懐かしい家 | 紫陽花

紫陽花

日々の出来事を書いていこうかと思っています
でも何ということもない日のほうが多いんですけどね(^^)


よく手入れされた庭を通ってN家の玄関へ着きインターホンを押す。
もしかしたら彼女の声が聞こえるかと思ったがそんなこともなく
ご主人の声が返ってくる。
まもなくご主人が家の中から出てきた。
5年も経っているし、今回のことで参っているのかうんと
年を取ったように見えた。

挨拶を交わして仏間に案内される。
そこには懐かしい彼女の写真があった。
紫陽花の花をバックに薄紫の着物を着ていた。
ハキハキとして気の強い彼女にしてはとても優しい表情をしている。
私にはとても優しかったけれど、他の人たちはちょっと怖がって
いたのでは?といつも感じていた。
これからはこの遺影をみんなが見るわけだから、優しい人として
こころに残るかもと思い満足した。

お線香をあげて彼女に挨拶をした。
一生の友達だよ!と何度も言ったくせにこんなに早く逝ってしまう
なんてひどいんじゃない、とは言ってみたもののほんとは
もっともっと生きたかったにちがいない。
私がそっちに行くまで待っていてね、そのときはきっと迎えに来てね。
またいっぱいお喋りをして過ごそうね。
何も喋らない彼女の遺影に取り留めもなく一方的に喋った。

そのあとご主人といろんな思い出話をした。
わりとお元気そうで安心しましたと言うと
いやいやこれが精一杯なんですよと悲しそうに返ってきた。
この広いお家で一人で生活していくのだから寂しいに決まってますよね。
朝からお酒を飲むようにならなきゃいいけど、と思った。

2時間近く話をして、それでもキリがないのでお暇することにした。
寂しそうなご主人とお別れして門を出た。
もう一度振り返って、これでもうこのお家にくることはないだろうな
彼女に最後のお別れを心の中で告げて歩き出した。