私は某大手通信企業の派遣社員をやっていた。
今まで数多くの企業に勤めたが、ここの仕事が一番難しかった。
最初は人間関係のこともあり、辞めたくなることもあった。
・・・でも私なんかを頼りにしてくれたから。
それがすごく嬉しかったから、必死に仕事をこなしていた。
上司も、先輩もとてもとても素敵な人で優しくて面白くて…大好きな職場だった。
なのに。
ある日、私は“私じゃなくなった”。
それが原因で強制的に仕事を辞める事になった。
いや、辞めざる得なかった。
しかも私は一切会社の人達へ連絡出来ず、全て配偶者である彼が処理をした。
上司にも先輩にも同僚さん達に一言も挨拶出来ずに辞めることになったのだ。
・・・何故か?
それは
“私じゃない人格が会社の人達に関わると迷惑を被る人達がいるから”
そして
“多重人格者という面倒なことに関わりたくないから” 。
当然だよね。
でも、ずっとそのことが心残りで仕方ない。
やっぱり先輩に、上司にお礼とお詫びをしたかったよ。
『一緒に仕事が出来て嬉しかった。』って。
『私なんかを頼ってくれて涙が出るほど嬉しかった。』って。
寂しいよ、悲しいよ。
普通に生活出来ないことが悔しくて悔しくて堪らない。
…でも、いつかはこうなるって“解っていたんだ”。
こんな場所で伝えても絶対に届くはずないけれど。
それでも言いたい。
『J子さん、S木さん、T橋さん、M崎さん、M村先生、課長。
ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。そして、本当に本当にありがとうございました。
私は皆さんに出会えて幸せでした。』