肌の調子が悪かったので、近くの病院に行ってきたんです。


昼前だったからでしょうか、待合室にはご年配の方がまばらに座っていました。


初診だったので、問診票を書いていると、目の前の水槽に違和感を覚え、まじまじと眺めました。


水槽には確かに水が入っていました。


しかし、


水槽にあるはずの魚、いや魚ばかりか、水草や砂、循環器などが一切無く、ただただ水が張ってあるだけでした。


不思議に思う私を、後方から呼ぶ声が聞こえました。


「○○さーん…」


どこか遠くの方から聞こえてきたその声は、待合室の扉を開くように私を促しました。


私は一刻も早くこの場所から離れたいという思いを抑え、その重たい扉を開いたんです。


ギィー……バタン!!


重たいその扉は、まるで他の世界から私を隔離するかのように、勢いよく閉まりました。


奥には、年を召された男性の医師が座っていました。私は恐る恐る椅子に座りました。


年配の医師M氏は、慣れた口調で、いつ頃からか・どんな症状なのかを聞いてきたので、私はそれに答えていきました。


その後、私の腕・腹部・背中を見た後、M氏はこう言ったのです。


「薬物アレルギーですね」


私はその診断に驚きました。どうして…何故?ぐるぐるとハテナマークが頭の中を駆け巡りました。


「最近薬飲んだでしょう?それのアレルギー反応ですね」


先生の言葉は、私の頭に入って来ませんでした。


それもそのはずです。


薬なんて全く飲んでいないからです。


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我に返った私はすかさず言いました、私は薬など飲んでいない、アレルギー反応など起こるはずがない、と。 


しかし、M氏は冷静でした。


「そういう場合もあります」


一体、薬を飲まずに薬アレルギーになる場合とはどういう場合なのでしょう。私はM氏の診断を受け止める事が出来ませんでした。


「塗り薬出しときますね、これ面でベターっと塗らずに、患部にだけ点で塗ってください」


これにはさすがの私も抗議をしました。私の症状は腕と足に満遍なく出ており、点で塗るようなものではない、どうやって塗ればいいのか、と。


しかし、ここでもM氏は冷静でした。


分かりやすいように、図で説明しますね。
M氏はそう言うと、看護師の1人に資料を取りに行かせました。


なんだろうな…やだな…やだな…と思っていると、程なくして看護師が一枚の紙を持ってきました。


そこには、


ひと塗り(人差し指第一関節)=手のひら二つ分

塗り薬チューブ一本=手のひら20個分


が図で書かれていました。


私はこれが理解出来ないと思われているのだろうか、そう思うとぞっとしました。

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ここに来たのは間違いだった、そう思った私でしたが、意を決し、最初から抱いていた疑問をぶつけてみました。


これって、単なる"あせも"じゃないんですか、と。


しかし、M氏の回答は、私が予想だにしないものでした。


「あせもは、日本には存在しない病気です」


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