その四歳になる二人の女の子は、繊細で人の気持ちを察することのできる優しさを持っている。

そしてその繊細さ故の臆病さは、彼女たちに先を見通す能力と物事の矛盾を見分けるという賢さを与えた。

それらは、まだ精神的に幼い同じ歳の困っているお友達を助ける行動を促す。

しかしそれは、その子が純粋に困っているから助けたいというよりも、その子がグズグズしていることで作業が先に進まないことに苛立つ担任の感情を波立たせないためもあるのだ。

彼女たちは去年、クラス担任が変わってから、登園時に嘔吐を催すようになった。

先生に叱られるようなことはまったくないし、友達とも仲が良い。

保護者も先生方も理由がさっぱり分からないと言っていたが、私にはなんとなくわかる気がした。

なぜなら私が彼女らの歳の頃、まさにそのような状態で登園拒否を起こして、しまいには夢遊病のようになり、病院に何度も連れていかれたからである。

去年はそのようなことがなかったのは、担任が理路整然とした人で、言っていることの意味が子供たちに伝わりやすかったし、子供たちの前で感情の起伏の激しさを出さなかったからだと思う（普段は激しいが）。

しかし今回の担任は、いわゆる仕事が出来ないタイプだ。提出物はいつも遅れ、行事の準備はめちゃくちゃで、整理整頓ができない。

しかし大人とのコミュニケーション能力は低くはない。仕事を一緒にしなければ、楽しい友人でいられるタイプだ。

だけどそもそも仕事に対して、自分か何をしていいのか全く分からないのだろうと思う。

いちいち言うことややることが、その場しのぎになるから、言動と行動は常に矛盾し、賢い彼女たちはそのあまりの"カオス"っぷりに思わず嘔吐するのである。

私が通った園の先生たちは、それはそれはめちゃくちゃだった。

ビンタやゲンコツは日常茶飯事。言うことは毎回違い、しかも子供だと思って見下すのか、平気で人前で恥をかかせる。

私はこの大人たちは、悪魔だ。と絶望していた。

そして、この悪魔をからかうようにして何度も怒らせることだけではなく、平気で物を独り占めしたり、意地悪なことばかり言ったり、妬んで友達をすぐに仲間外れにする子供たちのことも大っ嫌いだった。

けれどもそういうことが平気になったのは、自分の心の中でそいつらを殺したからだった。

それは、同情と軽蔑という方法だ。

可哀想なバカ。

心の中でそう呟いて、深く呼吸する。

見えているものが、そもそも違う。

それは人によって、本当に、全く、違うのだ。

しかしそのことを私が断罪することはできない。

善も悪も、賢さも愚かさも、そもそも万人に共通するものではないからだった。

ただ不快だ。それだけだ。

それこそ、私の"ただの感想"である。

やがてヤツらは私の中で輪郭をなくしていく。

目で見ることのできない奥深くまで解剖した果てに、"それ"はただひとつの素粒子の振動になる。

それはそれで、神秘的じゃないか。

そこまで行き着くと、"それ"は、"汝"になりますかね？ブーバーさん。

嘔吐 (小説) - Wikipedia

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ー存在そのもの、実存する物が無ではなく何者かであるという性質自体が、彼をゆっくりと狂気に追いやる物の正体であった。彼はもはや物体を色や形といった性質も持っているとは捉えなくなった。かわりに、物体自身から単語を切り離すことによって純粋な存在に向かい合った。ー

https://1000ya.isis.ne.jp/0588.html

松岡正剛の千夜千冊ブーバーはこういうことを考えた。世界は人間の二重の態度において二重なのである。人間の態度が二重であるのは、そ … Continue reading →

1000ya.isis.ne.jp

ー宿命とは、畢竟、生成なのである。定められていることは、定めることなのだ。そこにはひたすら「我－汝」の振動があればいいことなのだ。この振動こそ、東洋において無為とよばれたものである。選ばれたことを選ぶことに変える振動である。
　宿命を専一性にも締め出しにしてもならない。すべてはいつだって二者対応（Zweiheit）なのだ。ー

｢嘔吐｣する才能