットの事前配布方法や電話等の応対も含めて色々と文句はあるのだが(普段上映される古い韓国映画の多くに字幕がないのも残念な点である)、入場無料ということで仕方がない&文句は言えないかと諦めるしかないかなとも思った。今回の「大映特集」は、今後他にも場所を移して秋まで上映が続くこともあってかパンフレットなどもかなり凝った作りで(後日写真をアップしたいと思う)、日本の国際交流基金などから協賛金が出ているようではあるものの、かなり経費がかかっているに違いない。

 ともあれ、こうした企画が韓国で行われることは「一日本人」としてではなく「一映画ファン」としては非常に喜ばしいことであり、これらの監督作品が日本だけでなく海外においても今後も見られていくきっかけになれば良いと心から思っている。韓国映画資料院では2015年に日本映画特集を企画しているらしいので、小津や黒澤、溝口といった有名どころだけではなく、今回採り上げられた増村保造や市川崑の他の作品、ざっと思いつくだけだが、木下恵介、成瀬巳喜男、内田吐夢、川島雄三、今井正、今村昌平、小林正樹、大島渚などの作品も数多く上映されればと願ってやまない。

                                    (以下続く)