本記事ではポケモンカードを描かれているイラストレーターさんを紹介します。
今回に紹介するのは、こみやトモカズ氏です

どのようなポケモンカードを描いているか

こみやトモカズ氏の描かれたポケモンカードは以下のカード検索で確認できます

 

 

氏の描いたポケモンカードは以前にも紹介したことがあります

 

 

こみやトモカズ氏はアクリルガッシュ、色鉛筆やマジックなどを用いて、子供のイラストのような雰囲気を持つイラストを描くイラストレーターさんです
その特徴的な画風は、多くの人の印象に残っていることでしょう

 

 

こみやトモカズ氏のイラストの特徴

2011年、印象派の巨匠、ポール・セザンヌの《カード遊びをする人々》は2億7200万ドルで売れました。
そんな世界的名画であるセザンヌの絵を、私はすごく下手な絵だと思っています。これは私だけの意見ではなく、多くの芸術家や美術評論家が口を揃えて「セザンヌの絵は下手」と評します。
それでも、その下手な絵には数百億円で取引されるだけの価値があることも、私たちは認めています。
要するに、絵画の価値とは絵の上手さだけでは決まらないということです。

私たちの目では見れないもの、現実の風景を写実的に描いただけでは分からないもの、通常の感覚では理解しえないものを、私たちの理解できる形に落とし込んだ絵画というものが存在します。
それらの絵は特に上手というわけでもないのに見る者に強烈な印象を残し、私たちはその絵を中毒患者のように何度も見たくなるのです。

このように書くと、何か哲学的で、理解するのがとても難しいことのように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
こみや氏のイラストを見るだけで理解できます。氏のイラストを見た時に感じる気持ちが、それです。

情報の大胆な取捨選択は近代芸術の基本です。
氏の子供のようなイラストには、余計な情報がありません。
写実的な絵や上手な絵は、情報量が多過ぎて何に注目すればいいか分からなくなる時があります。
それに比べて、氏のイラストは、余計なことが描かれていないので、何に注目すればいいかが自ずと分かります。

例えば、以下のイラストは、カモネギがネギでしばいている様子を描いています。

 

 

背景の森や家が上手に描かれていたら、私たちはそこにも意識を奪われてしまいます。
ですが、この落書きのようにディフォルメされた家や森は、家や森があるという必要最低限の情報しか持ちません。
また、ここでカモネギやネギが上手に描かれていたら、私たちの意識は、カモネギの羽や身体、ネギの鮮度などに取られてしまいます。
ですが、この単純化された平面的なカモネギとネギには、カモネギとネギがそこにあるという必要最低限の情報しか持ちません。

おかげで私たちの意識は、「ネギを振り上げて相手をしばこうとしているカモネギ」という構図に集中できます。
余計な情報を徹底的にそぎ落として、私たちに本質だけを伝えるイラストになっています


また、氏のポケモンカードのイラストは、ポケモンだけは普通に描いた場合と、ポケモンも崩して描く場合の2通りがあります。
ちょうど、いい例が、以下のヌケニンとテッカニンです。
ヌケニンは混とんとした背景の中に、しっかりと描かれています。一方のテッカニンは、背景と同様に、羽や身体が落書きのように描かれています。

 

 


この描き分けは、静と動を表現できています。
崩れた背景の中でしっかりと描かれたポケモンは、動きがない状態、意識的にその場にとどまっているか、置かれた環境に対して受け身であることを示しています。例えば、このヌケニンはゴーストになって、その場で漂っています。
それに比べて、背景と同じくらいにバランスを崩して描かれたポケモンは、活発に動いている状態、周囲の環境に対して積極的に働きかけていることを示しています。例えば、このテッカニンは、勢いよく飛び回っています。

こみやトモカズ氏のオリジナル作品

氏のオリジナルイラストはポケモンカードのイラストよりも更に情報の取捨選択が大胆になっています。
つまり、より落書きっぽさが増しています。

 

 

 

 

このイラストも見事なものです。伝えるべき情報だけで構成されており、余計なものがありません。

天使たちが笑っている。
ラッパを吹いて光り輝いている。
夕暮れ時の都会の中にいる。
お菓子を運ぶペンギンがいる。

例えば、これを上手に描いたら、私たちは天使の美しさとか、ラッパの演奏方法とか、街並み、ペンギンの毛並み、お菓子の種類なんてものを意識してしまいます。
ですが、この落書きのようなイラストならば、意識する箇所が少ないので、最短距離で意識すべき正解にたどり着けます。


芸術家の中には意外と多くの(私が見聞しただけでも1000人を軽く超えるくらいの)「落書き系」の絵を描く人がいますが、それらの人々の中で氏はトップクラスの落書き系イラストレーターです。

以下のインタビューでは、氏は自分のイラストを正統派のイラストではないインチキな絵と自称しているようですが、絵を描いている本人が自分の絵の価値を理解していないというのはよくある話です。

 

 

MAJI展では来客がほとんどないと予想していたのに、大勢の客が押しかけて氏はとても驚いたそうです。

 

 

もちろん、これだけ素晴らしいイラストを描く人には多くのファンがつくのは当然のことなのに、本人だけは自分を正統派ではない色物枠だと思い込んでいるわけです