本記事ではポケモンカードを描かれているイラストレーターさんを紹介します。
今回に紹介するのは、江川あきら氏です

どのようなポケモンカードを描いているか

江川あきら氏の描かれたポケモンカードは以下のカード検索で確認できます

 

 

最近ではイーユイのARイラストを担当されています。

 

 

一匹の小さな燃える怨念が、奈落の水底から外の世界に浮かび上がろうとしている荘厳さを感じます。

江川あきら氏のイラストの特徴

江川あきら氏はカッコよさを追求するイラストレーターさんです。

ポケモンカードにはポケモンの生態を紹介するという目的もありますが、ポケモンをカッコよく描いてポケモンの人気を高めるという役割もあります。
アイドルのプロマイドのようなものです。
氏のカッコよいイラストは、後者の目的に適しています。

何をカッコよいと感じるかは人それぞれですが、氏のイラストを見るに、氏の求めるカッコよさとは、人物は美麗で冷静沈着であり、人外は怪獣的で猛々しくあることなのだと思いました
例えば、ブーバーン、エレキテル、レントラーなどは、筆跡の残る荒々しいタッチで描かれており、昔の怪獣映画のポスターを連想させます。氏の描くポケモンには迫力と動きがあります。
 

 

 

 

 


一方で氏の描く人物は、無表情か薄っすら笑みを浮かべている場合が多く、静かな印象を持ちます。

ラブトロスVで描かれた人物とポケモンの組み合わせに、その特徴がよく表れています。
黒いドレスと白い髪の落ち着いた女性のコギトは、冷ややかな視線をこちらに送り、赤いラブトロスは手足を大きく動かして力強い表情をしています。

 

 


余白のない描き込み密度の高さも氏のイラストの特徴です。
多くのイラストにおいて、ポケモンが画面の大半を占めた上で、残りの隙間には物がびっしりと詰まっているか、派手な効果線が乱舞しています。
単色で平面な何もない空間というのは、ほとんど存在しません。

 

 

 

また、氏はポケモンを迫力満点に細部まで描き込んでいる一方で、背景についてはポケモンほど描き込んでいません。
氏はポケモンの生態を分かりやすく紹介する為に背景を描いておらず、ポケモンをカッコよく見せる為の手段として背景を使っています。(少なくとも私にはそう見えます)

例えば、氏が以下の対談で紹介しているキュウコンとゴーリキーのイラストを見てみましょう。

 

 

キュウコンが月夜の街の上を飛ぶ姿は、キュウコンの神秘的なカッコよさを引き立てています。

ゴーリキーのイラストも、どうしてこのポケモンが車のガレージにいるのかは不明ですが、ガレージにいることでゴーリキーの荒々しいカッコよさが増しています。
(インタビューによれば、このゴーリキーは日頃はガレージのオーナーと一緒に車やメカをいじりながら暮らしていて、泥棒やゴロツキが来たときには強いパンチで退治するのをイメージしているそうです。そんなもの、このイラストを見ただけでは絶対に分かりません)

勘違いしないでいただきたいのは、私はこの背景の使い方を悪いことだとは思っていません。
最高にカッコいいポケモンを、更にカッコよく演出する為に、背景を有効に活用しているのは素晴らしいことです。カッコよさは理屈ではないのです。
(氏はインタビューにおいては、ポケモンの日常を感じられる背景を描きたいと発言されていますが、「日常」をテーマにした座談会でのリップサービスを全て真に受けてはいけません。)

最後に氏の表現手法について話したいと思います。
氏は厚塗りを得意としています。氏がどのようにイラストを描いているかを紹介した以下のサイトでは、どのように厚塗りをしているかが紹介されています。

 

https://tablet.wacom.co.jp/article/technic-149

 

 

氏のイラストは西洋画のように輪郭線がなく、色の陰影のみで質感や形を表現しています。その為、光の当たり具合による明暗の描き分けを、とても意識しているようです。

輪郭線の有無はイラストの性質を左右します。リアリティを追及するならば輪郭線は不要です。逆にマンガやアニメのようにリアルではないイメージを伝えるには輪郭線が有効です。
リアルな絵を描くことを止めた印象派の画家であるゴッホが、浮世絵の輪郭線を見て衝撃を受けたのは有名なエピソードです。
氏は、ポケモンが本当にいるようなリアリティさを重視しているので、輪郭線のない厚塗りという表現手法を選んだのでしょう。

江川あきら氏のオリジナル作品

氏の他の作品は以下のサイトで見ることができます。
BL系統の耽美な男性が多く描かれています。

 

 

「イラストに馴染む 質感の極意」という教本も出されています。