1969年アメリカの史上初月面着陸は、fakeで、全世界に放映された映像は、実は作られたものだった! という噂が絶えない。本作は、そのパロディだろうと思って見に行ったら、違った。それどころか、ロマンと情熱に満ちた傑作だった。


とにかく、スカーレット•ヨハンセンが目立ちすぎる程の存在感を示す。新顔のNASA 広報•ケリーを演じ、役に見事にハマっている。やり過ぎだが、これが良い。NASA アポロ11号打ち上げ担当の、寡黙な技術トップ•コールを演じた、チャニング•テイタムとは、好対照である。コールは嘗て、宇宙飛行士を事故で死なせてしまった責任から解放されず、今も過去を引きずっている。だからこそ今回の月面着陸は、なんとしても成功させるという、強い信念がある。


一方、ケリーは、政府の回し者。政府は、なんとしても、失敗続きでソ連に遅れをとる状況を打破し、アメリカが宇宙開発No.1であることを全世界に認知させ、世界の覇権を牛耳るという使命があった。科学とは全くかけ離れた世界だ。


政府の陰謀と宇宙関係者の純粋な想いが交錯しながら話は進む。側から見ると滑稽だが、当事者達は、極めて真剣である。なんと、不吉の象徴である、黒猫がキー”パーソン”。第二「主人公」と言っても良いかもしれない。


当然ながら、月面着陸はfakeではなく、事実であるというスタンスに立つが、当時の映像技術を考えると、いくらでも疑う余地はある。


それはさておき、本作は、宇宙開発に従事するもの達のロマンであり、ラブストリーである。


Fly me to the moon(私を月に(飛んで)連れていって! 、とはどういう意味なのだろうか。私とは誰か? 人それぞれだろうが、私は、あまり深い意味はなく、アポロ11号計画の話題になった、当時の流行歌のタイトルを使ったのだと思う。フランク•シナトラのカバーだった。元は ”In Other Words”というタイトルだったが、Fly me to the moon に変わり、それをボサノバ調にアレンジして、月面ブームと重なり大ヒットした。